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営業チームビルディングのすすめ

[2011.08.25] 松丘 啓司  プロフィール

 営業チームといっても、実は個人が集まっただけの、名ばかりのチームが少なくありません。そうしたチームでは、営業担当者ごとに目標が上から割り振られ、一人ひとりが自分なりのやり方で、担当するマーケットを攻めています。複数の営業担当者が同じチームに属してはいるものの、チームワークが発揮されることはほとんどありません。それは、たいへんもったいないことです。

 担当マーケットが明確に分かれているから、協力し合うことは特にはないと、営業担当者は思うかもしれません。むしろ、互いにライバル視することによって、やる気が湧いてくるという人もいるでしょう。けれども、個人で行う営業活動は孤独なものです。「自分は、何のためにこの仕事をしているのか」という目的観を持っていなければ、長く続けることはできません。

 営業担当者が、自分で自分の仕事の目的に関する意味づけを行うことは、非常に重要です。それは、「働きがい」を高めます。それによって、自分の「成長」に向けた目標を持てるようにもなります。さらに、自分が営業活動を通じて、お客さまに提供していきたい「価値」をより明確にできます。たとえば、「お客さまの笑顔を増やすことが、私の役割です」と、自分の仕事の意義をはっきりと述べることができるようになります。

 しかし、もし個人だけではなく、チームとしての目的を持つこともできたなら、どうなるでしょうか?「自分は」ではなく、「自分たちは、何のためにこの仕事をしているのか」を明確にできたとしたら、その「チームの目的」は、「個人の目的」よりも、もっと大きなものになるに違いありません。「チームの目的」を考えるときには、自分一人ではできないことを考えるからです。たとえば、「私たちの役割は、業界を変革することです」と、大胆な目的を掲げることも可能になります。

 たとえ、日々の営業活動は、個人ごとに行われていたとしても、チームの目的が共有されていたなら、お客さまに対して、より踏み込んだ提案ができるようになります。個人が提供したい価値よりも、もっと大きな価値を提案できるようになるでしょう。目的観の持ち方によって、提案の内容が違ってくるのです。それによって、成果も異なってきます。チームワークとは、かならずしも一緒に活動することによってのみ発揮されるものではないのです。

 「営業チームビルディング」(チームワークの発揮される営業チーム作り)を行う必要があると聞くと、すぐに飲み会を開こうとするマネジャーもいるかもしれませんが、営業チームビルディングは懇親会ではありません。「自分たちは、何のためにこの仕事をしているのか」というテーマについて、十分な時間をとって、皆で考えることが重要です。多くのチームでは、そんなことを話したこともないと言うでしょう。そうであれば、なおさら、やってみる価値があります。

 深く話しあうことができれば、この取り組みは結構、楽しいものであることに気づくと思います。「何のためにこの仕事をしているのか」という理由は、人によって違います。一人ひとりの価値観が異なるからです。日頃、顔を合わせていても、気づかなかった新鮮な発見があることでしょう。また、この対話は、議論ではありません。誰が正解かを競うのではなく、異なる価値観を尊重しながら、チームの目的を考えていくプロセスからは、前向きで建設的な一体感が得られることでしょう。

 営業チームビルディングは、同じチームだけではなく、本部組織や営業以外の関連部門のメンバーを含めて行っても効果的です。ついつい対立しがちな他部門の人々とも目的を共有することができれば、日常的なコミュニケーションは、ずっと円滑になると思います。

 営業力を高めるための取り組みというと、スキルアップや評価制度の見直しのようなことが真っ先に思いつくかもしれません。けれども、同じ営業スキル研修を受け、同じ制度で評価されていても、チームによって成果が異なるのはどうしてでしょうか?その原因は、個人のスキルや意欲ではなく、チーム力にあるのです。



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