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避けられないマクロトレンドと日本企業の活路 ~データから見えること~

[2007.08.27] 松丘 啓司  プロフィール

日本企業は、今、新たな時代に突入しようとしている。過去とは様変わりする環境下において、遅くとも今後10年のうちに日本企業は新たな成功の方程式を組み立てなければならないだろう。そこで本稿では、新たな人材・組織マネジメントの構築に求められる要件を、データから読み取っていく。


人口減少のインパクト

 将来予測には不確実性が伴うが、かなりの確度で予見できる変化がある。その1つが、誰もが知る「人口減少」である。図表1に今後50年の人口推移予測を掲げているが、人口減少は2つの意味で日本経済に大きなインパクトを与える。
 第1は総人口の減少による消費者の減少である。消費者の数が減ることによって、国内の「需要」が減少する。これは個人向けビジネスだけでなく、法人向けビジネスにも波及する。
 第2は生産年齢人口の減少による働き手の現象である。つまり、「供給」力が減少する。供給力の減少率は総人口の減少以上のスピードになると予測されている。かつての高度成長期に、いわゆる人口ボーナスが寄与したのと反対の現象が起きる。
 需要も減り続け、供給も減り続けると、経済はどんどん縮小均衡していく。年々、経済が縮小する状況が長年にわたって続く状況を私たちは経験したことがない。これは社会の活力を大きく衰退させる恐ろしい事態である。
 しかし、このような事態を回避する方向に企業は向かうに違いない。そこに企業の存在意義があるからである。
 需要面については、まず新たな国内需要の創造が必要とされる。一方で、海外ビジネスの拡大が必要とされる。それは単に製造拠点を海外に移したり、海外から商材を輸入したりすることではなく、海外における需要そのものを獲得することである。そのために、グローバルビジネスを開発できる人材が求められる。
 供給面では、減少した供給力を補う生産性の向上が必要とされる。業務効率をさらに高めることが必要であると同時に、知識経済化の進展に合わせて、同時に、知識経済化の進展に合わせて、一人ひとりが生み出す付加価値を高めるという観点での生産性向上が求められる。一方で、供給力を量的に補うことも必要である。そのために、女性の活躍が不可欠であるとともに、外国人をサービス業やホワイトカラーの仕事において活用することも現実になる。そのために、企業はダイバーシティマネジメント力を高めなければならない。

図表1 年代別人口推移予測
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アジアの大国の台頭

 確実に予測できる次の変化は、中国とインドが経済大国になることによって、日本のアジアにおける存在感が相対的に低下することである。
 これまで日本はアジア最大の経済大国であることを当然のことと考えてきたが、当然ではなくなる日が近い。それによって、国際社会における日本の経済的影響力が相対的に薄れることが予想される。
 図表2のデータによると、2010年代後半には、実質GDPペースで日本は中国に追い抜かれる。2030年代半ばにはインドにも抜かれる。2050年には、中国は日本の約6倍、インドは約3倍の経済規模に成長すると予測されている。相対的な規模で劣るのは避けられない。人口の差はいかんともしがたいからである。

 (図表2 各国実質GDPの将来予測)
koramu_6.jpg
  


 しかし、図表3に見られるように、1人あたりのGDPの差は簡単には縮まらない。
 もちろん、日本の人口減少の中で、1人あたり実質GDPを増やし続けるのにも相当の努力が必要であるが、日本企業は、量ではかなわなくても質で勝負ができる。
 そのために、品質、技術、アイデア、デザイン、ブランドといった点での差別化が目指す方向性になると考えられている。それを実現することによって、2050年には日本は1人あたり実質GDPを倍増できる可能性がある。

 図表3 各国1人あたり実質のGDP
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それはつまり、1人ひとりは今よりもずっと豊かになれるということである。この豊かさは単に物質的なものではなく、人間的・精神的でかつ多様な満足感や充実感をもたらすものになると考えられる。企業はより高次元の豊かさの創造に貢献しうるだろう。

(出展元:人材教育2007年8月号)

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