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組織を『エナジャイズ』するリーダー(2):リーダーがメンバーから集めるべきものは「人気」ではなく「人望」

[2009.09.14] 佐々木 郷美


 リーダーとは組織の未来を切り開く人であり、リスクを冒してでも変化を生み出さなければならない状況でこそリーダーシップの発揮が求められる。

 ある日、あなたは部下を呼び出し、こう告げたとしよう。

 「これからすごく大きなプロジェクトが始まる。当社の中では、誰も行ったことがない、前人未踏の仕事だ。リスクもあるし、失敗する可能性もある。反対勢力のジャマも入るだろう。たぶん、一ヶ月は徹夜同然の働き方をしなければならない。お願いできるか?」

 さて、あなたの部下は、あなたがどんな人であれば「この人のためなら頑張ろう」「この人となら、一緒に乗り越えられる」と思うのだろうか?苦しい状況でも心が燃え立つだろうか?一方、部下が「この人にはポジション的に逆らえないから仕方がないな」と思ってしまうのはどんな場合だろうか?

 ピーター・F・ドラッカーの言葉を引用すると「リーダーについての唯一の定義は、付き従う者がいることである」。あなたには、メンバーに自分の意思で付き従いたいと思わせる存在感があるだろうか?

 『信頼のリーダーシップ』(ジェームズ・M. クーゼス、バリー・Z. ポスナー著、岩下貢訳、生産性出版、1995年)によると、信頼できるリーダーとしての要件の上位には「正直さ」「未来指向」「情熱的である」「有能である」「フェアである」「支援してくれる」などがあがってくるそうである。有能さも大事だが、それはその人が培ってきた有能さが自然とにじみ出る場合であって、自分を実力以上に見せようとするリーダーには人は決してついていかない。

 私なら、この演習のリーダーに一番に求めたいのは"逃げない姿勢"である。「自分がチャレンジしたい仕事だから一緒に頑張ってくれ。失敗するときは、私が責任を取る」と言って欲しいものだ。間違っても「これは会社の方針ですべき仕事だから仕方がない。失敗したらあなたの責任」という態度は取って欲しくない。自分が全面に立つ覚悟、失敗した時に自分の過ちを認められる潔さを求めたい。新しいことに取り組んだり、変化を起したりする時には、過去に自分が行ってきたことをまず一度否定しなければならないことだってある。自己否定するには勇気が必要だ。

 どれくらいの成果を出せる人かも大切だが、どういう姿勢やスタンスで成果を出す人なのかの方が重要である。そういう意味では、「信頼」には、その人の"人としての"「あり方」「存在」が問われてしまうと言えるだろう。つねづね、何事にも誠実、謙虚に、前向きに取り組める人でなければ、いざという時に、まるでそうであるかのように表面を繕ったり、見せかけたりすることは不可能に近い。信頼は短期醸成できるものではない上に、こつこつと積み上げた信頼が崩れてしまうときは一瞬である。

 リーダーシップを発揮するには信頼は不可欠であり、メンバーがついてくるかはそこで決まる。楽しいときに喜びを共有してくれる人は誰でもいるだろうが、困難な状況でも喜んで苦労をともにしてくれる人がいるかどうか、が問題である。日本語の「人気」と「人望」の差くらい大きな違いがある。「人気」あるリーダーが組織を元気にしてくれるような幻想を抱きがちだが、そのような華やかな存在感がある必要は必ずしもないし、それだけでは信頼は成立しない。昨今の経済状況から推察すると、日本の企業で、大きな変化のまっただ中、転換期にある企業は決して少なくないだろう。あなたについてくる人はどれくらいいるだろうか?リーダーシップの原則に立ち戻って、自分のあり方を見つめたいものだ。

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