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何か良いことのために ~キャリア形成と戦略 (9)~

[2007.10.29] 関島 康雄 (3Dラーニング・アソシエイツ 代表)

「何になるか」ではなく「何をするか」
 キャリアとは、どういう職業人生活を送りたいか、という問に対する自分なりの答えのことだと始めに書いた。しかし厳密にいえば少し違う。本当は、あなたはどういう人生を送りたいかという問が先に来る。仕事が無いと人生が成り立ちにくい。だから、人生を考えるとき、仕事について考えざるを得ないのだ。普通は、やりたいことを実現しようと思って仕事を選択するか、仕事をしているうちにやりたいことわかってくるので、仕事の軌跡がキャリアになる。仕事とやりたいことはまったく別で、仕事以外の時間にやることが本当にやりたいことという場合は、仕事以外でやったことの軌跡が、その人のキャリアということになる。要は、自分らしい人生を送るために何をするか、何をしたか、がキャリアの主題で、何になるか、何になったかではない。


「自分らしい」だけでは偉くない
 自分なりの答えを見つけようとすると、自分のことを良く知らなければならない。自分の特徴点が分かれば、特徴点に合った方法でキャリアを追求することができる。キャリアについて議論するとき、自分らしさが大切としばしば言われる理由は、その方が、結果が良いからだ。自分らしくやることができると成果の質や量が高まる。従って、効率の面から自分らしさが推奨されているだけで、自分らしいことそのものが望ましいとされている訳ではない。自分らしくやったため、周りにたくさん迷惑をかけたという場合もある。
何をするか、何をしたかがキャリアの主題だということは、キャリアの目的は何かが、問われるということだ。戦略とは、遠くの旗を目指してそこに到達する地図を描くことと定義したが、改めてキャリアを考える上での「遠くの旗」とは何かについて考えてみる必要がここにある。


遠くの旗再考
 遠くの旗とは、「何をするか」という問いの前のある、「何のために」に関係するものである。私の意見では、家族のためにでも日本のためにでもよいのだが、「何か良いことのため」であることが必要である。遠くの旗は、そこに到達したいというモチベーションを高めるものでなければならない。単に、建物の土台となる石を積んでいると考えるのと、村の皆が集まる教会の土台となる石を積んでいると考えるのでは、結果が大いに異なる。遠くの旗は、少し「大きな絵」であることが必要である。初めは漠然としていても、仕事の上での専門性が明らかになるにつれ、次第に具体的になってくる。始めは、収入を得て家族を養うでもよいが、それでは絵が小さすぎて、大きなエネルギーをかき立て難い。ささやかな目標をバカにするわけではない。それはそれで大切なのだが、大きなものの一部を担っていて、そこに自分の能力やエネルギーが必要とされていると感じられるとき、モチベーションは高まるという性質を持つ。従って、家族といった単位よりはもう少し広く、人々や社会のために、専門をどう活用するかに関するものが良い。「志」という表現が使われることも多いが、私には少し立派過ぎる感じがする。遠くの旗も自分の成長とともに進化すると考えれば、始めは「何か良いことのため」という程度でも良いと思う。


不確実性は敵ではなくて味方
 キャリア形成と戦略の関係を色々検討してきたが、最後にもう一度強調したいことは、自分らしいことは、たった一つの形でしか実現できない訳ではない、ということだ。仕事の上での自己表現の仕方はいろいろあるし、良いことも数限りなくある。だから遠くの旗も動いてかまわない。例えば、「個人の選択の自由度が高い、住みよい日本を創る」という遠くの旗の場合、企業内でがんばっても良いし、企業での経験を活かし、作家になっても大学教授になっても、自分で会社を起こしても良い。チャレンジ精神があって柔軟性の高い人や新しいことを学ぶ能力がある人には、変化が生み出す不確実性は、成功のチャンスを作り出してくれるという意味で好ましい現象である。キャリアにとって不確実性は敵ではなく味方なのである。

以上

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