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アイデアが出ないのは組織の問題

[2011.12.01] 松丘 啓司  プロフィール

 弊社の人材・組織開発プログラムでは、「価値観の調和」というコンセプトを重視しています。これは、「異なる価値観が存在するとき、かならずそれらの両立する解があり、その解が得られたとき、かならず進歩が生まれる」という法則を指しています。

 現状の延長線上にはない変化(新戦略でも、新商品でも、風土変革でも、何でも)が求められる際には、異なる価値観の調和が必要とされます。たとえば、「効率性を維持しながら多様な顧客ニーズに応えるための戦略が必要だ」とか、「調理の簡単さと贅沢な満足感を両立する新食品を開発したい」とかいったことは、価値観の調和の問題です。

 社員の間で価値観の調和がたくさん起こる会社は、創造的で自己変革力の高い会社です。「ならば、そのような会社を目指そう」と言うのは簡単ですが、会社の現状に目を向けた途端、やるべきことが芋づる式に見えてきて、実はそれが壮大な組織変革への取り組みであることに気づくに違いありません。

 社員1人ひとりの内的な価値観(「私にとって何が大切か!」)は皆、異なりますが、それが活発に表現されている職場は、どちらかというと少数派ではないかと思います。過去の経験則や論理的な公式に則って、効率的にレベルの高い仕事が行われていたとしても、個々人の価値観が表現されなければ、調和が起こらないのも当然です。

 社員が自分の価値観を表現するためには、「何のためにこの仕事をしているのか」という自分の内的な動機がしっかりと自己認識されていなければなりません。さもなければ、仕事の目的を自分の外側に求めることになってしまいます。それでは、自分らしい価値観は表現されません。

 これはキャリア開発の問題です。会社は、社員に対して「何のために働くのか」を考えさせる機会を創る必要があります。その考え方のベースにあるのは、社員の「自律」です。会社が働く目的を提供するのではなく、社員が自律的にそれを考えることが前提です。そのため、人事制度の基本思想も社員の自律を基軸にしたものに変わる必要があります。

 たとえば、若手社員がキャリア研修で自分の価値観をしっかりと理解し、職場で表現しようとしても、上司がそれを妨げるようでは、変化は起こりません。上から目標を与え、「とにかく言われたとおりにしろ」と命じるような上司がいたとしたなら、個人の価値観は内に閉じ込められてしまいます。これはマネジメントのあり方の問題です。

 現場におけるチームのマネジメントを、「部下を育成して、チームの成果をあげること」と、多くの会社では定義しています。それは間違いではありませんが、「部下を育成する」とはどういうことかが、マネジャーに正しく認識されていないケースが少なくありません。

 単に知識やスキルを教え込めば、育成したことになるわけではありません。育成するとは、「部下の成長を支援する」ことでなければなりません。それは部下が自律的に自分の強みを伸ばす努力を行うことを促すことであって、上からこうしろと押し付けることではありません。

 社員が自分の価値観を表現するようになったとしても、他者の価値観が理解されなければ調和は起こりません。そのためには、相手の言葉で示される表面的な情報だけではなく、その発言の意図から相手の価値観を理解しようとする心構えを社員が持っていることが必要です。

 これは社内コミュニケーションの問題です。たとえば、営業担当役員が新しい営業戦略を現場に浸透させようとするとき、本部から通達を出しただけでは、戦略は理解されません。現場との対話を通じて、営業担当者が戦略に込められた経営者の意図に気づくことによって、はじめてその戦略の意味が理解されます。社内のあらゆる場面において、そのようなコミュニケーション変革が必要とされます。

 社員がそれぞれに価値観を表現し、相手の価値観も理解し、社内のいたるところで斬新なアイデアがどんどん湧いてきたとしても、それだけでは無秩序な状態になってしまいます。すべてのアイデアに投資することもできません。したがって、価値観の調和は野放図に行われるのではなく、何らかの方向性を持たなければなりません。

 それのために、ビジョンや経営理念が必要です。会社として共有すべき価値観が存在するからこそ、1人ひとりがどちらを向けばよいのかが理解されます。また、チームレベルでも、チームが目指す姿が示される必要があります。これらはリーダーシップの問題でもあります。

 斬新なアイデアが出てこないと嘆く会社があったとしたなら、個人の発想力の以前に、組織の状態をチェックしてみる必要があるでしょう。あなたの組織では、異なる価値観の調和がどれくらい起こっていますか?

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