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キャリア資産をどう活かすか?

[2007.11.19] 田島 俊之  プロフィール

 マネーの世界での資産活用が叫ばれて久しい。これからの社会では眠っている資産をもっと有効活用しなければ生きていけないのだという。不動産はもちろん、現預金もただ持っているだけではだめで積極的に資産活用の対象として考え、株や投資信託で投資すべきだとの話である。そして資産を活かしていくときの基本コンセプトは自己責任である。

 さて、キャリアも個人にとっての資産ではないかと思う。そのキャリア資産を活かすとはどういうことであろうか?蛇足ながらマネーの世界で使う「アセット(資産)」と言うことばには、人にとって有用なもの・貴重なもの、強み・利点・宝という意味もあるそうである。

 私は、その人が社会人として仕事をスタートして以来、仕事の価値を出すために身につけてきたスキルや知識やコンピテンシーの全てがその人のキャリア資産ではないかと思う。例えば、新人としての社会人スキルやビジネスの基本知識の習得から始まり、次のステップで営業スキルを磨き商品知識を深めながらお客様とのやり取りのなかで営業職としての有効なコンピテンシーを身に付け、さらにマネジメントスキルを修得するといった流れである。これは日々毎日の仕事を通じて身に付けていくものでありこれがキャリア資産の源である。(下図「キャリア資産と価値観の構造」参照)
 しかし、マネー資産の活用と同様に、キャリア資産も持っているだけではそれを活かすというレベルには至らないのだ。キャリア資産は個人の価値観に基づいた役割を全うできるからこそ、その資産価値が増幅するのではないだろうか。個人の価値観とはその人なりの生き方であり、考え方であり、思想であり、芯である。従って、家庭・仕事・社会との関わりの全てに影響する。この価値観を実現していける仕事に携われる状況であればあるほど、また、その役割を全うできる状況であればあるほど、必要なスキルや知識やコンピテンシーの習得スピードとその拡がりや深さなど色々な面でプラスへ作用するはずだ。だから、より良いキャリア資産の構築には個人の価値観を実現し得る環境が必要である。もちろん組織には組織の価値観があるのでその中で個人の価値観を全て実現できることは現実的には難しいかもしれない。しかし、全く同じでなくても共存できるものでなくてはならないし、少なくとも自分自身の心の中で折り合いのつけられるレベルでなければならない。

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 キャリア軸は時間の経過とともにキャリア資産を蓄積し、価値観をより強固なしっかりしたものへ進化させ、さらに大きな役割を担いながらキャリアを構築していくサイクルである。その時、シニアにとって課題となるのは、今までのキャリアを振り返り今後のキャリア(人生)へ想いを馳せる価値観の揺らぎである。 40代後半から50代あるいは定年前後のほとんどのビジネスパーソンが必ずぶつかる課題だろう。その年代では必ずと言っていいほど大きなトランジションに遭遇し過去を振り返り自己のアイデンティティを再確認する場面に直面する。その結果、自己成長を継続していける人と反対に自己成長が停滞してしまう人に大きく二分される。
 この課題に対しては二つの視点が必要である。まず一つ目は、長いキャリアの中で担ってきた組織内の役割と自己の価値観を同一視化していないかという価値観の再確認をすることである。その結果、自分本来の価値観を認識できていればそれで良いし、もしそうでなければこの機会に再認識してその価値観実現への道を歩み始めるべきではないだろうか。今後の10年・20年のキャリアをどう生きるかの土台になるのだ。二つ目は、今までのキャリアで培われたスキル・知識やコンピテンシーの奥行きをさらに深めるという点である。シニアには深い経験や厳しい体験の中から得られたその人特有の智恵やスキル・コンピテンシーがあるのではないか。それをはっきり認識しさらに深めることでこれらを活かす場面が拡がるのである。

 マネー資産活用とキャリア資産を活かす発想との違いは、マネー資産はまさに『活用』でありお金そのものや不動産そのものに『働かせる』ことであるのに対し、シニアのキャリア資産は『活かす』ことを模索し『自律的に活きる』ことであることとの違いであろう。人のキャリア資産を活かすということはその人の『アセット(強み・利点・宝)』をきちんと認識してそれを伸ばし深めていくことで実現するのだ。但し、投資の世界でもキャリアの世界でもこれからは持っている資産を『自己責任』で伸ばして行く時代であることも認識しなければならない。

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