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なぜ営業マネジャーの指示は部下に腹落ちしないのか?

[2009.11.11] 高橋 研  プロフィール


 噛み合わない営業マネジャーと営業担当者

 『マネジャーが言っていることは結局は理想論なんですよ』
 『上が言ってることは分かるんですが、そう簡単にはいかないんですよ~』
 『ちゃんとマネジャーから言われたとおりにやっているんですが、たまに不安になるんですよね』

 これらは今年になってからクライアントの営業現場において、私が若い営業担当者から何度も聞いた言葉です。特に比較的大型の案件を担当している方からこのようなコメントを聞くことが多くなっている気がします。

 営業現場の一部ではマネジャーのアドバイスや指示が担当者の腹に落ちていないように感じることがあるのですが皆様の会社ではいかがでしょうか。

 この大不況の中、きっとどの会社でも営業マネジャーは一生懸命に頑張っているはずです。部下に少しでも成長してもらうように、1円でも多く売上げを上げてもらうように必死でアドバイスを送り指示を出しています。

 しかしなぜ部下の腹に落ちないのでしょうか。

 実際に営業マネジャーの方々に部下指導の際の感触を聞いてみました。

 『一生懸命に教えているのですが、、、正直この教え方で良いのか分からないんです』
 『自分が昔上司から教わったように、部下に対して教えているのですが・・・他に良いやり方はあるのでしょうか』

 驚くべきことに明確なアドバイスや指示を出している営業マネジャーの方々の中にも部下への指導について悩んでいる方が多々いらっしゃいました。自分のアドバイスや指示に対して確固たる自信が持てていないのでしょうか。仮にそうだとすればその原因は何なのでしょう。


 大不況下、熾烈競争下において求められる営業マネジメント

 現代の多くの営業マネジャーは自分なりの成功体験を持っており、それを糧にして会社とともに成長してこられた方々です。体育会系の上司に厳しく鍛えられ、また上司の指導をしっかり守ってついていき、会社に貢献してきた方も多いことでしょう。その方々が自分の成功体験を部下にしっかりと伝え、自分と同じように成功して欲しいと願う気持ちは必然かもしれません。

 しかし、この大不況の中、既に右肩上がりの時代の成功パターンは通じなくなってきています。また顧客の要望は多様化、複雑化してきており自分達の現役時代では考えられないような要望が出てくるようになってきました。

 もはや営業マネジャーが自らの経験則や知識だけで部下の指導をしようとしても限界があるのではないでしょうか。むしろ、営業マネジャーよりも部下の方が圧倒的に沢山の情報を持っていて、それが整理できずに悩んでいるケースも多々あります。まさに宝の山に埋もれて、もがき苦しんでいる状態です。

 この状況を踏まえるとこれからの営業マネジャーのマネジメントや指導スタイルは解決策を指示するだけでは不十分なのかもしれません。部下が自ら考え、自らアクションを決める「プロセス」を支援し、質問を投げかけながら部下の自発性を促す指導スタイルも徐々に身に付けなければならない時期なのではないでしょうか。

 これはコーチングに近い考え方です。

 コーチングと言うと難しく聞こえるかもしれませんが、いきなり大幅にスタイルを変えたり資格を取得しに学校に通い詰める必要は無いと思います。


 具体的なマネジメント手法の例

 部下の指導をする際に、まず誰にでもできる以下の3ステップから試してみてはいかがでしょうか。

 (1)部下の現状を把握する
  例)今の○○商事の案件について、何でもいいから現状を教えてくれる?

 (2)部下が抱える課題を把握する
  例)困っていることや悩ましいことがあれば幾つでも挙げてみてくれる?

 (3)部下に行動を約束させる
  例)まずやろうと思っていることは? 全く新しいやり方を試すとしたら? どうやって解決しようとしてるの?

 この3ステップを実施した後に初めて端的にアドバイスや指示を送ります。私が現場密着型の営業コンサルティングを行う時にも、このプロセスは必ず実施します。

◆短期的に表れる効果

 ・部下に自分で考える癖がつく
 ・自分で考え発言した内容なので行動に移しやすい
 ・自分の気持ちや考えをたくさん喋った後のアドバイスは受け入れやすい

 この様な効果は比較的すぐに出てきます。日常的に(特に大型案件に対して)部下とこのような関わり方ができると部下の動きも変わってくるのではないでしょうか。

◆気をつけたい癖

 その一方で営業マネジャーがついつい陥りがちな癖もあります。これらは私も頻繁に見かける光景で上記の効果を妨げる弊害が発生します。部下との会話が次どれかに当てはまっていないか、振り返ってみて下さい。

 ◇指示型
   ああした方が良い、こうすべきだ、という指示やアドバイスが会話の大半を占める。
⇒部下だけが知っている重要な事実や判断基準を見落としてしまうリスク

 ◇経験談型
   自分の過去の体験を披露し、部下の行動をまずその型にはめようとする
⇒不況下、熾烈競争下では通用しないようなプロセスの遂行を指示してしまうリスク

 ◇一般論型
  一般事例を引き合いに出し、当該案件にもあてはめようとする
⇒多様な顧客ニーズを無視しており、本質的な課題解決につながらないリスク

 これらはいわゆるティーチングです。ティーチング型は市場が右肩上がりの好況下では有効かもしれません。顧客のニーズが極端に多様化することもなく、過去の成功要因を踏襲することによって成果が期待できるからです。また仕事を何も知らない新卒社員にも仕事の大原則を覚えてもらうという点で有効だと思います。

 しかし大不況下、熾烈競争下においてはティーチング型が危険なケースが多々あります。その理由は前述のとおり過去の成功要因が現代では通用しなくなっているためです。

 皆様のマネジメントスタイルはコーチング型でしょうか、それともティーチング型でしょうか、それとも両刀でしょうか?大不況下、熾烈競争下において部下と会社を成長させるためには営業にも少しコーチングの要素を取り入れてみるのもよいかもしれません。

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