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組織の活力をいかに向上させるか

[2008.02.01] 小林 知巳  プロフィール

近年、日本企業はグローバル競争に生き残るため、成果主義を志向した人事制度、キャリアパスの複線化、組織のフラット化など、経営の効率を高めるためのさまざまな施策に取り組んでいる。
こうした経営効率を追及する取り組みが一定の成果を上げていることは間違いないが、従業員ひいては組織の疲弊を招く側面をもっと注視しなければならない。なぜなら、経営施策の効果は見えやすいが、組織の疲弊は深刻化するまで表面化しにくいからだ。従業員の流出や不祥事の発生といった問題が表面化した時には、既に解決が困難な状況に陥っている場合も多い。
特に経営改革を推し進める時にこそ、意識して組織の実態を把握し、その活力を高めるための対策を並行して講ずることが重要である。
実は、自社組織の実態は意外と分からないものである。断片的な情報から偏った認識をしてしまうこともある。組織の実態を客観的に把握するためには、バランスの取れたフレームワークに立脚した組織診断を実施することが有効だ。
エム・アイ・アソシエイツが提供するCIPS(Corporate and Individual Potential Survey)は、個人と組織の活力の状況、および活力を左右する要因を診断するツールである*。単に現状を知るだけでなく、診断結果をもとに組織活性化の施策や活動の具体的なアクションを起こすことを目的としている。
ここで言う活性化とは、個人についてはその強みやポテンシャルを最大限に発揮できるようにすることであり、組織については個人の多様な持ち味を共鳴させながら組織全体のパワーを高めていくことである。
*ウェブアンケート方式の125問の設問に約30分程度で回答する形式

アセスメントを行う上で留意すべきは、組織活力の現状だけを知っても、的確なアクションに結びつくとは限らない、という点だ。例えば、評価に納得が行かないという現状の要因が必ずしも評価制度であるわけではないのである。実際に分析をしてみると、意外な要因が複合して組織活力低下を引き起こしているケースが少なくない。
例えばある企業では、若手従業員の元気度が低下しており、当初は仕事の負荷が主な要因ではないかと推測していた。しかし実際に診断してみると、仕事の負荷は予想通り要因のひとつだったが、それだけはなく、上司・部下間のフィードバックの不足、教育機会の不足、あるいはビジョンや目標の浸透不足といった要因が浮かび上がってきた。複合的な要素が絡んで若手の活力を削いでいたのである。
こうした診断の結果をもとに、仕事の負荷を下げるのみならず、社内のコミュニケーションや教育機会の提供、また、若手の自立心を高めるためのトレーニングなどに併せて取り組むことの必要性が認識された。
これは決して特殊なケースではない。むしろ組織の問題の要因は単純ではないケースの方が多いといっても過言ではないだろう。ピンポイントの対策ではなく、複合した要素に同時並行的に働きかけることの必要性が認識される場合が多いのである。

このように、組織活力を低下させる複合的な要因に対処するためには、組織活力の実態を把握する因子とその要因となる因子とを、できるだけ具体的かつ緊密に結びつけることが重要である。
CIPSでは活力を左右する要因(メカニズム)を、図に示したように7つの切り口から把握する。7つの切り口はさらに20の要素に分解され、それぞれのレベルを評価すると共に、活力要素との相関の強さを識別する。
単に組織の実態を知るだけでなく、その原因に踏み込んで組織活性化に向けた本質的な打ち手につなげていくためには、個人の活力、組織の活力、およびそれらに影響を与えるメカニズムという、立体的な切り口から組織をアセスメントすることが有効だと考えている。
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