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MIAが考えていること(12):人事制度は2ラウンド制に向かう(その2)

[2010.08.07] 松丘 啓司  プロフィール

 前回のテーマは1回だけのつもりでしたが、この2~3週の間に、複数のお客様先で、偶然にもこのテーマ(40代以上の人事)が話題に出たので、もう少し、続きを書きたいと思います。

 前回、書いたとおり、今後の企業においては、40代以上の非ラインマネジメント層が大きな塊を形成すると予想されます。これまでの人事制度設計においては、20代~30代の若手・中堅社員の育成・動機付けや、マネジャー層あるいは経営幹部候補の育成・登用などに焦点が当たることはあっても、40代以上の非ラインマネジメント層にスポットが当たることは稀でした。

 しかし、今後、この層は企業内において、一大勢力を形成します。この層をうまく活用できるかどうかによって、組織の活性度はもとより、企業の業績が大きく違ってくるに違いありません。


 基本コンセプトの転換が前提になる

 これまで、この層が人事制度設計で取り上げられたとすると、その目的は多くの場合、人件費のコントロールにあったのではないかと思います。複線化の議論にしても、プロ人材を育てようという前向きな標榜の裏側には、総人件費を抑えるというねらいも含まれていることが少なくありませんでした。けれども、今後の議論においては、ただコストを抑制するということではなく、高コストだがそれ以上に高付加価値を発揮する、という考え方をベースにする必要があると思います。

 技術や流行の変化が激しいため、40代以上の人材が若手のように柔軟に変化について行けないという領域も、中にはあるかもしれません。しかし、大部分の仕事においては、40代以上の人材は、スキル・経験・人的ネットワークなどのどの面をとっても、プレーヤーとして若手より高業績が期待できる人材なのではないかと思います。

 そもそも、40代以上の人件費が問題になるのは、過去のコンセプトの遺物だと思います。戦後の日本経済の成長は、豊富な低コスト人材が続々と供給されたことにありました。それが、いわゆる産業資本主義の原動力となったのです。終身雇用・年功序列の人事制度は、産業資本主義型の企業モデルを支える役割を果たしました。

 しかし、言うまでもなく、このモデルは既に崩壊しています。経済が豊かになって人件費が高くなったことと同時に、人口自体が減少し始めたからです。したがって、ベースとなるコンセプト自体を取り換えなければなりません。これまでの企業モデルを前提に、人件費の削減だけを続けても成長は見込めないことは言うまでもありません。今後の環境においては、高コストを前提に、それ以上の高い付加価値を生み出すことを可能にするものでなければならないと思います。


 40代以上の人事は大きく変わる

 では、40代以上の人事制度において、何が変わるのでしょうか。私たちは、まだ、その入り口にいるため、こうなるとは断言できません。しかし、おそらく以下のような変化がかなりの確度で起こってくるのではないかと想像できますし、実際に私たちは、お客様に対するコンサルティングや研修において、既にこのような考え方に基づいた提言を始めています。

① ラインマネジャーからプレーヤーへの転身が当たり前になる。

 現在の人事制度では、ラインマネジャーが役職からはずれるのは、役職定年か定年の時という企業が一般的ではないかと思います。しかし、これからは役職定年の年齢にならなくても、ラインマネジャーがプレーヤーに戻ることが普通に起こるようになるのではないかと思います。もし、それができなければ、役職ポストが今よりも不足するために、優秀な人材をラインマネジャーにすることができなくなったり、ラインマネジャー層自体が高齢化してしまったりすることが予想されます。

 このことを可能にするためには、40代以上の人材がプレーヤーとして高い成果を挙げることが、会社から高く評価されなければなりません。また、高い成果を挙げるプレーヤーは、ラインマネジャーと同等かそれ以上の存在であるとみなされなければなりません。さもなければ、役職からはずれた人は失望してしまうでしょう。

② 40代以上の転職、起業が増える。

 転職したり、自分で起業したりするのは20代か30代の若いうちだけ。40代以上になれば、今の会社で残りの社会人人生を全うするしかない、というのがこれまで何となく常識と考えられてきたことではないかと思います。しかし、これからは40代以上が転職や起業の道を選ぶケースが増えてくるのではないかと思います。

 弊社では実際に、企業の研修担当の方から、受講者に会社の中だけではなく、外に目を向けさせるという要素をキャリア研修の中に入れてほしい、という要望を少なからず受けています。そこには、定年まで会社にいることが、過去からの常識なので当然と考えるのではなく、一人ひとりに自分の本当の価値観を問い直してもらいたいという思いがあります。その結果、外の世界を選び、チャレンジすると考える人の割合は、今後、増加していくことでしょう。

③ 報酬カーブの選択肢が増える。

 そうはいっても、40代~50代は、人生でもっとも支出のかさむ時期であるため、若い頃のように簡単にはリスクをとれません。しかし、キャリアの選択肢の多様化とともに、企業における報酬カーブの選択肢も多様化していくのではないかと思います。

 現在のほとんどの企業の報酬カーブは、(企業や個人によって差はあるものの)年齢とともに右肩上がりになっていて、役職定年か定年の時にすとんと落ちるという形が一般的なのではないかと思います。

 しかし、それ以外にも右肩上がりの角度は小さいが、大きくすとんと落ちることはなく、60歳を過ぎても、より長く働くことに合ったカーブがあってもよいかもしれません。あるいは、ラインマネジャーからプレーヤーに転身し、そこで大きく稼いで起業する、といったことをサポートする制度があってもよいのではないでしょうか。

 いろいろなアイデアが考えられるでしょう。いずれにしても、スキル・経験・人脈の豊富な40代以上の人材の力を、いかにして高付加価値を生み出す仕事で発揮させるかというテーマは、これからの企業におけるきわめて重要な課題になってくると思います。

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