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- 【コラム】仕事のストレスを人生のスパイスに変える処方箋(3):周囲との関わりを断った瞬間、成長は止まる
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ストレスについての連載も今回で3回目、いよいよ最終回である。何を隠そう、ストレスをテーマにコラムを書く日々は、私自身のストレスと向き合う日々でもあった。私自身はかなりストレスを感じやすい性格である。これは自覚しているし、周囲の人からも指摘されている。最近、私はほぼ同時期に2人から私の印象についてフィードバックを受ける機会があった。
「あなたは忍耐の人だよね」
「あなたはどうしてそんなに我慢しているの?」
私にとっては我慢や忍耐、といった自覚がなかったのだが、自分自身を振返っていくにつれて、私の中にこんな言葉を見つけた。「私さえ我慢すれば・・・」「今辛抱すればいつか・・・」これが私を縛る思考の枠組み、心の声だった。
こういった心の声が実はストレスには大きく影響をしているといわれる。私は他の人からの助言によって、自分自身ではなかなか気づけない心の声を発見できた。他者からのサポートはストレス対処にとても効果的だといわれているが、少し振返ってほしい。あなたが悩んだり困ったりするときに、あなたを支えてくれそうな人は誰がいるだろうか。どんな人が思い浮かぶだろうか。あなたが本音を言える相手はどれくらいいるだろうか。
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困ったときや悩んだときに、誰かにサポートを求めることは消極的なことと思われるかもしれないが、依存するわけではなく積極的にサポートを活用していくのであれば、それはとても意味のある行動である。もしサポートを得ることに対して抵抗を感じるのであれば、もしかするとそこに自分自身を縛る思考の枠組みがあるのかもしれない。「サポートを得るのは弱い人間のすることだ・・・」といった声はないだろうか。
少し話はそれるが、本当に強い人は、自分の弱さも認め、受け入れる人ではないかと思う。もちろんそれは、弱いことで人の同情を得ることではない。弱いことを素直に認め、自分に足りないところについては謙虚に自覚し、それを改善、修正していくために努力していく人こそ、強さを持っていると私は思う。また、人が成長できるかどうかは、他者からの苦言をどれだけ素直に受け入れられるか、が鍵ではないかとも思う。
話を戻すと、他者からサポートを得ることはストレス対処においていろいろな効果がある。まず、ただ話を聴いてもらうこと、それだけで実は悩みの多くが解消するとも言われている。もやもやしているものは誰かに話すことで明確になり、整理される。溜まった感情を吐き出すだけで、実は心も軽くなる。また、誰かに話すことで、自分とは違う視点から効果的なアドバイスや情報が得られることもあるし、相手が具体的に何かを手伝ってくれるかもしれない。そして、本音で悩みを話せば相手との関係性も深まってくる。
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しかし、ただ待っているだけでは、人のサポートは得られない。誰かのサポートが必要だと思うのならば、自分からサポートを求めなくてはならない。最近若手の研修をしていて気になるのは"KY(空気を読めない)"というキーワードがよく聴かれることだ。相手にどう思われるかばかりに気を取られ、本当に言いたいことを飲み込む傾向が強い。わかってほしい、感じ取ってほしい、という思いはあるが、伝えることをしない。そうやって自分自身を孤立させてしまうこともある。
一方で、もう少し上の世代になると「言っても無駄」というあきらめ感の方が強いかもしれない。ストレスを感じたり、仕事でうまくいかないと気がめいったりするとき、私たちは知らずに人との関わりを遮断していることが多い。周囲との関わりを自ら断ってますます孤立していくのだ。うまくいかないと感じるときこそ、ぜひ自分の周りの人とのつながりを思い返してほしい。つながる必要がある人としっかりつながっているだろうか。誰とつながりを深める必要があるのだろうか、と。そして、表現しないと思いは伝わらないのである。
あきらめた瞬間に、そこで可能性は閉ざされる。自ら自分の成長の可能性をあきらめることはしないでほしい。ぜひ、人にかかわろうとする姿勢をなくさないでほしいと思う。自分がかかわろうとすることによって、きっと何か別の展開が開けてくるはずである。
最近強く感じるのは、真剣に生きれば、見なくていいものや感じなくていいことに直面することも増えるが、だからこそ大きな達成感があったり、新しい自分に出会えたりするのだということである。ストレスと闘うのではなく、うまく成長エネルギーに変えていくという視点で考えたとき、今までとは何か行動や気持ちが変わってくるかもしれない。