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最近の企業研修 ― マネジャーの対話力向上

[2013.11.04] 松丘 啓司  プロフィール

 これから数回にわたって、弊社が行っている最近の企業研修についての考え方と概要をご紹介します。第1回目のテーマは「マネジャーの対話力向上」です。近頃、管理職研修で「対話」を扱うことへのニーズが高まっていることを実感しています。


 求められるコミュニケーション教育

 社員が1プレーヤーからマネジャーに昇進すると、たとえプレイングマネジャーであったとしても、組織マネジメントによってチームの成果を出すことが求められます。そのため、管理職研修には、組織マネジメントのカリキュラムが組み込まれる必要がありますが、これまでの多くの企業ではコンプライアンスや評価制度などについての知識研修に止まっていたのが実態でしょう。

 もちろん、マネジャーにとってルールや制度の知識は不可欠であるため、知識研修は必須ですが、組織マネジメントが効果的に実践されるためには知識だけでは足りないことは言うまでもありません。組織マネジメントはコミュニケーションを通じて行われるため、職場においてマネジャーとしての適切なコミュニケーションがなされるようになることが特に重要です。

 そこで、マネジャー向けのコミュニケーション教育として、コーチングを取り入れている企業も少なくありません。傾聴や質問によって部下自身の力を引き出そうとするコーチングのスキルは、部下育成の場面において有効です。ただし、それはマネジャー自身の変化を前提とするものではありません。組織マネジメント力を高めるためには、より視野を広げ、マネジャー自身の自己変革も重要になります。


 対話の出発点は相手を理解することにある

 対話の意義は、コミュニケーションを通じて上司も部下も学習し、成長することによって、チーム力を高め、業績を向上させていくことにあります。コミュニケーションによって部下のスキルを高めるだけではなく、職場のコミュニケーション自体を変えていく(そのためにマネジャー自身も変わる)ことに主眼があるのです。その意味では、対話の研修は単なるスキル研修というよりも、組織開発の一環として捉えることもできます。

 対話は文字通り、双方向のコミュニケーションを意味していますが、その出発点はマネジャーによる部下理解にあります。なぜなら、マネジャーによる理解のあり方次第で、マネジャー自身の発言が変化し、その発言によって部下の理解も異なり、部下の理解のあり方によって部下の発言が違ってくるからです。コミュニケーションは、もともと相互依存によって成り立っていますが、その起点は上司による部下理解にあるのです。

 「部下とコミュニケーションしていますか?」と尋ねると、たいていのマネジャーは「それなりにやっていると思う」といった返答をします。その一方で部下に話を聞くと、「マネジャーは自分のことをわかってくれていない」といった声が少なからず聞こえてきます。そのギャップの原因は、マネジャーが何を聞いているかという、「理解」についての認識の違いにあります。


 チーム力を高める対話力

 部下とコミュニケーションしていると話すマネジャーは、確かに仕事上の会話をきちんと行っているかも知れません。部下の報告に真剣に耳を傾け、丁寧にアドバイスを伝えているマネジャーも少なくないでしょう。けれども、多くのマネジャーは部下の話す情報は聞いていても、それを話す意図については聞くことができていません。

 たとえば、取引先との関係に悩んでいる部下に対して、マネジャーが「何があった?」「相手は誰か?」「どのようなビジネス上の問題があるのか?」といった情報を聞くための質問をして、「こういう場合はこうすべきだ」といったアドバイスを行っている光景を思い浮かべてみてください。この行動は、一見するとマネジャーとして当然のことのように思えます。けれども、このマネジャーは部下の発言の意図は聞いていません。「どうして悩んでいるのか?」とか、「取引先とどういう関係になりたいのか?」といった、相手の心の中のことは何も聞いていないのです。

 「仕事をするのにそんなことが必要なのか」と思う人もいるでしょう。「スピード重視の時代なので、相手の心の内側を理解するなどといった、まどろっこしいことをしている時間はない。それよりも、情報に基づいて論理的に判断することの方が重要だ」という意見も理解できます。けれども、それだけでチーム力が高まらないのは少し考えればわかることです。

 「もっとチームの成果に貢献できるようになろう」「さらにチャレンジを続けよう」と思うのは、人の心の内側で起こることです。「そういう見方もあるのか」と新たな視点に気づくのも心の中の出来事です。これらはどれもチーム力を高めるために不可欠な要素です。そしてそれらは、マネジャーが部下の意図をよく理解することによって、より促進されるようになります。


 対話研修のゴール

 対話の研修の中で、マネジャーたちはいかに自分たちが部下の話を表面的にしか聞けていないかを認識するようになります。また対話演習を通じて、相手の意図はただ漫然と聞いているだけでは深く理解できず、自分の頭の中で推論を繰り返す、熟達を必要とする思考プロセスであることを知ります。最後には、職場における自分のコミュニケーションのあり方をどのように変えていくかというイメージを抱き、部下と対話できるようになりたいという意欲を持って帰って行きます。

 もちろん、1度だけの研修で対話に熟達することは難しいので、あらゆる管理職研修(リーダーシップ研修、評価者研修など)に対話の要素を組み込むことで、何度も研修と実践を繰り返すことをお勧めしています。実際に同じ企業の同じマネジャーを対象に、時間を置いて研修を行うと、確実にコミュニケーション力が上達していることが実感されます。


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