- 「人材開発ソリューションのエム・アイ・アソシエイツ株式会社」ホーム
- 経営・人事コラム
- 【コラム】楠田祐氏(中央大学大学院戦略経営研究科 客員教授)と語る2016年人事の課題(後半)
中央大学大学院戦略経営研究科 客員教授の楠田祐氏と弊社代表取締役 松丘啓司の対談(「2016年人事の課題」)の後半をお届けします。今回のテーマは、「ダイバーシティ」です(以下、敬称略) |
|
楠田:次のテーマは女性活躍です。エム・アイ・アソシエイツはこのテーマについて、10年以上、取り組んでいますが、2015年の1年間を振り返ってどう感じますか?
松丘:ごく一部の進んでいる会社とそれ以外とで、進捗状況がかなり明確に分かれている感じがします。
楠田:同感です。いろいろなところで表彰されたり、セミナーに登壇したり、雑誌に載ったりしている日本企業は、10年前、15年くらい前から経営トップの内発的な言葉によって始めた企業で、よく見ると繰り返し出ている人は同じ。そこに今まで全くやっていなかった企業の人々がオーディエンスとして参加している。女性活躍は長期戦略。言い換えると漢方薬的な取組みだから、3年計画くらいではできない。最近、松丘さんが女性活躍のセミナーに登壇すると、今までやってこなかった企業の参加が多いと感じますか?
松丘:そうですね。女性活躍推進法が施行されるため、ほとんどの企業が対策を立てなければならなくなったからだと思います。
楠田:昨年、私にとって印象的だったのは、今まで女性活躍、特に管理職登用をほとんどやっていなかったある製造業の大企業で、取締役からグループ会社の社長まで15人に向けて90分の講演をやったところ、参加者が全員男性だったということです。まだまだそういう会社があるんだなと思いました。とはいえ、10年、15年前から始めた会社だって最初はうまくいかなかったから、その頃のことを学び、ロールモデル企業を見つけて進んでいくことが必要になってきますね。
松丘:その2番手の企業の中でも進んでいる会社とそうでない会社が出てきています。
楠田:その違いはどこからくるのでしょうか?
松丘:トップの影響がいちばん大きいと思います。トップにやる気があるところは2番手であっても前例を見ながらキャッチアップしていきます。そうでない会社でも女性活躍推進法の行動計画を立てて実行しなくてはならないのに、ダイバーシティ担当がやる気のないトップと板挟みになっているケースが結構、見られますね。
楠田:トップが自分の言葉で繰り返し言い続けていることが基本となります。他の人が書いた原稿を会議で読んでいるうちは進まないでしょう。まず、そこの意識を変えてもらう必要がある。そういう中でも前向きに進んでいる会社というのは、ダイバーシティ推進室の人達自身もかなりリーダーシップを発揮しているのでしょうか?
|
松丘:そうですね、女性活躍推進というのは当然、女性だけの問題ではなくて、むしろ変わらなければならないのは男性の管理職だったり、あるいは社員全員だったりします。ワークスタイルやマネジメントスタイルを変えていかなければならないので、影響範囲が非常に広いわけです。
楠田:働き方の改革ですよね。
松丘:そういったテーマを経営のアジェンダに乗せていくためには、企画する側にそれなりのリーダーシップがないと何も進みません。
楠田:今までは女性にポジティブアクションの研修を実施して管理職になる意識を高めたり、制度や託児所などの箱物を作ったりといった施策が多かったけれど、全社を含めて時間制約のある人達のパフォーマンスをどのようにして上げていくかという変革になる。女性だけの世界ではなく、社員全員の働き方の大きな改革になる。
松丘:人事だけで解決できる問題ばかりではないので、他の部門も巻き込む形でないと進めることができません。そういう推進体制を作っていかないといけないと思います。うまくいっている事例では、すべてを人事で抱えるとパンクしてしまうので、他の部門とうまく役割分担しています。
楠田:働き方改革は、会社のカルチャーや職種でも異なり、歴史のある会社ほど変えるのは難しいかもしれないけれど、やりがいも必要性もとても大きい。そういう変革ができる人が推進していかないとダメな時代だと思います。これから5年くらいは、そういうリーダーがいて変革し続ける会社と、そうでない企業に分かれてしまうかもしれませんね。
<プロフィール> 東証一部エレクトロニクス関連企業3社の社員を経験した後にベンチャー企業社長を ◇主な著書 |