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研修後のアンケートから見える若手社員の育成課題

[2010.01.20] 佐藤 綾子  プロフィール

 研修を実施した後には、必ずといっていいほどアンケート記入が行われる。研修は当日実施して完了ではなく、後日アンケートの結果を見ながら、私たちは企画者の方たちと研修についての振り返りをする。アンケート結果には受講生からの貴重なフィードバックが書かれているわけであり、よい研修をつくっていくために必要なヒントがたくさん入っている。結果に一喜一憂するのではなく、しっかりと内容を読み込み、次回以降に活かしていくことがとても重要である。

 私はアンケート結果を見ながら、自分が実施したコースの振り返りをする。そのときには、クラス全体の印象はもちろん、一枚一枚本人たちが記入したアンケート用紙を見ながら、一人ひとりの当日の様子や表情、発言、ワークシートの記載内容などを思い出し、アンケートのコメントと照らし合わせる。

 これは私にとってとても気づきの多い時間である。なるほど、と思うコメントもあれば、研修時の様子と書かれている内容とのギャップに驚くときもある。最近アンケートの奥深さについて、よく同僚と話しているのだが、いくつか私が感じていることを本コラムでは書いてみたいと思う。


 研修後のアンケートは「気づき」を整理する大切な時間

 たいていの場合、アンケート記入は研修終了後にすぐ行われる。「今日の研修についてアンケートにご協力ください」といったような案内をされ、各自記入し、書き終わった人から提出して退出、という流れが多い。

 受講生にとっては、長時間にわたる研修で疲れているところに、追い討ちをかけるようなアンケート記入作業。それはたしかに煩わしいと感じても仕方のないことかもしれない。面倒くさそうに記入し、足早に会場を去っていく人はたいていどのクラスにもいる。一方で、研修のテキストを振り返りながら、じっくりと記入を進め、提出時に担当者や講師の私にコメントを伝えに来る人もいたりする。

 アンケートに対する意識や取り組み姿勢は人によってさまざまだと実感しているのだが、しかしながら、それを放っておいていいのだろうか。私が思うのは、アンケートは決しておまけの作業ではない、ということである。「遠足は自宅に着くまでが遠足ですよ」とは小学生時代によく言われたものだが、「研修はアンケートをきちんと記入して提出するまでが研修」である。

 たしかに面倒くさい、かもしれない。しかし、アンケートは「できればしっかりと記入したほうがよいもの」ではなく、「しっかりと記入すべきもの」だと思う。しかも、会社から研修受講の機会を与えられ、業務時間内に参加しているということであれば、その時間内は自分の仕事に取り組むのと同じ意識で、誠実な姿勢、真摯な対応を全うすべきものではないだろうか。何かそこを履き違えている人が多いように感じてしまう。自分にとって手間がかかるから、面倒だから、というような次元の話ではないと思う。

 本来、研修アンケートをしっかり記入するのは本人たちにとって意義のあることのはずだ。「この研修でどんな経験をしたのか」「どんな気づきがあったのか」「自分にとってどんな意味があったのか」「どう現実に活かすのか」といった自分自身の振り返り(リフレクション)になり、そこから学びが深まったり示唆が得られたりするものである。

 たとえば、仮に研修が「つまらなかった」と思ったとする。それならば、「なぜ自分にはつまらないと感じられたのか」「どこがつまらなかったのか」などを深堀することで、それはそれで自分に気づきとなるはずである。面倒くさい、と思って手を抜いたり、何かをやらなかったりすることは、私たちの日常でもよくあることだが、それによって実は大切な学びの機会を喪失していることもあるのだということを忘れないほうがよい。


 アンケートが"雑"な社員は、日常業務も"雑"になっていないか?

 ただ、自分の学びの振り返りになるものとはいえ、アンケートは自分用のメモではない。必ず第三者が読むものである。ところが、しっかりそういう意識を持って記入されたのだろうか、と疑問を抱いてしまうようなアンケートが多い。パソコンを使う機会が多く、漢字が書けなくなっている、という話はよく聴くが、まず誤字脱字が多い。ただそれ以前に、書かれてある文字が判読不能なことが多いのが気になる。

 私は字の下手さを言っているわけではない。丁寧さ、の問題である。非常に"雑"に記入している人が多い。また、アンケートの質問に対してピントのずれた回答をする人もおり、内容についても"雑"な印象を受けることがある。実は最近、こういった印象は若手向け研修のアンケートから感じることが多い。

 アンケートとはいえ、会社に提出されるものであり、自分の名前が記入された、ある意味では自分の分身ともいえる。そのあたりの認識が薄いことは問題だと思うし、そういう人は普段の仕事でも、相手を意識しなかったり、自分本位、自己満足の仕事の仕方になったりしていないだろうか、とつい懸念してしまう。

 よく若手のうちには、目の前の仕事にただ漠然と取り組むのではなく、「自分の仕事は誰のためにあるか」「この仕事はどこにつながっているのか」ということをしっかりと意識しながらやらなければならない、と教えられるが、研修のアンケート記入にしても同じことが言えるのではないだろうか。

 「最近の若手は、自分が今やっていることの先がイメージできない。学んだことを他のパターンに応用することができない」というようなコメントが聞かれるが、アンケートに対する姿勢からもその様子が垣間見られるように思う。また、このアンケート記入への姿勢が、職場の"報・連・相"にもつながっているように感じているのだが、それについては次回に書くことにしたい。

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