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「ポジティブ心理学の第一人者が教える楽観主義の勧め」 その2

[2007.03.12] 佐々木 郷美

 前回に引き続き米国ペンシルバニア大学教授でポジティブ心理学の第一人者と言われているマーティン・セリグマン氏の著書"Learned Optimism"からそのエッセンスを紹介したいと思う。

 従来の心理学は、心の病の研究、つまり症状や発病原因の特定、病気の進行や治療法についての研究が中心だった。それに対して「ポジティブ心理学」は病気や悩みを引き起こすネガティブな感情に焦点を当てるのではなく、人間の本来のポジティブな感情、喜びや達成感や自信、楽観思考などに焦点を当て、それらを伸ばし開発する方法を研究したものである。本書はその中でオプティミズム(楽観主義)の習得を説いている。

 前回は「楽観的な見方がなぜ今大切なのか?具体的にどのように物の見方を悲観的な視点から楽観的視点にシフトできるのか」を見てきた。楽観的が特に必要なのはどんな場面なのか、具体的な仕事などと結びつけて考えてみたい。

 どんな人がこの楽観主義的な見方を活用できるか?

(1)楽観主義が強みとなる職業の方に。
 楽観主義より悲観主義の方が強みになり必要とされる職業がある。それは安全や品質管理に関わる仕事である。
例えば:
   ・設計士、建築家
   ・弁護士
   ・技術職
   ・保守管理業務
   ・コスト見積
   ・契約交渉をする人
   ・会計・監査の仕事
   ・統計処理

 確かに楽観的なパイロットの操縦する飛行機には乗りたくないし、楽観的な外科医に自分の手術を頼みたいとは思わないだろう(笑)。
 近年話題になっている耐震強度の偽装事件。人の命や安全に関わる職業に携わる場合には悲観的なくらいの入念さと慎重さが求められるのは言うまでもない。
 一方で楽観主義が強みになり仕事上必要とされる職業もある。競争が激しかったりプレッシャーが大きかったり、結果が相手に左右され自分の力だけではコントロールできない仕事である。
例えば:
   ・営業
   ・広報
   ・教育、指導の仕事
   ・スポーツ選手
   ・商品開発などクリエイティブな仕事
   ・俳優や政治家など人前に出る仕事
   ・寄付を募る仕事

 マーティン・セリグマンによると保険の外交員や看護婦、学校の先生などにこの手の楽観的な見方を身につけるトレーニングを行うとめざましく仕事の成果が向上するそうである。つまりセールストークや教え方の訓練をするのと同じくらい、あるいはそれ以上の仕事の成果へのインパクトがあることもあるそうだ。職業によってはこのような資質が強みになりそうだと思われる場合には意識的に訓練し習得することをお勧めする。

(2)女性の皆さんに
 マーティン・セリグマンは悲観的ものの見方と楽観的ものの見方の年齢による傾向の変化や、男女差などの調査もしている。興味深いことに子供の頃は全般的に男子より女子の方が楽観的だそうである。しかしその傾向は不思議なことに成人すると逆転する。

 大人のケースを見ると一般的に女性の方が男性より悲観的だそうである。(日本での調査は見ていないので分からないが、アメリカの調査においては)成人女性のうつ病にかかる確率は成人男性のそれの2倍だそうである。

 「男性はストレスを行動で出す(暴飲暴食など)傾向があるが、女性は否定的な考えを自分の内面で反復し、繰り返すことで強化する傾向があるからだ」とされているが、これは女性に対して期待される社会的役割も多分に影響しているのではないか、と思う。

 出産や育児から来るストレスを独りで抱え込み自分を責めて育児ノイローゼになってしまう女性がいかに多いことか。また、一定年齢を超えて独身であることから来るプレッシャーが大きいのもどちらかと言うと女性であるように思う。

 同じ状況、立場にあっても女性の方が社会的にプレッシャーを感じやすい側面があるのではないだろうか。女性の社会進出が進むと複数の役割をこなさねばならない女性が増えていく。なおさらこの傾向は強まるのではないかと思う。

 入社当時は全般的に女性の方が優秀なのに入社後数年発つと逆転して企業内で生き残れる女性が急に少なくなってしまう、と嘆かれる企業人事の方の声を時々耳にするが、実は能力の差ではなく年齢的に社会の目が厳しくなってくると同時に次第に自分に限界を作り始め自らの成長を抑制し、本来の力を発揮しきれなくなってしまう女性が多いのではないかと思う。

 女性である私達はこのようについ自分に完璧を求めてしまい、何かと自分に基準を作り自分を責めてしまって、悲観的になる傾向が自分にあることを知っておいた方が良いように思う。バランスを保つために少しだけ自分に優しくなる、そして楽観的にものの見方を調整する術を身に付けておくことを是非ともお勧めしたいと思う。

参考;『オプティミストはなぜ成功するか』(講談社文庫)

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