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ロジカルスキルだけでは創造的なリーダーシップは生まれない

[2009.08.17] 松丘 啓司/佐々木 郷美

今月の特集は、対談コラムをお届けします。
今回は「創造型リーダーシップ」をテーマに、弊社代表取締役社長の松丘啓司と、リーダーシップ研修の講師を務める佐々木郷美に、存分に語ってもらいました。


 1.企業が成長するために、今こそリーダーシップが必要

 (松丘)多くの日本企業は、厳しい経営環境の中で、これからどうやって成長していくかを模索しています。過去の延長線上のままでは縮小均衡に陥り、中国などアジアの新興国の勢いに押されてしまいます。

 企業の成長のカギは、新たな顧客や需要の創造にあると思います。そのためには、新しい価値を生み出さなければなりません。リーダーシップはその原動力になるのではないでしょうか。"リーダーシップなくして創造なし"と言うように、あらゆる階層の社員にリーダーシップが開発されなければ企業は成長できないのではないかと思います。


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 (佐々木)そうですね。私自身もよくお客様にお伝えしているのは、成長の原動力が変わってきているこということです。今までは成功のルールや正解がはっきり存在しており、それをいかに早く、システマチックに実現できるかが企業の競争優位性だったのです。ところが、市場が飽和し、顧客が誰かも分からない状況の中では、今まで見当もつかなかった新しい顧客を発見し、既存の製品やサービスを抜本的に変えるといった、次元の異なる創造性が求められています。こうした変化は、1人のカリスマ的な存在だけで生み出せるものではなく、社内に複数のリーダーがいないと難しいのではないでしょうか。


 2.リーダーシップに関する適切な理解が浸透しているとは言いがたい

 (松丘)企業にとって、創造的なリーダーシップの開発はチャレンジングな課題ですが、企業内でそれを阻むものがあるとすれば何だと思いますか。


 (佐々木)リーダーシップ自体が誤解されているのではと思います。これまでの成功モデルを変えていくことがリーダーの役割であるはずなのに、過去の仕組みを実行できるのがリーダーと考えている企業が多いように思います。


 (松丘)マネジャーとリーダーの違いについては、過去の成功要因に基づいて自分の役割を遂行するのがマネジャーであり、今まで常識と思われていた軸を変えるのがリーダーである、とよく言われます。しかし、リーダーとマネジャーはしばしば混同されています。本来、リーダーシップとはリーダー自身の「かくありたい」という思いから発するものですが、マネジメントでは「かくあるべき」が優先されるものです。


 (佐々木)本当の意味でのリーダーシップを日々の業務で発揮したとしても、上層部からあまり評価されなかったり、社内で異端児扱いされたりすることがあります。リーダーシップをはぐくむ風土が企業に不足していたのかもしれませんね。


 (松丘)ビジネスの創造はそれほど短期的に実現されるものではありません。ベンチャー企業や新規事業などの成功事例を見ていると、たいてい5年から10年はかかっています。しかし、短期的な業績のプレッシャーにさらされている企業では、目標達成のためのマネジメントが重視されがちです。

 根本的な要因として、経営層を始めとするリーダー層に対して、リーダーシップ教育がきちんとされていなかったことが挙げられるのではないでしょうか。リーダーシップとは本来どういうものかを理解する機会がないまま、ときにはリーダーシップが曲解されてしまっている気がします。


 3.リーダーシップとマネジメントは両立可能なのか?

 (佐々木)リーダーシップとマネジメントは明確に異なるものですが、今の管理職が直面しているのは、マネジメントとリーダーシップをどちらも発揮しなければならないという状況です。そのため、管理職は相当なフラストレーションを抱えていると聞きます。リーダーシップとマネジメントを上手くバランスさせ、両立させるためには企業は何をすべきだと思われますか。


 (松丘)非常に難しい質問ですね。(笑)確かに、管理職のダブルバインド状態は存在します。「かくあるべき」という外の軸に合わせて行動すると、「かくありたい」という内の軸が否定されることもあるでしょう。そのため、自分はどう振舞っていいのかわからないと悩んでいる管理職が少なくないのではないでしょうか。

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 リーダーシップとマネジメントの両方が必要だということを、企業運営の仕組みの中に備えていくことが不可欠だと思います。経営にはもともと短期的視点と長期的視点のバランスが求められます。会議の仕方一つをとっても、目の前のことを決めるための会議と、今後を考え、新たなものを生み出すための会議を使い分けることが必要です。社員の評価制度にも、現在の行動を評価する視点と、将来に向けた行動を評価する視点の両方を組み込まなければなりません。短期・長期の両方が大事だと経営者自身が伝えていくことも肝心ですが、それを会社の仕組みにも反映させることが重要でしょう。


 (佐々木)グーグル社には、自分の業務時間の20%を新たな取り組みに費やせるという規定があり、3M社には、業務の15%を自分の研究時間に充ててよいという規定があるのは有名な話ですよね。ただ、そうした明確な仕組みがある企業はむしろ少数であり、多くの管理職は時と場合によってリーダーシップとマネジメントを自分で切り替えなければならないと思うのです。毎週売上を追いかけながら、どこかで創造的な活動にスイッチしなければなりません。管理職は、リーダーシップを発揮するための具体的な所作を知り、必要に応じて切り替える方法を武器として持っておくことが大切ですよね。

 >>「4.ロジカルスキルだけでは創造的なリーダーシップは生まれない」

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