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シニア社員のキャリア開発には思考・行動特性(コンピテンシー)の活用が効果的

[2012.03.22] 松丘 啓司  プロフィール

 エム・アイ・アソシエイツでは、設立以来、ミドル層以上のキャリア開発を主力領域の1つとしてサービス開発を続けています。ここ数年、企業で働くシニア社員(50代以上)に対する研修が増加していますが、特に、最近の企業からの要望の傾向として、「キャリア」の側面がより重視されつつあるように感じています。


 雇用延長にライフプランセミナーは適さない

 多くの企業でシニア社員に対する研修は過去からも行われてきましたが、その内容はどちらかというと退職後のライフプランや、退職金・年金を含めたファイナンシャルプランに関するものが大半でした。特に1990年代の終わり頃から、早期退職制度を導入するのに合わせて、ライフプランセミナーなどを開催する企業が増加しました。

 当時の企業の研修意図を端的に述べれば、退職後の生活を充実させる方法をよく考えて早く退職してほしい、ということだったと思います。今日の企業における研修目的とは、まるで逆の発想です。言うまでもなく今日の企業には、雇用を長期化させることが求められています。したがって、そこで重視されるべきことは、退職後のライフよりもむしろ退職以前のキャリアでなければなりません。

 従来の延長線上でシニア研修を考えると、雇用延長に対応してライフプランセミナーを行うといった、ちぐはぐな施策が取られてしまう可能性があります。その結果、シニア社員にモチベーション高く仕事に取り組んでもらいたいという本来のねらいが達せられないばかりか、仕事はほどほどにしてプライベートを充実されればよいのかという誤った認識を生じさせてしまう恐れもあります。


 シニア社員のキャリア開発概念が必要

 これまでのシニア社員に関しては、キャリア開発という概念がなかったと言っても過言ではないでしょう。企業は社員の定年か、定年近くまで、外発的動機付け(役職や報酬など)によって社員を鼓舞し、いわば引っ張れるだけ引っ張って、定年を迎えればキャリアはそれで終わり、あとは「余生」と扱われるのが一般的なパターンでした。50歳を過ぎるとキャリアは幕引きに向かうのであって、そこから開発されるものではなかったのです。

 けれども、雇用延長とその背景にある高齢化社会(つまり長寿化社会)がその概念を変えつつあります。キャリアは60歳定年で終わりではないのです。雇用延長によって、より長くなった仕事の期間において、いかにシニア社員の働く意欲を高めるかが企業にとって重要な課題となってきています。その際、外発的動機付けをより長く引き延ばすことはできません。大幅な人件費増を許容できないのと同時に、ポストの若返りも必要だからです。

 これまでのような外発的動機付けで、もはやシニア社員のモチベーションを維持することはできません。企業には、これからのシニア社員を取り巻く環境に応じた、新たなキャリア開発の枠組みが求められているのです。


 どのように振る舞うかが重要

 役職を外れたシニア社員の役割を明確にしたい、という声をときどき耳にしますが、役割を定めただけでパフォーマンスが発揮されるわけではありません。技術の伝承、人材の育成、専門業務の遂行といった役割の、どれか1つにシニア社員の役割を限定することはできず、1人でさまざまな役割を担わなければならないのは通常のことです。

 また、何の技術を伝承するかといった具体的な内容は1人ひとり異なりますし、各役割に求められる比重は職場によって異なります。そのため、シニア社員がどのような役割によって貢献すべきかについては、結局のところ、職場の上司との話し合いによって決められるしかありません。

 シニア社員といえども、仕事のパフォーマンスで評価されることが必要です。けれども、シニア社員に求められる役割については、成果を測るのが困難なことも少なくありません。たとえば、後輩のメンバーを補佐する役割といった間接的な貢献が求められる場合、成果の判断はどうしても主観的なものになりがちです。

 シニア社員にこそ、「コンピテンシー」(思考・行動特性)の発想がマッチすると考えられます。シニア社員には、どのような役割を果たすかも重要ですが、どのように振る舞うかがより重要となるからです。シニア社員が培ってきた経験知や感覚知をもとに、どのように職場の期待に応え、貢献するかが問われるのです。「どのように」というのは、1人ひとり異なる、思考・行動特性上の「強み」を「活かして」(あるいは「さらに伸ばして」)ということを意味します。

 そのようなマネジメントを可能にするためには、個々のシニア社員の思考・行動特性を可視化する仕組みが重要になってきます。企業には、雇用延長制度を導入するだけではなく、その制度のもとでシニア社員のパフォーマンスを最大化させるためのマネジメントの仕組みもあわせて検討することが求められています。

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