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撃て、狙え ~キャリア形成と戦略 (3)~

[2007.01.12] 関島 康雄 (3Dラーニング・アソシエイツ 代表)

ゾーンDの人のとるべき戦略
 自分に対する理解度が十分でなく、目標も明確でない人が位置するのが、ゾーンDである。キャリア形成の初期の段階にある人がここに属する。ボンヤリしている目標をハッキリさせることと、自分らしいさとは何かを理解するという二つの課題を抱えているが、どちらの課題も直ぐには解決できない。自分らしさとは何かが分からないと、選んだ目標が自分に適したものであるかどうか判断できないので、自分を知ることから始めるのがよいのだが、その為には、自分自身を観察する機会を作り出さなければならない。大切なのは、自分探しに時間をついやすのではなく、自分らしいということは直ぐには分からないとあきらめて、ボンヤリした目標に向かって、まず歩き出すことである。キャリア開発の初期段階にある人には探索型の戦略が適している。

「撃て、狙え」
経験から学ぶ手法は、「撃て、狙え」である。「撃て、狙え」とは目標がハッキリしない場合の対処の仕方である。戦略論は戦争に関する研究から生まれたので、軍事に関する言葉がたくさん術語テクニカル・タームとして登場するが、この場合もそうである。敵を攻撃する場合、敵がどこにいるか分かっている場合は、銃で狙って、撃つことができる。しかし敵がどこにいるか良く分からない場合は、狙って撃つことはできない。この場合は、敵が潜んでいそうだと思われる場所に向かって、まず撃ってみる。撃ち返してくればそこに敵がいることが分かったので、撃ち返してきた場所を狙って、撃てばよい。撃ち返してこない場合は、敵がいるかいないか分からない、ということが分かる。これまでの戦闘をとおして、敵の状況は、ある程度明らかになっているので、敵のいる場所、いない場所、不明な場所の三つをつき合わせると、敵のいる場所を推定することができる。

目標が動いている場合
軍艦同士の遠距離での砲撃戦を考えてみよう。レーダーで敵との距離が正確に把握できるようになる以前は、敵艦との距離は推定である。敵艦の動きや風の影響などを勘案の上、撃った砲弾が落下するときにいるであろう敵艦の位置に向かって砲弾を発射する。従っていきなり命中することは少ない。最初に撃った砲弾が落ちてあげた水柱の位置によって、次の狙いを修正する。目標より少し遠めを狙って撃った弾と、少し近めを狙って撃った弾があげた水柱の間に敵艦があれば、推定はかなり正確ということができる。目標が動く場合も撃つが先で、次ぎに、狙えなのである。キャリア形成の場合、自分に対する理解度が高まるにつれてキャリア目標も変化するので、ある意味で動く目標ということができる。撃て狙えという戦略が適用できる。

自分の観察
キャリア形成でいえば、歩き出すとは、なんとなく自分に合いそうだと思う仕事に就いてみることを意味する。自分のことを良く分かってはいないから、合う、合わないの判断も不正確であるので、仕事を選り好みしてもあまり意味がない。適職は何かなどと悩まずに、仕事に就く機会があれば、その機会を掴むことをお薦めする。経験しなければ、学べないのだから、経験することがなによりも重要と考えるべきだ。まず、撃ってみるのである。その後、自分を良く観察する。一口に仕事といってもいろいろな場面がある。資料を集めるとか、人と相談するとか、日程を決めるとか。仕事を習い始めたばかりであれば、何が楽しいかは分かりにくい。スポーツでもそうだが、一定のレベルに達するまでは、苦しいばかりで楽しいことはあまり多くない。従って、何が楽しいかではなく、どのタイプの仕事をしているとき、体がすんなり反応するかを観察するのが良い。慣れれば大概のことはすんなり出来るのだが、やはり慣れやすかったこととそうでないことがあるはずだ。慣れやすかったとして、それが経験のありなしのせいなのか、それとも自分の性質のためなのかは、良く考えなければならない。

水柱はどこに上がったか
自分を観察すべきだというと、眼が自分の方にだけ向きがちだが、周りの反応も良く見る必要がある。軍艦どうしの砲撃戦の例にあてはめれば、どこに水柱があがったかを良く見なければ、次に命中させることはできない。自分では良く出来たと思っても、そうでない場合もある。時間がかかって上手くいかなかったと感じても、周りから見れば善戦健闘というときもある。周りの反応にも目を配らないと自分のことは分からない。狙うのはやはり簡単なことではないのである。

<続く>

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