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「若い頃は男性社員よりも女性社員の方が優秀」は本当か?

[2015.10.28] 松丘 啓司 (代表取締役社長)  プロフィール

 「採用面接の際には女性の方が男性よりも優秀な人が多い」「若手社員の中では女性の方が男性よりもしっかりしている」といった声をいろいろな企業で耳にします。その一方で、30代以降で管理職に登用される人数は男性の方が多い、というのも現実です。20代の頃は女性の方が優秀という声がもし正しいとすると、20代から30代にかけて男女の逆転現象が起こっていることになります。このことが事実かどうかを、思考・行動特性の観点から検証してみました。

 思考・行動特性診断とは


 弊社ではキャリア研修などの研修受講者に、思考・行動特性診断というウェブ診断を事前受検してもらっています。この診断では、ビジネスの成果に影響を及ぼす思考・行動特性(コンピテンシー)を3つの領域で測定しています。各領域の概要は次のとおりです。

◆行動領域◆
自分を取り巻く環境がどのような状況であっても、行動を持続するために必要な思考・行動特性。自己への信頼、前進力、明朗性、矛盾や曖昧さへの適応力、困難に立ち向かう力の5項目が含まれます。

◆選択領域◆
自分の置かれた状況や他者との関係の中で、適切な選択を行うために必要な思考・行動特性。自己学習力、課題解決力、機敏・機転、状況判断力、相互理解力の5項目が含まれます。

◆関係領域◆
他者に信用される人間関係を築くために必要な思考・行動特性。開放性、関わろうとする姿勢、協調性、誠実・責任、柔軟性の5項目が含まれます。

 思考・行動特性は、各人の経験などによって変化します。そのため、適切な環境を提供することによって、高めていくことが可能です。

 仕事から学ぶ機会に男女差がある可能性

 誰にでも思考・行動上の強みと弱みがあります。つまり、ある1人をピックアップしたとき、高い点数の項目と低い点数の項目が入り混じっている状態が通常ですが、ここでは最近の受検者を対象に、年代別・男女別の平均点を集計して比較しました(母集団は男性1,563人、女性680人)。

20151028コラム図.jpg

 20代のグラフを見ると、特に選択領域において女性が男性を大きく上回っています(グラフの点線で囲った領域を参照)。女性の点数が高いというよりも、むしろ男性の点数が低いと言った方がよいでしょう(その理由は不明です)。ところが30代になると形勢が逆転しています。女性もわずかに平均点を上げていますが、男性の伸びが顕著です。

 このデータは1人ひとりを20代から40代まで追いかけたものではないため、世代による違いが含まれている可能性もあります。しかし、わずか10年の世代の差で、そこまで大きな違いがあるとは考えづらいため、20代から30代にかけて男性が平均的に成長していると見るのが自然でしょう。

 選択領域の項目は、適切な環境が与えられると向上することがわかっています。たとえば、上司の指導力や与えられた仕事の内容によって、伸び方が異なってきます。

企業でダイバーシティ推進をされている方々から、「男性は女性に比べて若い頃からチャレンジングな仕事を与えられることが多い」と聞かされることがよくあります。また、「30代で育児を抱えた女性に対して、上司がタフな仕事を与えようとしない」といった声もしばしば耳にします。20代から30代にかけての選択領域の逆転現象は、仕事を通じて学ぶ機会の男女差に起因している可能性が大きいのではないかと考えられます。

グラフを見ると、他にも気づく点が幾つかあります。具体的な原因までは特定できませんが、以下に列記しておきます。


・女性の前進力は各年代であまり変わらないが、男性は年代を重ねるごとに上昇している。
・男性の明朗性(楽天的な姿勢)は年代であまり変わらないが、女性は年代を重ねるごとに上昇している。
・女性の困難に立ち向かう力は、どの年代においても男性を下回っている。
・女性の開放性は、どの年代においても男性を上回っている。
・女性の関わろうとする姿勢と協調性は、20代から30代にかけて大きく低下している。
・20代の男女ともに柔軟性は高い点数を示しているが、年代を重ねるごとに低下している。

上記以外に40代の女性の選択領域の上昇が見られますが、これは40代になって高まったというよりも、もともと得点の高い女性の研修受講者が多く含まれている可能性が考えられます。

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