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- 【コラム】提案営業とはそもそも何か? ~「成功する」提案営業の進め方 (1)~
提案営業とはそもそも何か?
提案営業の実践テクニックについて解説する前に、まず提案営業の定義について確認しておきましょう。
提案とは文字どおり、「案を提供すること」です。ここでいう案とは、顧客の課題を解決するための案を指します。では、誰に対して案を提供するのでしょうか?もちろん顧客に対してですが、あらゆる顧客に対して、課題を知って提案を行うことは不可能です。そのため、提案を行うためには、まず提案を行う対象となる顧客、すなわちターゲット顧客を選ぶ必要があります。つまり、提案営業とは「ターゲット顧客の課題を解決するための案を提供する営業活動」」と定義することができます。
では次に、提案営業の対極にある営業活動について考えてみます。提案営業の反対は、「商材説明型」の営業といえます。売っているものが、製造業であれば製品であり、サービス業であればサービスですが、ここではひとまとめに商材と呼びます。商材説明型の営業は自社商材のセールストークによって、顧客に商材を買ってもらおうとする営業活動です。これは、まず自社ありきの営業スタイルです。つまり、商材説明型は自社側に軸足があり、提案営業は顧客側に軸足がある。ここが最大の違いです。
1つの例えを挙げましょう。よく社内で上ばかり見ている上司がいます。ひらめ上司だとか、チューリップ上司だとか揶揄されることもあります。この人たちは基本的には上からどう思われるか、自分の損得ばかりを考えています。そういう上司の下についた部下は、上司を信頼するでしょうか?おそらく、自分のことしか考えない上司を、心から信用しようとは思わないに違いありません。
営業においてもこれと同じようなことが当てはまります。営業担当者が自社商材を自社の損得のみ考えて売ろうとすると、そのスタンスは顧客に敏感に伝わってしまいます。そのような営業担当者と関係を深めたいと、顧客はおそらく思わないはずです。そのため、顧客との信頼関係を築くための前提になります。実はそのための営業方法が提案営業なのです。けっして、商材を売るためのテクニックではりません。本稿では、主に法人営業を中心に話しますが、基本的な考え方は個人向けの営業にも当てはまります。
信頼関係を構築するための方法論
「営業とは営業担当者自身を売ること」ということがしばしば語られますが、それは正しいでしょうか?結論を述べると、基本的には正しいことだといえます。「顧客との信頼関係ができていれば、道端の石でも売れる」という人もいます。さすがに石が売れるかどうかはともかくとして、ある意味ではこれも当たっています。どちらの発言も営業の本質は、顧客との信頼関係を構築することにあることを示唆しています。しかし、どうすれば信頼関係を構築することができるのかというところが問題です。
図表1によく見られる失敗のパターンを挙げています。ターゲット顧客のキーパーソンとやっとアポがとれ、ものすごく張り切って初回訪問し、自社のことを知ってもらおうと一生懸命、商材の説明をします。ところが、営業担当者はそこですべてを語りつくしてしまい、次の話のネタを失くしてしまいます。顧客からすると、忙しい中で時間を作ったのに、一方的に話をされて時間の無駄だったと感じてしまいます。その結果、2回目以降のアポがとれずに、それで終わってしまう。そういうケースがよく見受けられますが、これは信頼関係の構築に失敗した典型的な例です。
顧客との信頼関係は、さすがに1回だけの訪問だけで構築できることはありません。基本的には何度も何度も、コミュニケーションを重ねる中で、この人は信頼できる人だという気持ちが生まれてきます。したがって、そのコミュニケーションの回数、繰り返しが重要となります。1回ですべて片付けようとしてはならないのです。
ビジネスの世界においてコミュニケーションを繰り返すためには、話の内容が顧客のビジネスに役立つものでなければならないことは言うまでもありません。それが、すなわち提案なのです。顧客の抱えている課題に対して、解決策を提案するという対話の繰り返しの中で、信頼感が築かれていきます。信頼関係が構築されてはじめて、大きな商談、重要な商談が出来るようになるのです。つまり、ビジネスコミュニケーションの方法論といえます。(続く)
【出展元:Business Risk Management 2007 December】
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