経営・人事コラム

人事コラム バックナンバー

【第7回】自立=独立 ではない

[2006.09.25] 植田 寿乃

企業研修で社員の自立化を促すようなセミナーを依頼されることが多くなっています。しかし、その場でこのようなことを言われることがあります。以下は某企業の人材開発担当部長A氏との会話です。

A氏「先生、ほどほどに自立させてください」
私「それはどういう意味ですか?」
A氏「会社にぶら下がられるのは困るのですが、自立しすぎると会社を辞めてしまう可能性があるでしょう」
私「社員が自立すると会社を辞めるとお思いですか?」
A氏「ええ、そうですよ。自立し過ぎたら、この会社でなくても自分は大丈夫だと思って、独立したり、転職したりするでしょう。」
私「ご自分も自立したらそうなるとお考えですか?」
A氏「いや私はもうすぐ50歳も近いですから、今さらそんな勇気ありませんよ。でも30代で自立していたら、この会社辞めていたでしょうね」

笑い話ではなく、このような話をする人事・人材開発担当者、経営幹部などは意外にたくさんいらっしゃいます。自立すると会社を辞める、自立すると独立する。これは、「自立心」が芽生えると、会社への「ローヤリティ(忠誠心)」が減ってしまうという論理が根底に存在しているように思います。本当にそうでしょうか? では、自立せずに、会社に依存していたら、その人は会社へのローヤリティが高いということになるのでしょうか?
「依存=ローヤリティ」ではありません。確かに20世紀の右肩上がりの時代、会社のために身を尽くし働く人が大半だったかもしれません。その時代は身を尽くし、捧げて働く人達への報いがありました。それは昇給、昇格、退職金というような、個人の生活設計への安定した保障の裏打ちでした。個人と会社が、労働の結果として報酬と職位などでそれを評価するGive&Takeのバランスがありました。ですから、会社や組織のために頑張ろうという忠誠心が多くの人の心にも芽生えていたかもしれません。会社の言う目標の実現が、自分の生活の向上につながりました。それが、個人の仕事に対するモチベーションになっていたでしょう。自分で何をしようと考えなくても、会社の言うとおりにやっていれば、中流の幸せが手に入った時代です。
現在はそのGive&Takeの関係が微妙になっています。5年後、10年後の未来を社員全員に確信をもって語り、保障できる会社が果たしてあるのでしょうか?これだけ変化が激しい世の中で、いつどのように会社や組織が変わっていくかわからない状態です。まるで荒波に飲み込まれる船のごとくです。船にぶら下がっている船員や船酔いしながら船にしがみついている船員ばかりでは、船は沈みます。船と一緒に荒波を超えていく人が必要です。荒波を予測し、航路を変えたり、船を補強したりできるような人たちです。自分の力で、船を動かしているのだという自覚を持つこと、これが自立です。

そして、自立していく人達が、自分の船を守ろうとするために必要なのは、「共鳴」です。共鳴とは、人と人のつながりです。平べったくいえば、実は直属の上司や同僚との信頼関係です。そして、社長や経営幹部達、つまり船長の求心力です。企業が個の自立とともに取り組まなくてはいけないのは、「組織の共鳴する力」なのです。そしてその共鳴の原点が、第5回で書いた「モチベーション・リーダー」の存在、育成なのです。

» 経営・人事コラムトップに戻る


お問い合わせ・資料請求
人材育成の課題
キャリア開発

キャリア開発

個人の働きがいと組織への貢献を両立するキャリア開発を支援します。

リーダーシップ・マネジメント開発

リーダーシップ・マネジメント開発

マネジャーに必要不可欠なリーダーシップとマネジメント力を養成します。

コミュニケーション開発

コミュニケーション開発

組織や仕事に変化を起こすコミュニケーション力を養成します。

組織開発

組織開発

ビジョンと価値観を共有し成果を高める組織創りを支援します。

営業力開発

営業力開発

お客さまと自社の双方に大きな価値をもたらすことのできる提案営業力、組織営業力を開発します。

経営力開発

経営力開発

ビジネスプランの立案に必要となる知識と実践的なスキルを養成します。

人事向けメルマガ登録

PAGE UP