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ダイバーシティ&インクルージョンは課題の1つではない

[2015.05.11] 松丘 啓司 (代表取締役社長)  プロフィール

 先日たまたま、ある調査結果を目にしました。そこでは、経営者が重視する組織・人事課題として、「ミドルのマネジメント力向上」や「次世代経営幹部の育成」などが上位に回答され、下位の方に「ダイバーシティ推進」が挙げられていました。一見すると、ミドルや次世代幹部の課題に比べてダイバーシティに対する経営者の関心が低いように見えます。実際のところも、そうなのでしょう。しかし、私がもっとも気になるのは、これらのテーマが並列的に扱われていることです。


 ダイバーシティ&インクルージョンは横串の課題


 ミドルの課題、次世代幹部の課題、ダイバーシティの課題が並列であるという思考の枠組みを経営者が持っているとすると、そのことが引き起こす問題は小さくありません。1つ目の問題は、ダイバーシティ推進の範囲が女性活躍などの狭い領域に限定されてしまうことです。2つ目は逆に、ミドルや次世代幹部などの課題が、ダイバーシティと無関係なものと見なされてしまうことです。その結果、いずれの課題も十分に解決できなくなる恐れがあるのです。
 
 ダイバーシティ推進(ダイバーシティ&インクルージョン)は本来、多くの組織・人事課題に対して横串の関係にあります。そのことは、ミドルの課題や次世代幹部の課題の内容を見てみればわかります。ミドルのマネジメント力についてもっとも問題となっているのは、ピープルマネジメントです。部下を動機づけ、潜在力を引き出すことによって成果を挙げるマネジメントが求められています。それはつまり、個々の多様性を活かすマネジメントであると言えます。

 また、そもそも次世代幹部の育成が課題となっているのは、これまでの経営層のコピーのような人材ばかりを育てても、会社の発展には限界があるからです。そのために1人ひとりの潜在力に着目して幹部候補を選抜し、その強みを最大限に伸ばすリーダー開発が必要になります。つまり、多様な経営幹部が活躍する組織が求められているのです。ミドルの課題も次世代幹部の課題も、どちらもダイバーシティと深くかかわっています。


 他の組織・人事課題とクロスオーバーしたタレントマネジメントが必要

 企業の人事部の方にダイバーシティ推進の今後の展開について伺うと、外国人、身障者、LGBTなどを挙げられることが少なくありません。しかし、それはダイバーシティ推進の枠組みの中に閉じた話です。そういった展開の必要性は否定しませんが、経営上、より重要なことは、他の組織・人事課題とクロスオーバーしたダイバーシティ推進の展開にあります。

 マネジメント力向上、幹部候補の育成、社員のキャリア開発、採用などの課題に対して、ダイバーシティ&インクルージョンの基本哲学が浸透することによって、個々の課題の解決策に、これまでとは異なる変化がもたらされます。また、各課題にダイバーシティ&インクルージョンの横串を通すことによって、一貫性を持った人材開発プロセスが可能になります。そこで実現される人材開発プロセスが、いわゆる「タレントマネジメント」です。

 弊社では、タレントマネジメントとは、社員個々人の潜在力を最大限に引き出し、成長を促進するとともに、優れたリーダー人材を早期に開発し、活躍を加速することによって、企業の業績向上と持続的成長を実現するプロセスと定義しています。ダイバーシティ&インクルージョンを推進する際には、タレントマネジメントへの広がりを視野に入れることが重要と考えています。

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