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- 【コラム】組織を『エナジャイズ』するリーダー(1):リーダーはメンバーを動機づけるだけでは不十分
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「うちの管理職は保守化している。変化に抵抗するんだよ。」
「部下とのコミュニケーションがうまく取れなくってね。」
「現場のモチベーションを上げて欲しいんだよね。」
現場の管理職にリーダーシップを求める声は厳しく、強くなっている。「組織を『エナジャイズ』するリーダー」というと、皆さんはどんな人物像を描くだろうか?常にエネルギッシュにチームを盛り上げ、若手社員に喝を入れられる上司、メンバーを褒めたり叱ったりすることが上手な上司の姿を思い描くかもしれない。
では、以下の上司2名の発言内容を見ると、どちらが皆さんの持つ「組織を『エナジャイズ』するリーダー」のイメージに近いだろうか?
上司A
「あなたのお蔭でうちのチームは持っているのよ。期待しているから頑張りましょう。あなた自身の目標に向かって前進できるように、私は徹底的にサポートし、応援するわ。だから何でも出来ることがあったら言って頂戴ね。」
上司B
「私もどうしたら良いか分からないことだって沢山ある。でも、このチームで2,3年後にはこんなことを成し遂げたいな、という想いだけはある。あなたの発言で『なるほどな』『私も気付かなかったな』と思うことはしょっちゅうある。いろいろと知恵を貸してね。」
この問いについてはコラム末尾で私自身の経験も踏まえてお答えしたいと思う。
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実は「エナジャイズ」という言葉に含まれるのは、単に元気な組織を作ることではない。企業が直面する環境変化に適応して、現場のリーダーが果たさねばならないのは、リーダー自身を含むメンバーの相互の学習や関わりによって新しい進歩や発展が生まれる土壌作りなのである。
しばらく前までリーダーシップ研修は、「メンバーのやる気を高めるコミュニケーションスキル習得」が中心であったように思う。しかし、メンバーのモチベーションアップをリーダーシップ開発の学習ゴールにしてしまうと、リーダー自身が組織の活力を奪いかねないという盲点が存在する。
一つは、リーダーがメンバーの成長や変化ばかりに期待してしまうこと。実際には、組織を「エナジャイズ」しようと思えば、リーダー自身も部下との関わりによって影響を受け、変化することを恐れてはならない。相手を変えさせることに注力するよりも、自分が変わることが必要である。そのためには、自分の持っている答えが絶対正解であるとは限らないことを認め、相手の意見に耳を傾け、自分の意見と融合させることでより良き解に到達する可能性があることを理解し、オープンに心を開いていることが求められる。
二つ目として、常に組織のモチベーションが高いことが良い状態だという錯覚にリーダーが陥ってしまうことがある。しかし、モチベーションが下がった状態で直面する葛藤や矛盾からこそ新しい知恵や発想が生まれ、活路が開けることもある。また、ストレス耐性が強い上司ほど、部下をつぶしてしまうことがあり、モチベーションが高い部下が、自らのやり方に固執し周囲に迷惑を掛けることもある。私は、組織が次のステージに向かうためにチャレンジせねばならならい局面では、決して組織が常にハッピーという訳にはゆかず、メンバーのモチベーションが一時的に低下することも、ある意味健全だと思う。
最後に、リーダーがメンバー一人ひとりのモチベートに目を向けることで、上司と部下の一対一の関わりに閉ざされてしまうことがある。リーダーは自分が部下の問題を全て解決しようとせず、メンバーが先輩や同僚、時には他の部署の上位者などを巻き込んで、自分達で解決する雰囲気を作り上げることの方が重要である。有能な上司ほど、「自分の部下だ」「自分のチーム」だという意識が強くなりがちなのではないだろうか?自分の組織やチームが持続的に成長し続けるために必要なのは、表面的なモチベーションアップやそのためのコミュニケーションのテクニックの熟達を目指すことだけではない。相互作用的なコミュニケーションを刺激するために、時にリーダーが自分のオーラも弱める勇気を持って欲しいと思う。
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先にご紹介したのは、私が過去に実際にお世話になった2人の上司の発言である。Aさんと一緒に働いていた時の私は、一時期は水を得たように成果があがった。しかし後に、あれは形を変えたコマンド(命令)とコントロールで、自分は忠実な社員に育つよう方向付けられていることに気付き始めた。一方、Bさんは、上司として指示は出さないのだが、その分、部下である私が自分で考えなければならないという緊張感を持ち、主体的に周囲を巻き込みながら仕事をする環境を与えてくれたように思う。
その人がいなくても機能する組織を作るには、リーダーがメンバーとともに成長し合う風土が必要なのだ。では、「組織を『エナジャイズ』するリーダー」を育てるためには、コミュニケーションスキル以外に何が必要なのか?次回以降、引き続き考えてみたいと思う。