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ゾーンAで選択できる戦略 キャリア形成と戦略 (6)

[2007.06.02] 関島 康雄 (3Dラーニング・アソシエイツ 代表)

面白い理由の探索
 時間を使っても平気なこと、すなわち好きなことが見つかったとしよう。次に必要な作業は、そのことが好きな理由を考えることである。私の場合、本を読むのに費やす時間が非常に多い。よって、どの分野の本を読んでいるかを分析すると好きなことが見えてくる。圧倒的に多いのは推理小説それも謎解きよりは冒険小説に近いもの、戦記や歴史に関するもの、経済学、経営学、戦略理論と株式投資。どうやら、リスクと勝ち負けが伴うもの好きそうである。普段の生活を振り返ると、計画をあまり緻密に作ることは避ける傾向があるが、いつかやりたいことはいつも考えているので、長期の計画性はあるらしい。概ね目標とする方向に進んでいればとりあえずよし、とする性格である。好きなことから考えると、私が大切としているのは、何かをやりとげることで、達成感や自律性や独創性、といった価値がそれにつながっていると思われる。

目標の範囲を狭める

 自分の大切だと思うことが、ぼんやりでも分かってくると、キャリア目標の範囲もある程度狭まってくる。自分はサラリーマンには向かないとか、人間関係の調整は得意でないので、研究一筋の方がよさそうだとかである。自分のことが十分に理解できないまま一時の感情のたかまりで決めてしまった目標、例えば小説家になる、が間違いだったとわかったのであれば目標の変更が必要になる。ゾーンCから引き返してゾーンBでもう一度やり直すのが良い。人生は長いので、ゾーンCでの経験もけして無駄にはならない。自分を知る事に関しては、ゾーンDからCに特段のトラブルなく移った人よりは、はるかに上になっているかもしれないのだ。目標の範囲が狭まれば、それに向けての準備に取り掛かることが出来る。専門分野の中でも得意な分野が少しずつ見えてくるので、範囲を広げたり、さらに深く追求したりといった作業が出来るようになる。そうなればゾーンBの卒業の時期が近づいたと言えよう。

ゾーンAでとるべき戦略
 自分のこともある程度わかり、目標の範囲も狭まれば、とるべき戦略も分かってくる。ただし、心に留めなければならないことは、全ての人に当てはまる戦略は、存在しないということだ。目標とするキャリアを取り巻く環境と本人の状況の組み合わせは多様であり、一つの戦略で全て対応することはとてもできない。そもそも戦略は、コンテキスト(位置関係)に依存した特殊解とみなすことが出来る性格を持っているが、その点に着目し過ぎると他の人が参考にしにくいものになってしまう。よってここでは、コンテキストにはあまりこだわらず、目標の決まり方に応じて選択できる戦略の典型例を挙げることにしたい。一つは先行優位性を活かす戦略,もう一つは競争優位の戦略、三つ目が、キャリア目標の成熟度に合わせ投資を行う戦略である。

先行優位の戦略
 自分のこととやりたいことが人より先にハッキリと分かった人は、先行性を活かす戦略をとるべきだ。目標達成に必要な条件の整備に人より早くとりかかり、競争相手より優位な位置を確保する戦略である。そのために、良い指導者に早く就くとか、目標に関係する知識やスキルを勉強する機会が多い学校や仕事を選択することを心がける。この戦略は、ラーニング・カーブ(学習曲線)がよく効く、すなわち、累積した経験の量が増えるにしたがって効率が向上するようなキャリアの場合、特に有効である。
この戦略が適用可能なもう一つのケースは、選んだキャリアを取り巻く環境に、将来起こりそうな変化の重要度を、人より先に理解できた場合である。グローバリゼーション3.0という時代になって人々が働く場所を世界中から選択するという傾向が強まると考えた場合、人材マネジメントに携わる人にはどういう知識や、スキルが必要かを考え、その獲得に学習目標を絞っていく。ただし、先行して高めた知識や能力が、後から追いかけた人が簡単に追いつけるようなレベルでは先行優位性は保てないことに留意すべきである。英語が出来る、海外経験があるといった程度ではすぐに追いつかれてしまう。MBAの資格を持っていれば、少しは追いつかれにくい。しかし、これとても日本国内の話で、グローバルに考えれば大勢の人が持つ普通の能力である。やはり、世界の専門家から一目置かれる専門性が目標でなければ、先行優位の戦略を採用する意味がない。

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