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ドラフト面接 ~開発・技術系人材における新卒採用と評価 (4)~

[2007.04.12] 中田 研一郎

3 ドラフト面接

就社ではなく就職だということを言います。しかし、日本では残念ながら就職ではなく、就社なのです。自分が何をしたいかということを明確にし、かつ会社がそれに応じて採用するというマッチングが面接の場で極めて希薄にしか行なわれていない、ここに問題があるのではないかということで、この制度を導入しました。

 仮に4月、5月に内定すると、翌年の3月までたくさん勉強できます。もし内定時点で具体的な「職」が決まっているのなら、夢を持って例えば「よし、自分は半導体事業本部に行って、通信関係の商品の開発にただちに従事できる」と8~9カ月間、大きな夢を抱いて一生懸命勉強します。

 就社ではなく、就職と口では言うけれど、現実には就社しかないような仕組みになっていると思いましたので、「職を明らかにした配属先」を採用予定通知と同時に伝えるようにしたのです。

 しかしこの方式は簡単に実施できたわけではありません。採用試験で数百人についてこれを実施しようとすると緻密な計画が必要です。JRの時刻表のようなチャートを作らないとできないのです。現場の満足度は高かったのですが、人事の担当者にとっては大変なので、大規模採用においてはかなり困難なオペレーションになります。

 この方式の基本的な考え方の出発点は、採用とは、応募側と募集側で労働契約を締結するということです。
offer(オファー)に対して、acceptance(アクセプタンス)があって、労働契約は成立します。本来これが双方の意思の合致ということなのです。

 ところが日本は終身雇用形態をとっているが故に、入社時に契約書にサインされた覚えはないと思うのです。秘密保持契約だけサインして入社しているのです。雇用条件についても何も知らないまま入っています。つまり、offerとcceptanceというプロセスがいっさい踏まれていなくて,この会社に入れば一生安泰だろうと思って入っている人が大半なわけです。

 ところが、日本の人事制度は90年代に終身雇用体系が大きく変化して、Aという会社に入っても、一生そこに勤める保障はありません。A社がB社と合併してC社になる。大企業でも今や珍しいことではありません。

 つまり雇用形態は終身雇用を保障しないこととなった。その変化に対応して、個人と会社は対等の労働契約を締結するという基本的な考え方をやはり持つべきではないでしょうか。一生の仕事を僅か30分、40分の面接で決めて、そこに入ったら「石の上にも3年だからかじりついてでもやれ」と言われると「それは違うでしょう」と言って転職を繰り返す人が増えているわけです。

 したがって,個人と仕事とのマッチングを取るためには、そのプロセスを制度の中に取り込まなければいけない。二次試験が終わった段階で「この方と面接をしたい人は手を上げてください」と採用を依頼してきている部の責任者に必ず出席をしてもらって、手を挙げてもらいます。

 これはプロ野球のドラフトのときの各球団のエントリーと似ているので「ドラフト採用制度」と名付けました。野球はクジで決めていますが、我々はお互いに自分の手持ちを全部出そうではないかということで「うちに来てくれればこんな仕事をやってもらいますよ」ということを一生懸命説明します。逆に学生のほうも「自分はこんなことができます。こんなことをやりたい」と言います。それを双方が、得意なもの、能力を説明し、会社側も必要な業務、ビジネス戦略、人材戦略を話して「うちで働きませんか」ということをやって、お互いに合致したときに内定を出す。内定を出した時点では具体的に何をやってもらうかという「職」が確定し、「就社」ではなく、「就職」ができるのです。

(続く)

出典元:「研究開発リーダー」Vol.4, No.2 2007

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