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- 【コラム】[対談]ダイバーシティ研修の過去・現在・将来②「ダイバーシティ研修の今」
3回にわたり掲載している弊社ファシリテーター佐藤綾子と弊社代表取締役 松丘啓司の対談、第2回は「ダイバーシティ研修の今」についてお届けします。 |
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松丘:最近のダイバーシティ研修では主にどういうことをやっているのですか?
佐藤:女性本人の意識改革は当然やりますが、それだけだと本当の意味での女性活躍は進まないので、女性を部下に持つ管理職側の教育も同時に行う研修が今の主流です。また、1回のイベントで終わらせず、数カ月に渡って何回かの研修を実施するプロセスを経るというのがもう一つの特徴です。
佐藤:研修に1回参加すれば、すぐに意識が変わり行動が変わるかというと難しい所があります。自分のキャリアデザインにチャレンジするためには、実際の仕事の現場で業務を広げたり、リーダーシップを発揮したりする必要があります。そこで、研修時には新しい学びと振り返りを行っていただいた上で行動目標を作成し、次の研修までの期間に現場でアクションを起こすという設計にしています。
そのプロセスを女性だけが頑張るのでは続かないので、実際の現場で上司がフォローします。つまり、上司と二人三脚で、6ヶ月から8ヶ月、女性社員の成長を上司がサポートするのです。チャンスを与えたり、女性たちの話を聞いて相談に乗ったりすることで、上司側の成長も促進するような研修を作っています。
松丘:講師として研修を行う時に、佐藤さんとしてはどういうところを重視していますか?特に工夫している点などを教えてください。
佐藤:今までたくさん女性の研修をさせて頂いて、女性は自己評価が低いという感覚を実感として持っています。成果も出しているし、努力して頑張っているのに自分自身に対して正当な評価をしていないというか、自分に自信が持っていなために一歩下がってしまう方が多い気がするのです。「私ではなく男性が先に出たらどうですか」とか、「私はサポートの係ですから」とか、一歩引いてしまうメカニズムが働く女性が多いと感じています。それも美徳ではありますが、自分自身を正当に認められるようになってほしいという願いをもって関わっているというのがまず1つです。
具体的には、研修の中の発言を聞いたりしながら、なるべく一人ひとりの方の特性や持ち味を把握して、「○○さんの持ち味はこういうところですね」とか「お仕事でこういうことを大切にされているのはとても素晴らしいと思うので、もっとこんな風に活かしてみたらいかがですかとか」といった言葉をかけることで、個々人の良さを見出し、強みを引き出していくような関わりを心がけています。私が研修の中でそういった言葉かけをすると、参加者同士もお互いにそういう言葉かけをしていくようになります。お互いの強みや魅力をフィードバックできるような場づくりになっていくので、大切にしています。
松丘:なるほど。女性の自己評価が低いというのは、その人の強みを周りから指摘される機会が少なかったとか、実際に自分が努力して成長して成果を出してきたという経験事体があまりなかったというようなことも関連しているのでしょうか?
佐藤:それもあると思います。上司からあまり褒められないということをよく聞きますが、フィードバックすらないこともあるようです。また、その方がやってきた仕事による影響も大きいと思います。特に、サポート業務や事務まわりのお仕事は、上手くいかないととても目立ちますが、上手くやって当然で感謝されにくく、黒子的なサポータースタンスがしみついている女性達が多いようにと思います。総合職で男性と同じように働いてきた女性ではなく、一般事務職から職掌転換するなど、長く働くことで活躍している人に多くみられる傾向かもしれないですね。
松丘:そういう女性の方々も、6か月から8か月の研修で一連のプログラムを経ると、かなり変わってきますか?
