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アンケート調査結果:シニアに期待される役割は会社によって異なる。シニア向けのキャリア研修は早期化に向かうと予想

[2012.08.01] 松丘 啓司  プロフィール

去る7月24日に「雇用延長制度に対応したシニア層のキャリア開発 本質的な課題と対応策」というセミナーを開催しました。セミナー後に簡単なアンケートを実施しましたので、その結果について報告します。

 参加者の約9割が、企業の人事部門で労務や人材開発などを担当されており、「雇用延長制度に対応したシニア層のキャリア開発」にもともと問題意識を持っている方々です。そのため、この結果は世間一般の傾向を示すものではありませんが、このテーマに関する企業の関心を知る手がかりにはなるでしょう。

 なお、アンケート回答企業49社のうち、40社(82%)が従業員1000名以上の企業でした。


 シニアの役割の重心は会社によって異なる

 最初の問いは、「役職離脱後のシニア社員に対して、特に要望したいことは何か」(複数回答可)です。

 過去の60歳引退時代には、多くの社会人にとってキャリアの終着点は管理職でした。けれども今後は、役職定年や定年・再雇用によって管理職を離脱し、1プレーヤーとして退職を迎えるシニア層が大半を占めるようになることが考えられます。この問いでは、そのようなシニア層に対して、周囲が何をもっとも期待しているかを尋ねています。

Q1.png

 回答数の1位は「人材の育成やノウハウ・人脈などの伝承」(63%)、2位が「経験に基づく適切な意見や判断の提供」(56%)、3位が「プレーヤーとしてのパフォーマンスの発揮」(51%)でした。

 全体としてはこのような順位ですが、回答内容をより詳細に見るとこの中にも傾向があることがわかりました。1位から3位の3つすべてを選択した回答者11名を除いた48名の回答内訳は以下のとおりでした。

 「人材育成・ノウハウ伝承」を選んだ26名のうち、「経験に基づく意見・判断」をも選択したのは16名(62%)、「プレーヤーとしてのパフォーマンス」をも選択したのは6名(23%)
 「経験に基づく意見・判断」を選んだ22名のうち、「人材育成・ノウハウ伝承」をも選択したのは16名(73%)、「プレーヤーとしてのパフォーマンス」をも選択したのは3名(14%)
 「プレーヤーとしてのパフォーマンス」を選んだ19名のうち、「人材育成・ノウハウ伝承」をも選択したのは6名(32%)、「経験に基づく意見・判断」をも選択したのは3名(16%)

 「経験に基づく意見・判断」を期待する人は、「プレーヤーとしてのパフォーマンス」をあまり期待せず、逆に「プレーヤーとしてのパフォーマンス」を期待する人は、「経験に基づく意見・判断」をあまり期待していないことが分かります。

 アドバイザーや伝承者としての役割とプレーヤーとしての役割のどちらに重心があるかは、会社ごとに異なるものと考えられます。


 4割の企業がシニア層に対するキャリア研修を実施・計画中

 次の問いは、「シニア層に対するキャリア研修を行っているか」です。

 本セミナーの中で、シニア層に対するキャリア研修と従来のライフプランセミナーは異なることを説明しました。ライフプランセミナーとは、退職金や年金の制度説明や、退職後のライフ・マネープランなど、退職後に主眼を置いた研修です。一方で、キャリア研修は退職前のキャリアに主眼を置いた研修です。回答者は、その違いを認識しているため、本質問におけるキャリア研修とライフプランセミナーは混同されていないと考えてよいでしょう。

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 既にキャリア研修を実施している企業は、回答企業の13%でした。現在計画中の27%と合わせると、40%が実施または計画中です。本セミナーに参加したような、問題意識を抱えた企業においても、未検討企業は60%に上りました。

 昇進や昇給といった外発的な動機付けが使えない状況において、シニア層がモチベーションを維持向上するためには、個々人が内発的に自分のモチベーションを高められることが不可欠です。そのためのプラニングの場として、シニア層に対するキャリア研修が活用されますが、実際に着手している企業はまだ少数派です。


 3分の1の企業が40代でのキャリア研修の実施を適切と回答

 現在、実施している、していないにかかわらず、シニア層に対するキャリア研修を実施する場合には、「どの年齢層に対して行うのが適切と考えるか」(複数回答あり)という質問を行いました。

Q3.png

 「50代前半」が1位で53%に上り、次いで「40代後半」が2位で30%、「50代後半」がそれぞれ25%と続いています。40代前半も含めると、40代で実施することが適切という回答者は34%に上っています。

 本セミナーの中では、シニア層のキャリア研修は役職を離脱する5年前くらいから行われることが一般的であると解説しました。また、今後はキャリアの選択肢が広い40代のうちから実施する企業が増えていくだろうという予測についても述べました。

 今後、組織ピラミッドがますます逆台形化に向かっていく中で、役職ポストはますます限られていくことが予想されることもあり、シニア層が自分自身のキャリアを考える場を早期に設定する傾向が進みそうです。


 8割の企業がいずれかの層に対するキャリア研修を実施

 最後にセミナーへの参加企業は、「現在、どの層を対象としたキャリア研修を実施しているか」(複数回答可)という質問を行いました。

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 「20代の若手層」が48%、「30代の中堅層」が45%、「40代のミドル層」が36%、「50代以上のシニア層」が9%と続いています。「キャリア研修は行っていない」は19%であるため、8割の企業がいずれかの層に対するキャリア研修を実施しています。

 かつてのようなキャリアコースは会社が示すものという固定観念はかなり薄れ、先行き不透明な環境の中では、キャリアは自分自身で考えるべきものという自律的な意識が重視されてきています。その中でキャリア研修が多くの企業に浸透してきている状況が見られています。

アンケート調査結果08 2012.pdf


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