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仕事のストレスを人生のスパイスに変える処方箋(1):人は、上手に悩めば成長する

[2009.08.20] 佐藤 綾子  プロフィール


 ストレスとの上手なつきあい方を身につけよう

 「今あなたにはストレスがありますか」

 こんな質問をされたらあなたはどう答えるだろうか。おそらく多くの人がYesと答えるのではないだろうか。「最近ストレスがたまっている」「あの上司は本当にストレスだ」「ストレスで胃が痛い」・・・こんなフレーズを知らずに口にしているのではないだろうか。

 日々生活をする中で、私たちは知らずに「ストレス」という言葉をたくさん使っており、実際にストレスを感じることは多い。厚生労働省の労働者健康状況調査(平成19年)によると「仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスがある」と答えた人は58%という結果も出ている。

 もちろん誰でも「必要のないストレスは感じたくない」「ストレスフリーな人生を送りたい」と願うものである。しかしそもそも、ストレスは悪いものなのだろうか。ストレスとは私たちの敵なのだろうか。ストレスをなくせば私たちは幸せな生活を送ることができるのだろうか。

 仕事をし、自分以外の他者と関わりながら生きていく上で、ストレスが存在するのは避けられないことだろう。しかし、私たちは仕事をするからこそ、多くの学びや成長が得られるし、かけがえのない経験を積むことができる。他人と接するからこそ恩恵もたくさん受けられる。よくストレスは人生のスパイスにたとえられるが、ストレスが全くない生活は、もしかしたら刺激が無く、味気ないものではないだろうか。

 もちろん、ストレスを避ける、なくす、解消する、というのは大切だが、もっと有効に活用し、仕事や人生を豊かにすることはできないのだろうか。本コラムでは、ストレスをエネルギーに変え、成長の原動力にしていくための「ストレスの上手なつきあい方」について考えてみたいと思う。

 まずは、ストレスとはそもそも何なのかについて触れておきたい。


 ストレスの「要因」と「結果」を区別する

 意外と知っているようで知らないのだが、私たちが上記のように使う「ストレス」という言葉には、実は2つの意味が含まれている。「ストレスの要因(ストレッサー)」と「それによって起こるストレスの結果(身体や心理的反応)」である。もしあなたが「ストレス」という言葉を使うとき、いったいこの2つうちのどちらを意味しているのかを考えてみてほしい。本来はストレス要因そのものを軽減したり、取除いたりする必要があるため、まず要因と結果を分けて考えることがストレスとうまくつきあう第一歩である。


 自分のための時間を作って、「ストレス度合い」を自覚する

 次に、ストレスの有無ではなく、ストレス度合い(ストレスレベル)がどうかという捉え方をすることである。私たちはストレスがある、ない、という考え方をしがちだが、ストレスは程度の差こそあれ、実は誰にでもあるものである。ストレスに対して無頓着であったり、自覚していなかったりする人は多いが、まず自分のストレス状態に気づくこと、ストレスレベルを把握することが必要である。

 そのときには、個人の「自己認識力」が問われる。言い換えれば、自分自身の内側へ意識を向ける習慣があるかどうかである。ビジネスマンは忙しいこともあり、内省する時間をあまり持つことができず、また重要視していない人もいるが、この内省はとても大切である。キャリアカウンセリングやコーチングではこの内省をお手伝いするが、意識して自分のための時間を作り、落ち着いて自分の状態を確かめること、さらに気持ちや浮かんでくる考えを書き出すことは自分自身のメンテナンスに非常に有効である。


 生産性が最も高くなる「ストレス状態」をあえて作り出す

 さらに、自分のストレスレベルを把握し、パフォーマンスが上がる適切なレベルに調整することが重要である。ストレスと生産性の関係で、適度なストレスは生産性を高める効果があるといわれている。皆さん自身も少しプレッシャーがあったほうがよいアウトプットが出せた、という経験があるかと思う。また、忙しいほうが充実感を感じる、という人も多いだろう。自分自身のエネルギーが高まるような、充実感が高まるような適切なストレスを作り出す、ということも必要である。マンネリのままで充実感を得られるのを待つのではなく、自分からやったことのないことを試してみたり、難易度を上げてみたり、自分で少しのチャレンジを心がけることも私たちには必要なのである。


 許容範囲を超えないよう、自分の「ストレスサイン」を知る

 最後に、これ以上ストレスがかかってくるとまずいな、自分の許容範囲を超えるな、という「自分にとってのサイン」を把握することも大切だ。ストレスレベルは個人差が強いものなので、こういう症状、傾向が現れたら黄色信号、というもの自分でしっかり気づく必要がある。たとえば、心、身体、行動のどこに自分はストレスサインが出やすいのか、という点でもわかりやすい。自分自身のストレスサインを知るとともに、自分にとってちょうどいいストレス具合を把握しておくことである。

 まとめると、自分が何についてストレスと感じているのか、そしてそのストレスレベルを把握する。自分自身にとってちょうどよい、充実していると感じられるレベルも把握し、ストレス負荷がかかってきているとわかる黄色信号を知っておく。以上がストレスに関して理解しておくべきポイントである。

 ストレスがあることをネガティブなこととして思わないことである。私たちは悩むことをネガティブなことと捉えがちだが、人は成長しようとするからこそ悩む。"上手に"悩むことが大切である。次回はこのあたりに触れてみたいと思う。

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