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- 【コラム】多様性を活かす4次元思考 第1回:1次元で「違い」を明らかにする
今回から4回連載で、筆者の考える「4次元思考」について解説します。
ここでいう4次元思考とは、数学を用いたロジカルシンキングの手法などではなく、ダイバーシティマネジメントにおいて有益な考え方を意味しています。
ダイバーシティマネジメントは文字通り、多様性をマネジメントすることが必要であるため、常に複雑さを伴います。組織内における多様性は、進歩や創造の原動力となる反面、単に人材の多様性を高めただけでは人間関係のストレスを増し、かえって生産性を落とす恐れが少なくありません。
4次元思考は、多様性のマネジメントを求められる立場にある人が、多様性の複雑さを解きほぐし、そこから進歩や創造を生み出すための視点を提供しようとするものです。
第1回目は「1次元思考」についてです。
多様性とは「価値観の違い」を意味します。性別、世代、国籍など、外面的な違いがダイバーシティマネジメントの問題なのではなく、それぞれの外面的違いによって内面的な価値観の異なることが、ダイバーシティマネジメントの必要とされる理由です。
図1に示すように、この内面的違いは一次元(直線上)で表すことができます。つまり換言すれば、「違い」とは「何らかの価値尺度において異なる地点に別の人が存在すること」です。
多様性をマネジメントするためには、最初に「違い」を認識しなければなりません。AさんとBさんのどこが、どのように異なるのか(=違い)が理解できていなければ、何をマネジメントすればよいのかもわかりません。1次元思考は、このような違いを明らかにするために必要な視点です。
しかし、1次元で考えている限り、違いの存在はわかったとしても、違いを効果的に活かすことはできません。より正確に述べるなら、違いと違いをかけ合わせ、シナジー(相乗効果)を生み出すことはできません。なぜなら1次元思考において、とりうる選択肢は次の3つだからです。
①違いを違いのまま放置する。
これはAさんとBさん、あるいはAさんとBさんとそれぞれ同じ価値観を持った人々が協働(コラボレーション)するのではなく、別々に仕事をするという状態です。たとえば、男性チームと女性チーム、若手チームとシニアチームなどが分かれて活動する方法がそれに当たります。
このような方法が有益なケースもあり得るでしょう。しかし、ダイバーシティマネジメントが必要とされている多くの場合においては、現実的な解決策にはならないと考えられます(多くは、異なる価値観を持った人がいかに協働するかに悩んでいるため)。また、このような方法は同質的な組織を切り離して運営するものであるがゆえに、厳密には多様性をマネジメントしていることにはなりません。
②どちらか一方の価値観を優先する。
これはAさんがBさんに対して自分の価値観を強要するケース、あるいはAさんが自分の価値観を押し殺してBさんの価値観を受け入れるケースです。このようなケースは、現実のビジネスの場面でしばしば見られます。
たとえば、企業合併において強い方の企業が自社の風土を押し付けた結果、もう一方の優秀人材が辞めてしまうような場合。あるいは、中途入社の人材が、入社した企業の価値観に合わせようとして、自分本来の強みを発揮できないような場合などです。どちらのケースも、多様性を活かすという観点からは成功していると言えません。これらは多様な人材を同質化させようとするものであるため、多様性を活かしていることにはなりません。
③対立して葛藤を引き起こす。
これはAさんとBさんがそれぞれの価値観を戦わせ、葛藤を引き起こす状態です。これも現実のビジネスの場面でしばしば見られるものです。このような葛藤が結果として、組織の耐久力を強くすることはあったとしても、葛藤が起こっている状態で、シナジーが生み出されることはありません。そればかりか、逆に仕事の生産性を大きく低下させてしまうリスクがあります。
1次元思考において、「違いを明らかにする」というダイバーシティマネジメントの第1ステップは達成できたとしても、「違いからシナジーを生み出す」という真の効果を生み出すためには、2次元以上の思考が必要になるのです。
(つづく)