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多様性を活かす4次元思考 第4回:4次元で「ビジョン」を示す

[2009.03.09] 松丘 啓司  プロフィール

連載は4次元思考がテーマなので、4回目の今回で最終回です。
最初に再度、これまでの3回について、振り返っておきます。

1次元:価値観の違いは、一つの直線上のそれぞれ別の地点として表されました。それによって、
     違いが明確に「認識」されました。

2次元:直線上では交わることのない価値観の違いを「調和」させるために、マトリクスという面を
     用いて考えました。相互に「尊重」する状況があれば、違いは調和され、進歩が生まれ
     ることを検証しました。

3次元:2次元の調和が組織内でランダムに起こるのではなく、共通のベクトルを得るために、
     組織としての「共有」価値観が必要であることを述べました。それは、いわば立体的な
     空間で違いを調和させることです。

4次元思考の4回目は、「時間」という視点を取り入れることです。

人は価値観によって選択をします。論理的な分析によって、AとBの2つの選択肢が導き出されたとした場合、どちらを選ぶかは価値観に従います。人が「何を大事にし、何に優先度を置くか」を判断する基準というのが、価値観のそもそもの定義だからです。その時々で、Aを選んだり、Bを選んだりする人は、いわゆる「軸がぶれる」人です。軸がぶれない人は、自分の価値観をよく理解しています。

「未来」は現在における選択の結果、生まれます。人が価値観によって選択を行うならば、人の未来は価値観に依存することになります。組織がしっかりとした共有価値観を持ち、一人ひとりがそれに従って選択を行うならば、組織の未来は、共有価値観によって決定されていきます。

価値観に基づく選択が未来を決めるために、選択がもたらす変化が大きければ大きいほど、人は選択に対して慎重になったり、不安になったりします。みずからの価値観が見えていなかったり、確固とした信念がなかったりすると、人は往々にして、選択基準を「外の世界」に求めてしまいます。

上司に言われたとおりにやる。権威のある人が言っているからそうする。他の人もそうしているから...、といった「外の軸」を判断の基準にしてしまうと、受け身の状態に陥ってしまいます。そうなると、変化を起こすのではなく、変化の結果を受け入れることになります。その結果、生まれる未来は自分にコントロールできないものになってしまいます。

したがって、自分(たち)で自分(たち)の未来を作りだしたければ、みずからの価値観に基づいて選択しなければなりません。その勇気を持つためには、次の問いに答えられる状態であることが必要です。
「この選択は、何のための選択なのか?」
「この選択をしたら、どこに辿り着くのか?」
それに答えるのが、組織の「ビジョン」です。

図4.jpg


組織のビジョンとは、共有価値観に従った選択を行うことによって出現する未来の状態です。組織のメンバーがビジョンに対して共感することができることによって、大きな変化をもたらす選択ができるのです。詳細説明は割愛しますが、組織のビジョンがメンバーに共感されるために、リーダーは次の2つの要件を満たすビジョンを示さなければなりません。
・「何のため」という目的が、メンバーに心から受け容れられる「意義ある」ものであること
・「辿り着いた」世界が、メンバー個々人のありたい状態(個人のビジョン)と重なり合うことがイメージされること

そのような共感されるビジョンが存在することによって、人は勇気を持って、現在における選択ができ、現在における選択を行うことによって、組織のビジョンが実現するという相互関係ができます。現在と未来に視点を移しながら、未来を生み出す現在の選択が可能になるのです。

その際、みずからの価値観に基づく選択が、本当にビジョンが描く未来を生むのかという繋がりがポイントになります。それを検証するために、人は過去を振り返る必要があります。過去に大きな選択を行った際、自分(たち)のどのような価値観がそうさせたのか、その結果、どのような未来を生み出されたのかを見つめなおすことによって、選択とその結果の繋がりの精度が高まっていきます。

自分(たち)の未来を創り出す選択を行うために、人は現在と未来と過去に視点を移し変えながら考える必要があります。つまり、そこには「時間」という視点が生まれるのです。

人の多様性は創造的変化を生み出すための源泉です。しかし、多様性を活かすには、それを可能とする能力を、組織におけるリーダーとメンバーが有していることが前提です。4次元思考の考え方が、そのための参考になれば幸いです(おわり)。

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