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ビジネススキルの本質

[2007.12.10] 中田 研一郎

 昨今は、知識情報産業の時代である。その時代にビジネスで成果を創出しようとする私たちは、何を身につけていればよいのか。
 まず必要となるのはKnow-howである。Know-howとは学習力であり、得た知識を体系化する力、かつ考える力である。論語の中に「学びて思はざれば則ちくらし、思ひて学ばざれば則ち危うし」という言葉がある。つまり、学び、かつ考える、これを両方行うことにより知識が身につき知恵を出せる。それがKnow-howである。
 ただ、Know-howをいくら持っていても、それはプロのビジネスマンとは言えない。弁護士も税理士もKnow-howを持っているが、ビジネスマンとは違う。それは必要条件であっても、十分条件ではない。
 次に必要なのは、問題解決力である。仕事は困難のかたまりであり、何か事を成そうとすれば、お金がない、人がいない、ブランドがない、時間もない、ないことばかりである。その「ない」ものを「ある」に変えていくのが、Problem solving 、問題解決力である。
 問題解決力を身につけるためには、まず自分の意見を持たなくてはいけない。コミュニケーション能力が大事だとよく言われるが、コミュニケーションの前提は自分の意見を持つことである。もちろん人の話を聞く力は重要だが、最終的に自分に意見がなければ、伝えるものがない。意見がなければコミュニケーションは成り立たないし、問題解決もできない。
 自分の意見を持った上でコンセプト、本質を見抜く力、が極めて重要である。問題というのは様々な現象の形があるが、その現象の裏に潜む本質がわからない限り解決できない。その本質をわかった上で、ロジックを組み立てないと普遍性のないものになってしまう。
 しかし、ビジネスはロジカルシンキングだけでは成り立たない。ビジネスマンには直観力が必要である。数字で司った左脳だけではマネジメントはできない。右脳の感性も必要である。右脳と左脳、分析力と直観力、この両方を駆使した全人格的なコミュニケーション能力が必要である。
 では、Know-howと問題解決力と直感があればそれでいいかというと、そうではない。最後に一番大事なのは、心の問題、つまり責任感である。頭ではわかっているけれど、躊躇する、足が前に出ない、これは心の問題である。でも、世の中で成功している人はすべて、最後は自分の責任として引き受ける覚悟ができている。清水の舞台から飛び降りる勇気なくしては、何事も成り立たない。それがなければプロとは言えない。評論家である。頭と心の両方、まさに「知」「情」「意」この3つが必要である。
 問題解決力と直感と責任感、これはKnow-howに対してのKnow-whatである。Know-howとKnow-whatの両方駆使しなければ、プロとは言えない。企業で求められている人材とは、まさにこういう人材である。
 例えば、人事異動で誰をどのポジションにするか、話し合う際、どうやって決めるのかと言うと、知識・実績に差がなければ、最後は責任感で決まる。少々の困難でも逃げ出さないでやり通すだろうという、信頼感の強い人に、重要なポジションが任せられる。これが企業の人事である。なぜならば、極めてリスクが高いからこそ、リスクを取らない人には任せられない。リスクをとらない人は逃げ出してしまう可能性がある。
 では、リスクを取れる人はどのような人かと言うと、自己のIdentityが確立している人である。自己のIdentityの確立は、自己同一性、自立性、セルフマネジメント、この三つの要素から考えることができる。
 第一に自己同一性。自分の意見を右顧左眄しないこと。 二番目は自立性。これは人のせいにしない、全てを自分の責任にする、ということ。三番目はセルフマネジメント。スピードの時代なので、いちいち指示を仰いでいたのでは間に合わない。従って、自分で自分を律して判断をしていく、そういう自律性が必要である。
 この三つが相まって、自己の確立、Identityの確立ができる。このような人だけがプロフェッショナルになれる。
 反対に、人のやったことしかやらない人は競争力を持たない。このような人ばかりが集まる企業は、利益は出ず衰退する。企業活動の根幹は、変化である。その変化を作る力、つまり、リスクを取る力、これが企業の活力であり、それをするのは人間である。そして、その人間は自分のIdentityを確立していなくてはいけない。
 心理学の交流分析理論では、「過去と他人は変わらない」と言われている。過去は事実なので、今さら変えられない。変えられるとしたら今しかない。過去と他人が変わらないならば、他人が自分を助けてくれることは期待しないで、自分が変われば人も変わるという考え方をするべきである。他人が自分を理解しないのは当たり前であり、適切に伝えれば人は動く。言わなければ誰もやらないが、適切な仕掛けがあれば人は動く。少しでもできる人材に感謝して、その人を活用していけば、できる人材が出てくる。全てうまくいかないと嘆いても始まらない。うまくいかなくても、スモールサクセス、スモールウィンを作っていく。これが今の自分、そしてワークスタイルを変える方法である。

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