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チームワークを生み出すコミュニケーション

[2011.05.10] 松丘 啓司  プロフィール

組織とは、人が一人ではできない仕事を可能にする場です。組織のメンバーがばらばらに仕事をしていては、そもそも組織に属している意味はないので、組織における仕事は、かならず共同作業です。その点からすると、チームワークのまったくない組織は存在しえないと言えます。

けれども、「うちの部署はチームワークがよい」とか、「あのプロジェクトのチームワークは最悪だった」とかいうように、チームワークには良し悪しがあると考えられています。では、どのようなチームワークが良いチームワークなのでしょうか。


 個人の自律性がチームワークの前提

私自身の過去を振り返り、職場でチームワークがうまく発揮されていた時の場面を思いおこしてみると、目的を共有して、皆が意欲的に仕事をしていたことは常に共通していますが、かならずしも四六時中、協力し合っていたわけではないように思います。それよりもむしろ、一人ひとりが自律的に考えて課題を設定しながら、行動していた光景が印象に残っています。

自律的に考え行動することは、一見するとチームワークとは相反することのようにも思えますが、実はチームワークにとって必須の条件です。皆が共通の目的のもとに仕事をし、かつ互いに連携していたとしても、一人ひとりの自律性がなければ、それをチームワークとは言えないと思います。

チームワークという言葉の中には、一人ひとりが自律的であるという前提が、もともと織り込まれています。さもなければ、チームワークがそれほど大きな問題として、取り上げられることはないでしょう。皆が目的に向けて、決められたように動くという状況においては、チームワークが議論になることはありません。一人ひとりが自律的だからこそ、チームワークが必要とされるのです。

一人ではできない大きな仕事を組織が可能にするためには、そこに相乗効果が必要です。相乗効果とは、個々人の違いが調和することで、いわば化学反応を起こすことです。単なる足し算ではない、新しいアイデアや、他にはない強みが生みだされることが必要です。その前提として、個々人が自分ならではの違いを発揮していなければなりません。つまり、自律的であることが不可欠です。


 リーダー自身が自律的でなければならない

自律的に仕事をするとは、自分の価値観を活かして働くということです。誰かから与えられた行動基準に忠実に動くというのではなく、自分がこだわりたい価値観を大切にし、その観点から課題を捉え、自分ならではの行動を通じて、自分らしい仕事をするということです。それは自分以外の「外の軸」に依存するのではなく、しっかりとした「内の軸」を持つということです。

ここで次の2つの疑問が浮かびます。一つは、そのような自律性はどうすれば生まれるのかという疑問です。もう一つは、一人ひとりが自律的に行動しながら、共通の目的に向かうことをどのように担保するのかという疑問です。この2つの疑問について考えることが、チームワークを高めるための鍵であると思います。

これらの疑問に対する回答は単純ではありませんが、一つの重要なポイントは、組織のリーダー自身が自律的な存在であることではないかと思います。つまり、リーダー自身が何を大切にし、何にこだわるかという価値観を明確にし、それを組織のコミュニケーションの中に浸透させることが重要です。


 価値観は、異なる価値観によって活かされる

問題解決や論理思考も必要ですが、それに偏重したコミュニケーションではメンバーの自律性が活かされません。「まず、結論を述べる」「次にその結論に至った因果関係を述べる」「その因果関係を裏付ける事実を述べる」といった問題解決型のコミュニケーションには、個人の価値観が入り込む余地がありません。そのようなコミュニケーションばかりで固まった組織では、自分の内面に目が行きません。

リーダーが自分の価値観を伝えることによって、逆説的ですが、メンバーの価値観が活かされることになります。なぜなら、価値観が活かされるためには、別の価値観が必要だからです。ある人の価値観は、それ単独では、その人の価値観であるだけです。異なる価値観を持ったメンバーが複数いるだけの状態では、ばらばらの価値観がただ混在しているだけです。

自分の価値観と、異なる価値観を重ね合わせることによって、人は自分の価値観を活かすための方向性について考えることができます。たとえば、ある人が転勤して、まったく新しい部署に配属され、その部署には、特有の価値観が存在していることに気づいたとします。その人は、その部署の価値観を尊重しながら、自分らしさを発揮するにはどうすればよいかを考えるはずです。違いがあるから、自分の価値観の活かし方を考えることができるのです。


 何を大切にしたいかを探求する

リーダーが、「自分はこれを大切にしたい」と伝えることがチームワーク作りの出発点ですが、それはリーダーの価値観を押し付けることではありません。組織のメンバーには自分自身の価値観を活かすことを求め、コミュニケーションの中で価値観を交流させていく必要があります。その過程の中で、メンバー間の相互理解が深まり、組織のメンバー全員で共有したい、深い次元での価値観が形成されていきます。

一人ひとりが自律的でありながら、なおかつ、「フォア・ザ・チーム」(For the Team)という目的意識が共有された状態に必要なものは、このような組織の共有価値観です。自分たちは何のために仕事をするのか、何にこだわり、何を大切にするのかを探求するコミュニケーションが、チームワークを生み出すプロセスにおいて不可欠です。組織の中に、そのようなコミュニケーションを創りだすことは、リーダーに求められる非常に重要な仕事だと思います。

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