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開発・技術系人材における新卒採用と評価 (1)

[2007.03.12] 中田 研一郎

 2001年に人事部長になったときに、採用から退職まですべての人事に関して構造改革をすることが私のミッションでした。
 最初に「ソニーの人事というのはどういう構造になっているのだろう」ということを、半年ぐらいをかけてまとめたのが図1のキーチャートです。
 チャートの一番上は、人事のマネジメント理念。これはいわばコーポレートカルチャーというようなもので、人に人格があるように会社にも社格というべきものがあります。1つずつ会社は異なります。

図1
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 「設立の理念」は会社により、すべて異なっています。その理念から出発して、日本の会社ではあまり明確に打ち出されていないのですが、実は制度以前の問題としてポリシー、すなわち「何をどうする」という方針を言葉にしたものです。今日のテーマの「採用」にしろ「人材育成」にしろ、「何をどうしたい」ということを明確に持たないまま、「皆やっているから、そろそろ当社もやっていないと格好がつかない」というのでは、この理念が何なのか、何をどうするというポリシーが極めて不明確なために社員は戸惑ってしまいます。あるいは猫の目のようにコロコロ変えて、あるときは右の方向、あるときは左の方向、非常に社員にとって納得性がない、腑に落ちないということが起こるわけです。
 したがって、理念の議論を徹底的に行い、そのうえでその会社はいったいなんのために、どこへ行こうとしているのか、その意味はなんなのか、それが採用、配置、報酬、評価、経営者育成、教育、代謝という制度の柱においてポリシーがすべて明確でなければなりません。
 人事業務のだいたい75%は定型業務で、残りの25%ぐらいが戦略企画業務です。したがって、いかに立派な制度を作っても、この人事業務プロセスを印鑑と紙で延々やっていてはスピードが出ませんし、大きな組織では機動力が出ません。そのため、チャートの一番下に「人事統合情報システム」を入れ、システムも従来のセントラルサーバー方式から分散型のERPに切り替えて、ウェブで処理して、現場処理型の情報システムを構築して、1枚の紙に沢山の印鑑を押すような前近代的な業務フローをやめることにしたのです。
 以上の4つのレイヤーすべてについて、約4年かけて全面的見直しをしました。ただし変えるべきものと、変えてはいけないものを明確に区別する必要があります。改革といっても根の部分を枯らせてしまうとおかしくなります。したがって、人事理念、マネジメント理念で変わらざるものは一体なんなのか。ここを非常に大事にする必要がありました。
 このような仕事を私は約4年間やりまして、その内容を2005年11月に、『ソニー会社を変える採用と人事』(角川書店)という本の形でまとめました。その中に「採用の改革」も含まれています。
 採用の改革をしようということで打ち出したのが,フレックスエントリー採用制度です。私はこの採用の改革をしようと思った一番の基本的な発想は何かというと、日本の新卒採用はある意味でマーケット原理に基づいていないということでした。非常に強い企業と弱い学生、その関係で大企業が旧態依然たる採用のやり方をしているだけで、本当の意味で若い人の心を捉えていないのではないかという問題意識がありました。
  ソニーは91年に学校名不問採用をスタートしました。その当時日本の会社は学歴主義で一定の指定校でない限り受付すらしてもらえない。「そんなことがあっていいのか」ということで、ソニーは「どこの学校を出たかは問題ではありません」として履歴書に学校名の記載欄をなくしたのです。面接のときに今日に至るまで学校名は一切わかりません。それほど学校名を一度忘れてやろうじゃないかと、ある意味で日本の学歴主義を打破する動きを作りました。
(続く)

出典元:「研究開発リーダー」Vol.4, No.2 2007

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