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「個の自立」と「個を活かす経営」:その(1)

[2006.08.20] 松丘 啓司  プロフィール

2年前に「個の自立」に関する研究プロジェクトを開始し、昨年の9月に、自立度診断というアセスメントをリリースしました。それから1年間、多くの方々に診断を受けていただき、「自立」をテーマにディスカッションさせていただきましたが、やればやるほど、「自立」というテーマは日本企業とそこで働く人々にとって重い課題だと感じています。

バブル崩壊後の失われた10年を経て、日本企業はリストラというかつての聖域に踏み込み、成果主義人事の振り子を大きく振って、過去の日本型の人事システムをグローバルエコノミーの環境に適応できる仕組みに変容させてきました。その過程で変化したのは、終身雇用や年功序列といった目に見える制度だけではありません。もっとも、大きな変化は人事システムの根底に存在する経営思想のパラダイムにあると考えています。それは「依存モデル」から「自立モデル」への変化です。

あらためて確認するまでもありませんが、過去の日本型人事システムは会社への個の「依存」を前提としたものでした。会社は社員のキャリアや収入を保障する引き換えに、社員の忠誠心とがんばりを得てきました。つまり、会社は社員に対して、会社への依存を促していたといえます。また、個人の側にも、たとえば大きくて有名な会社に属することが、自分の社会的価値を高めるという意識がありました。依存することは、個人にとっても良いことだったのです。

今日では、企業が社員のキャリアや収入を完全に保障すると約束することは到底、できませんし、有名な大企業に勤めていること自体の価値も相対的に薄れています。依存モデルは、疑いのない保障が担保されなければ成立しないため(中途半端な保障では保障されていることにならない)、既に崩壊しているといえるでしょう。このため、日本企業が拠って経つ根本的な人事モデルは、多かれ少なかれ、個の「自立」を前提としたモデルに転換されなければなりません。

ところが、現状を見た場合、2つの大きなギャップが存在します。一つは、企業の人事モデル(およびその背景にある経営思想)が、個の自立化の推進を前提としたものになってはいないことにあります。もう一つのギャップは、大多数の社会人にとって、自立の重要性について認識し、自立に必要となる能力を磨くための機会が不足しているということにあります。つまり、パラダイムは既に転換しているが、会社の仕組みや運営も、働く社員もその変化に適応できていないという点が問題であるといえます。

ここに至って、2つの課題が浮かびあがってきます。すなわち、?@新たな人事モデルはいかにあるべきか、?A個々人は何を学ぶべきか、という2点です。前者に関するキーワードは、「個を活かす経営」にあると考えています。この旧くて新しい言葉が単なるキャッチフレーズではなく、真に実体を伴うことが求められる時代になってきたと思っています。この点について、次回、続きを書きます。

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