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ゾーンDを卒業するには ~キャリア形成と戦略 (4)~

[2007.01.20] 関島 康雄 (3Dラーニング・アソシエイツ 代表)

遠くが見える高台の選択
撃て、狙えという方法によって、敵がいるかいないか不明な部分と、そうでない部分の境目が明らかになったとしても、不明な部分が広大であれば、次の作戦は立てずらい。不明な部分を狭めていく必要がある。その場合はどうしたらよいか。撃て狙えを繰り返していくという方法もあるが、もっと良い方法は、遠くの見える高台を見つけてそこに登ってみることである。高いところから見れば、敵情もハッキリするので、次にとるべき行動も分かってくる。戦いに勝つためには、遠くの見える高台を早く見つけて、敵より先に登らなければいけないのだが、問題は高台の選択である。遠くが見えると思って登ったが見晴らしがよくなかったとか、短時間で登れると思ったのに予想外に時間がかかり、その間に戦況が大きく変化してしまったということが起きるからだ。キャリア形成でいえば、上手な中間目標の設定が課題、ということになる。

中間目標の選び方
ビジネスでは、遠くの見える高台の選択の仕方はどのような感じか、少し考えてみよう。ビジネスで新しいことに取り組む場合、良く知った市場に新しい技術の適用を試みるか、良く知った技術を新しい市場に用いてみるかのいずれかであるケースが多い。技術とは広い意味で、知識やノウハウといったものも含まれる。未知の市場に未知の技術でチャレンジするといった大胆な方法もなくはないが、リスクが大きい。既に分かっていることをベースに新しいことに挑戦する方が、リスクは小さいし発見も整理しやすい。日立の経営研修所時代の経験で言えば、ペンシルバニア大学のウォートン・スクールと合同で行ったエクゼクティブ・プログラムがこれに相当する。我々は経営幹部に何を教えたら良いかは分かっていて、知識も経験もあったが、日本人でない受講生という市場はこれまで未知のマーケットであった。世界クラスのコーポレート・ユニバーシティを目指す以上、この市場に挑戦せずに目標に近づくことはできないと考えた。今年でこのプログラムは3回目となるが、これまで2回やってみて分かったことは、市場のみならず技術の面でもたくさんある。遠くの見える良い高台であった。

専門性と仕事の領域
上記の中間目標の選び方をキャリア形成の場合にあてはめると、技術は専門性、市場は仕事の領域と考えればよい。新しく獲得した専門的な知識をこれまでの仕事に使ってみる、これまでに獲得した専門的な知識を新しい仕事の領域に適用してみる、のいずれかから目標を選べばよいということになる。新入社員であれば、専門知識も仕事に対する理解も十分でないから、最初の中間目標は、チームのメンバーとして一塊の仕事をまかせてもらえるようになることであろう。チームとは係やグループといった言葉で示される比較的小さい単位の組織である。この場合、高台に登って敵情を把握するのに相当することは、自分を取り巻く仕事の環境の理解、すなわち組織のルールや慣行、組織が大切と考えている価値などについての理解を深めることである。自分らしさの発揮には、自分の置かれた環境についての理解が不可欠なのである。

チームへの貢献を考えると自分も見え始める
チームのメンバーの一人として一塊の仕事をまかされるようになれば、次の目標は、チーム全体の仕事にどう貢献するかに移ってくる。チーム全体に貢献しようとすると、チームに与えられた基本的役割、チーム内の業務分担、特に自分の前工程と後工程の仕事の内容、誰が忙しくて誰は余裕があるか等を知る必要があることに気がつく。自分自身のことを離れて、チーム全体の状況を客観的に眺め、何をするか考えなければならない。実はチームへの貢献といったようなことに眼が向き始めると、自分のことも少しずつ見えるようになってくる。対象を少し離れたところから観察し始めるからだ。自分のことにばかりに目が向いているうちは、自分のことは良くみえないのである。この段階を過ぎれば次なる高台は、新しい専門知識の獲得か、あるいは新しい仕事の機会へのチャレンジかのいずれかになってくる。

<続く>

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