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- 【コラム】アンケート調査結果:シニアの経験やノウハウを有効活用したいが、モチベーションの維持向上が最大の課題。シニア向けキャリア研修が増加する傾向
去る6月12日、13日に「雇用延長制度に対応したシニア層のキャリア開発 本質的な課題と対応策」というセミナーを開催しました。セミナー後に簡単なアンケートを実施しましたので、その結果について報告します。
参加者の約4分の3が、企業の人事部門で勤労や人材開発などを担当されており、「雇用延長制度に対応したシニア層のキャリア開発」にもともと問題意識を持っている方々です。そのため、この結果は世間一般の傾向を示すものではありませんが、このテーマに関する企業の関心を知る手がかりにはなるでしょう。
なお、アンケート回答企業60社のうち、47社(78%)が連結従業員1000名以上の企業でした。
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最初の問いは、「役職離任や再雇用に関連して、特に課題と感じられていることは何か」(複数回答可)です。
雇用延長制度は60歳定年以降の雇用制度ですが、総額人件費管理等の必要性から、60歳定年以前の役職定年制度などを含めたパッケージで検討されることが少なくありません。そのため、この質問では60歳定年以降に限定せず、シニア層に関する人事上の課題について尋ねています。
回答数の1位は「モチベーションの維持向上」(71%)で、2位が「経験やノウハウの有効活用」(45%)です。その後に「報酬水準の決定」「配属先や出向先の確保」「能力やパフォーマンスに応じた処遇」(すべて32%)が続いています。
シニア層にはモチベーションを維持向上しながら、豊富な経験やノウハウを活かして会社に貢献することが期待されています。しかし、雇用延長制度はシニアの側から見れば、「役職を外れ、低い報酬で、長く働き続けなければならない制度」でもあり、貢献意欲をむしろ減退させる影響を及ぼします。この結果には、多くの企業がそのジレンマに悩んでいる現状が表れていると思われます。
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次の問いは、「シニア層に対するキャリア研修を行っているか」です。
本セミナーの中で、シニア層に対するキャリア研修と従来のライフプランセミナーは異なることを説明しました。ライフプランセミナーとは、退職金や年金の制度説明や、退職後のライフ・マネープランなど、退職後に主眼を置いた研修です。一方で、キャリア研修は退職前のキャリアに主眼を置いた研修です。回答者は、その違いを認識しているため、本質問におけるキャリア研修とライフプランセミナーは混同されていないと考えてよいでしょう。
既にキャリア研修を実施している企業は、回答企業の23%でした。現在計画中の24%と合わせると、約半数が実施または計画中です。本セミナーに参加したような、問題意識を抱えた企業においても、未検討企業は53%と半数以上に上りました。
昇進や昇給といった外発的な動機付けが使えない状況において、シニア層がモチベーションを維持向上するためには、個々人が内発的に自分のモチベーションを高められることが不可欠です。そのためのプラニングの場として、シニア層に対するキャリア研修が行われますが、実際に着手している企業はまだ少数派です。
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シニア層に対するキャリア研修の重要性が認識されていたとしても、企業としては、限られた研修予算をどの階層に配分するかという別の観点からの検討も必要です。この点に関して、「人材育成について、現時点で/今後、どの階層の教育を重視するか」(複数回答可)という質問を行いました。
現時点で重視されているのは、「新人・若手層」が1位で53%に上り、次いで「中堅層(30代)」「ミドルマネジャー層」がそれぞれ46%と続いています。
それに対して、今後については、「経営幹部候補・次世代リーダー」が54%に上り、「ミドルマネジャー層」(41%)、「シニア層」(38%)と続いています。シニア層は、現時点の13%から今後の38%へと約3倍になっています。
本アンケートの回答者が、新人・若手・中堅の人材開発担当者ではなく、シニア層への関心が高い人々であることもこの結果に影響していると思われます。しかしながら、少なくとも企業の人事担当者の中には、今後、研修予算の配分を変えていく必要があると考えている人々が多数存在していることは確かでしょう。
これまで企業の中には、ミドル以上に研修を施すよりも若手や中堅層に研修を行う方が効果的という意見が少なからずありました。ミドル以上にいくら研修を行っても効果が薄いと決めつけて、研修を避けてきた面があったようにも思われます。しかし、その考え方は今後、変化していくことが予想されます。
企業の研修予算配分として、「経営幹部候補・次世代リーダー」重視の傾向が強く出ています。多くの企業が選抜者研修に予算を重点配分しながら、その他の予算を他の層に割り当てるという発想を持っているものと思われます。その他のどの層を重視するかは企業によって異なると考えられますが、シニア層の研修を重視する企業は増加していくことが予想されます。