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Professional Personの構図 (その2)

[2006.09.11] 中田 研一郎

2.問題解決力について

会社で日々起こる様々な問題や仕事上の課題を解決するうえで、professional personとして「問題解決力」をもつことは極めて重要であることは改めて言うまでもない。しかし、現実にはこの問題解決力を十二分に発揮して、様々な難題を快刀乱麻のごとく解決できる人はそう多くはいない。それが出来る人はその企業にとって欠くべからざる人材で、トップマネジメントも人事部もそういう人を重用することは間違いない。

ではどうすればそのような人材になれるのであろうか。いくつかの要件があるが、まず一番に求められるのは「物事の本質をつかむ能力」である。難題が起こった時、多くの人は右往左往して何とかその場を凌ぐことに躍起となってしまう。いわゆる現象対応のパッチワークである。しかし問題の本質を理解しないまま、矢継ぎ早にその場凌ぎの対応策をとると却って問題を悪化させることが多い。 企業のコンプライアンス違反が明らかになった時などは、そのようなケースが典型的に起こる。事実関係を十分に調査しないまま責任を転嫁し、あるいは、結論に飛びついて自己保身を図った結果、数日後に再度記者会見をするようなケースを良く見かけるが、そのような事態を招来したのは、担当者が物事の本質を見る目を持たないでその場凌ぎをした結果であるといえる。

本質をつかむには物事の現象だけに目を奪われるのではなく、その現象を抽象化して考えることが必要である。抽象化とは何か。仏は宇宙の真理を抽象化して「曼荼羅図」を顕した。それは抽象化の最たるものであろう。アインシュタインが宇宙を相対性理論で説明したのも天才の抽象化能力の結果であろう。われわれ凡人は仏でもアインシュタインでもないので宇宙や心の設計図を書くことは出来ないが、抽象化とは目にみえないが存在するものを概念あるいは形として認識し、表現することである。ビジネスの世界でも数多くのそのような抽象化能力が求められる。簡単に言えば、そもそも学問は、色んな専門分野について各々の世界を学説や理論に基づいて抽象化するプロセスを教えているといっても過言ではない。したがって、抽象化の能力は、やはり学問の知識をベースとしてその上に様々な知識と経験と思考能力の組み合わせによって形成されているということができる。

そのようにして形成された抽象化概念に基づき、解決すべき課題設定を明確にすることで問題解決のお膳立てが出来たといえる。その上で、問題が自分ひとりで解決できる性質のものであれば解決策を一人で考えて実行すればよい。 しかし、多くの場合他人の助けや協力がなければ問題は解決できない。したがって、設定された課題と解決策を一定のlogicに基づいて整理をして、他人が共感あるいは理解できるようにする必要がある。特に問題が国際的である場合、日本人にだけ分かる「阿吽の呼吸」や「気配り」に依存したのでは、たちまち発想や文化の違いの壁に打ち当たって、外国人の理解を得ることは困難である。 Logicは物事を理屈っぽくいうことではない。国籍、年齢、性別を超えてお互いに言っていることを理解しなければビジネスは成り立たないのだから唯一の普遍性のある共通基盤はlogicなのである。logicを明確にすることにより相手の感情に対する諸々の配慮も生きてくるのであって、logicを抜きに徒に相手のsympathyを得ようとしても事は成り立たない。

物事の本質を見極め、その本質を万国共通のlogicにまとめて、自分の意見として相手方に伝えることがopinion形成力である。会社の採用面接で一番大事な能力は何ですかという質問を人事担当者にすると、まず一番に指摘されるのが、communication能力である。
communication能力とは、アナウンサーのように流暢に話す能力ではない。まず自分がある問題に関して自分の意見を持っていなければ、そもそも相手に伝えるべき内容が何もないわけだからcommunicationは始まらない。

したがって、communication能力とは、自分の意見を形成する力を前提としている。その意見形成力は、実は上に述べたように「本質を把握する抽象化能力」と「普遍性を持たせるためのlogic」によって組み立てられるものであるから、問題解決力とは、意見形成力と抽象化能力とlogicが三位一体となって形成されているということになる。その三位一体となって表現されるもの全体がその人の仕事をする上での「情」を形作っているのである。夏目漱石は「情に棹差せば流される」といったが、私がここで言う「情」はconceptとlogicに裏打ちされた意見という意味なので、少し意味を違えて使っていることに注意していただきたい。


―続く―

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