佐藤:そうですね。正直こちらも初回研修の際に受講者の方がどれくらい伸びるか不安に思うような場合もあります。そこは信じて関わらせていただくうちに、6ヶ月、8ヶ月経って、この人がこんなに変わるんだと、私も驚かされたり、感動したりします。はじめは積極的でなかった方が「私が管理職になることが周りの方への恩返しになり、周りの方の道を作っていくことになるんだ」といった発言をしたりするようになり、自覚や自信を持ち、自分自身の影響力をポジティブに周りに使っていこうというような意識の転換が図られると思います。研修の場だけでなく、上司の方たちからも、部下が目に見えるように変わってきているというフィードバックを事務局側にいただくこともあります。上司のフォローアップ研修時に、部下の変化についてうれしそうに話して下さる方たちも多いので、実際に現場の行動も変わっているのだと嬉しく感じます。みなさんが真摯に取り組んでいらっしゃるからだと思います。
松丘:今まで機会があまりなかったっていうこともあるのでしょうが、逆に機会が与えられれば大きく変われる可能性があるということですね。
佐藤:そうですね。自分にフォーカスが当たることに戸惑いを覚える方も最初はいますが、チャンスを与えられたありがたい機会をどのように活かそうかと、前向きに取り組むことで、みなさんの成長が促進されます。「この会社に貢献したい」「会社に恩返しをしたい」という言葉がみなさんの口から本当によく出てくるので、プロセスを経る中で、会社に対してのロイヤリティも醸成されていくように感じます。
松丘:エンゲージメントが高まるのですね。
佐藤:それもありますね。あと、女性の研修だからなのかは分かりませんが、改めて考えると会社のことは好きだな、とおっしゃる方が多いですね。仕事が好きだと思っていたけど、実は会社のことも好きなんだと。会社との向き合い方が変わることで、自分たちの活躍が会社に対して良い影響を及ぼし、後進の女性たちにも良い循環が生まれることに気付き、活躍することがスムーズに、よいモチベーションで行われるように変化すると感じました。1回の研修では分かりませんでしたが、プロセスを追うことで変化が起き、元々あった願いがより言葉にされやすくなっていくようです。それまであまりフォーカスが当らなかった自分の仕事に対するやりがいとか、会社に対する想いとか、そういうものがあらわになってくるように感じました。
松丘:自分のことが良く見えるようになってくる?
佐藤:そこに焦点を当てることでそうなっていると思います。あと、他の人が変わっていく様子を見ることでグループにもダイナミックな動きが起きる、それが集合研修のおもしろさだなと思います。選抜した女性達だからこそなのかもしれませんね。
松丘:どのような人が選抜されることが多いですか?
佐藤:そうですね。最近では、この人が成長したらインパクトが大きいそうだという人を選抜して受講させ、研修の場で相乗効果を得てそれぞれが火種を持って現場に戻り、いろいろな火を灯していくことが多い気がします。
松丘:そういう人が変わっていくことで波及効果があると。
佐藤:そうですね、彼女たちが現場の中でのエバンジェリストであり、いい風を巻き起こしていく中心になっていくのだと思います。楽しそうに仕事をしている人の周りに人は寄ってきますから、充実感を持って仕事をする人を増やすことによって、それが波及して現場がより活性化していくというメカニズムが回っていっているように思います。女性だけではなく上司もセットで推進することで、組織の雰囲気が変わるという循環を起こしていくんでしょうね。
松丘:個人のパフォーマンスだけではなく、チームのパフォーマンスが高まっていくのですね。
佐藤:ダイバーシティをやっていると、上司と女性部下のパートナーシップがとても大切だと感じます。上司部下の関係性ということだけでなく、人と人としてちゃんと向き合って共に成長する、未来を作るパートナーとしてどれだけ関われるかということが肝だと思うのです。この研修を通して、そのパートナーシップが築かれると、上司は人を育てるとか、人とパートナーシップを組むってこういうことなんだと理解し、他の部下にも適用できるようになると思います。女性は女性で、後輩にも部下にも同じことをやっていくでしょう。パートナーシップの作り方を体感してそれを実践していくことで、組織自体の信頼関係構築とか、人との向き合い方も変わっていくと思います。
(第3回へ続く)
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