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リーダーシップはなぜ教育が難しいか?(1):リーダーになりたがらない人達へ

[2010.01.13] 佐々木 郷美

 ここ数ヶ月、当社で開催したリーダーシップ研修の説明会を振り返ってみると、リーダーシップを養成する上で、各社が様々な課題を抱えていることが分かる。企業の成長戦略の一環として必須の命題であることは分かってはいるものの、現場で同じ思いを共有しにくい現状があるように思う。これからの数回のコラムでは、リーダーシップを企業の現場で育成する勘所を考えてみたいと思う。

 よく耳にする声の一つに、「現場の負荷が高く、中間管理職がプレイングマネジャー化し、部下とコミュニケーションを取る時間すらない」というものがある。確かに、手っ取り早く業務の負荷を減らしたくてたまらない現場のマネジャー達にリーダーシップを教えようとしても、食べたくない食べ物を無理やり口に入れさせるようなものだ。また、そのような上司を見ていて、管理職にはなりたくない、組織の中では目立たず、大きな成功も失敗もせずに無難な成果を出せればよい、と考える若手社員も少なくない。

 ここに幾つかの誤解がある。リーダー=管理職、リーダーシップ=部下育成と捉えられていること。そして、リーダーであるということは、プレーヤーとしても先頭を走り続けねばならない、という暗黙の認識も存在している。

 しかし、リーダーシップは管理職であるなしに関わらず組織のどのレベルでも発揮できるし、しなければならない機能である。本来の定義に立ち戻ると、「個の多様性を活かして、組織の未来を切り開く」機能であり、別に部下指導における上から下に与える影響力に限定されている訳でもない。自分と異なる強みや価値観を持つ部下や関係者から、現在の正解の見えない混沌としたビジネスの世界において、一緒に新しい価値や視点を紡ぎだしていく過程こそがリーダーシップなのだ。人を育てる、というより共に育つプロセスとも言える。

 したがって、プレーヤーとして単に優秀であるよりも、現場の葛藤やジレンマも経験し、失敗体験も共有できる存在であることの方が、リーダーシップを発揮する上では重要である。優秀なプレーヤーに全員はなれなくても、他者と関わりながら創造的な仕事を生み出すことは組織の中で全員にそれぞれの立場で求められている。

 逆に、あなたが上記の意味でのリーダーシップを発揮しない限り、組織の中にいる意味や意義は存在しなくなる。どんなに現場の仕事を効率よく回せるようになったとしても、日々起こる業務上の問題解決に対処できるようになったとしても、自分の仕事が組織の未来を生み出していない限り、いずれは代替可能な存在になってしまう。そして、忙しいマネジャー達が業務に忙殺される中で、自分達の生み出している価値を吟味し、熟考する時間を取るのは、とても難しい。

 考えて欲しい。自分はこの仕事を通して、会社や顧客にどんな価値を提供したいのか?今いる自分の組織をどんな会社にしたいのか?組織の価値観のどこに共鳴しており、何を変えたいと願っているのか?この組織で、あなたにしか起こせない変化は何か?このような本質的な問いに答え、内発的な自分の心の声を探るのは非常なエネルギーを要するし、決して容易なことではない。ただし、それができていないと、あなたがその組織にいる理由も、組織にとってあなたがいなければならない理由もなくなってしまう。

 リーダーであるということは、組織の中で異分子的な存在であること、つまり一種の緊張感を意味する。それが、最終的には本人の仕事ひいては組織全体にとって刺激や新鮮さを提供する要素になることは間違いない。目の前の状況に対応する術だけに長けてはいけない。こういう時代だからこそ、本質的な価値に目を向けさせねば、組織も個人も成長しない。

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