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学生に選択肢を提供 ~開発・技術系人材における新卒採用と評価 (2)~ 

[2007.03.25] 中田 研一郎

1 学生に選択肢を提供

 フレックスエントリー採用制度というのは、「採用シーズンのフレックス化」です。
採用活動は経団連の倫理規定に基づいて、原則として4月1日の解禁と同時に一斉に採用活動が始まりますから、4月の4回の週末は、学生は非常に苦しみます。「もう、ここしかない」と決めても受かる保証はないわけですから、たくさんの面接試験をアレンジしようとすると、エントリー自体がとても大変になる。ましてや一次試験に受かって、二次試験の面接に進もうというときに、2つ3つの会社がバッティングするということになります。したがって選択肢は非常に狭いのです。

 5月中旬~下旬になるとそろそろ内定を取る人が沢山出始めます。そうすると、非常にあせりはじめて、職の中身を考える余裕はなく「とにかく受かればなんでもいい」という気持ちに追い込まれます。

 本来「職を選ぶ」というのは、自分が何をしたい、この会社がどんなことをして、どんなオポチュニティーがあってと、さまざまな観点から選ぶわけですが、今の就職戦線というのはいわば集団主義のような形になってしまって、選ぶ・選ばれるという個別の関係が正常に機能していない。したがって、4月に1度だけエントリーを受け付けるという慣習は、大企業の立場からすれば楽でいいが、学生の立場からするととてもつらい。全部が企業の論理でしか動いていない。応募する側の論理というものを企業は十分に見ていない。
つまり強い企業と弱い一個人の関係になっている。そこに選ぶ・選ばれる、50-50の労働契約を締結するというようなコンセプトは存在し得ない。したがってそれを対等にするためにはもっと機会を与えようということで、4月、5月、6月、8月の4回エントリーを受け付けるということにしたわけです。しかし、担当者は4年分の仕事をするようなものですから大変です。当然に4月に一番大勢受けに来ますが、留学から帰ってきたような方は6月卒業ですから、普通は1 年浪人しないと、大手の会社は就職が終わっています。
そのような事情から、8月であっても、例えばアメリカやヨーロッパの大学に学んで帰ってきた素晴らしい人材も採用できました。それからもう1つが、「入社する時期のフレックス化」ということです。入社時期というのは4月1日と、天の摂理のように決まっていますが何故でしょうか。

 私は入社してくる若者を見ていまして、なぜその会社に入るのかよくわからないまま入っている人が大勢いるということを、いろんなコミュニケーションの中で気が付きました。
やり残していること、まだ不完全燃焼のまま4月1日に入ってきて、3年以内に辞めてしまうのは、お互い不幸ではないかと。転職は必ずしも悪いことではありませんが、本人が人生で何をしようとするか、ほとんどきちんと考えないまま社会に出てしまう。それであれば半年、1年遅れてもいいから、「自分はこれをやり終えてから入ります」というぐらい、自分で入社時期を選んでいいですという制度を導入しました。例えばエントリーする時に「4月卒業するけれども、語学学校に半年勉強に行って、英語をマスターしてから入ります」と申告してくださいという制度です。

 50-50の関係で選び選ばれるという形にするのなら、企業が一方的に論理を押しつけるのではなくて、学生に選択肢を与えようという考えです。

 それから企業情報、採用情報の公開レベルを高めるということもしました。学生は面接の時にほとんど頭が真っ白になって、極度の緊張で何を話しているかもわからない状況です。
それは不安だからです。これに対し、「聞くことはたった1つです」とネットで質問を公開しました。それは「『あなたは学生時代に何をやってきましたか』。そのテーマに関し、30分~40分間、行動事実を中心に質問をします。「フィクションではなくノンフィクションでやってください」ということを明示して準備をしてもらうことにしました。

 日本の学生の面接で、「あなたは何をやりましたか」と聞くとアルバイトとサークル活動が大半で、自分がやってきた勉強や研究の内容を話す人は非常に少ないです。

 私は中国で理系のエンジニアの学生を4年間で延150名採用しましたが、全員自分がしてきた研究、プロジェクトの内容の説明をします。中国のトップクラスの学生は1日10時間、修士なら6年間勉強しています。
それしか話すことはありません。日本の学生は、勉強ももちろんやっている方もたくさんいますが、それぐらいの差があります。
(続く)

出典元:「研究開発リーダー」Vol.4, No.2 2007

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