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キャリア形成の4つの領域 ~キャリア形成と戦略 (1)~

[2006.12.30] 関島 康雄 (3Dラーニング・アソシエイツ 代表)

自分なりの答え
キャリアとは、どういう職業人生活を送りたいか,という問いに対する自分なりの答えのことである。
その意味では中長期の目標であり、これまでの軌跡でもある。自分なりの答えを出すためには、自分のことをよく知らなければならないが、簡単にはできないことなので、キャリア目標を定めることも簡単ではない。さらには、環境条件やこれまで累積された結果に影響され、長い間には、目標自身が動いてしまうこともある。

そこで、こういう課題、あまりハッキリせず、かつ変化する可能性のある中長期的目標、を達成するための道具が必要になる。それが戦略理論である。戦略とは、遠くの旗を目指し、そこに到達するための地図を描くことである。途中に障害物があれば方向を変えながら進む。遠くの旗が移動すれば、それにあわせ進む方向を修正する。戦略論は、まことにキャリア形成というテーマにぴったりの学問なのだが、キャリアを論じる人と経営を論じる人は別なので、キャリアを論じる場合、戦略論が取り上げられることは少ない。

当然のことだが、企業の業界におけるポジションや産業の発展段階により、採用すべき戦略は異なる。業界NO1企業とNO2企業ではとるべき戦略は異なるし、出現しつつある産業と成熟産業では、選択される戦略は異なってくる。同様に、キャリアという長期の目標を追求する場合、キャリアを追求するための準備がどの程度出来ているか、各人のキャリア形成がどの程度進んでいるか、により採用すべき戦略は異なってくる。そこで、この小論では、キャリア形成の準備が出来ている度合い別に、採用するべき戦略について検討してみよう。

キャリア目標の明確度と自分自身に対する理解度
キャリア形成のための準備がどの程度できているかを判定するためには、物差しが二つ必要と考える。
一つは、キャリア目標がどの程度明確になっているかと言う物差しで、もう一つが、自分のことがどの程度分かっているかという物差しである。

子供の時から、野球の選手になりたいとかピアノの演奏家になりたいとか自分の夢がはっきりしていて、現にその方向で努力できている人は、キャリア目標の明確度が高い人で、こういう人は数が少ない。通常の場合、子供のころに電車の運転手になりたいとか看護婦さんになりたいとか、思ったとしても、年齢とともになりたいものは変わってきてしまう。自分らしいということは、本当の意味では、「何に成りたいか」ではなく「何をしたいか」なのだが、学校を出るころになっても自分は何をしたいかわからないので、何に成ったらよいか分からないケースが多い。こちらの方が普通で、したいことは徐々に分かるものである。従って、この物差しの目盛りがゼロに近いところにある人も、年齢が若いうちは、あまり心配する必要はない。

キャリア目標の明確度は、自分自身の理解度と関係する。自分の得意なこと、好きなこと、弱み強みが良く分かっていれば、何をしたいかも決めやすい。自分に対する理解度が高まれば、成れないものも分かってくる。運動神経がそれほどでもないと分かればプロのスポーツ選手を目指すという目標はあきらめられる。しかし、自分自身を理解するには時間がかかる。時間とともに少しずつ分かってくるのが普通である。

四ヶ所の出発点、又は転換点
この二つの物差しで測ることにより、各人のキャリアについての準備状況はどのあたりにあるかは判定できる。縦軸が目標の明確度、横軸が自分自身に対する理解度とし、目盛りは0から1,2,3と増加すると仮定すると、大雑把に4つのゾーンに分けることが出来る。

ゾーンA:自分理解度、キャリア目標明確度、ともに高い(右上)
ゾーンB:自分理解度は高いが、キャリア目標はまだぼんやりしている。(右下)
ゾーンC:自分理解度は低いが、キャリア目標の明確度は高い(左上)
ゾーンD:自分理解度も低く、キャリア目標も明確でない。(左下)

通常、多くの人はDからスタートし時間とともにAの方向に進む。早熟なアスリートや芸術家はAのゾーンからキャリア形成を進めた人と考えられる。どのゾーンに位置するかにより、採るべき戦略は異なってくるので、キャリア形成上の転換点は四つあると考えることも出来る。 

(続く)

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