- 「人材開発ソリューションのエム・アイ・アソシエイツ株式会社」ホーム
- 経営・人事コラム
- 【コラム】個のマインドを高める技術 (2) マインドが組織文化・風土を決める
マインドは「伝播する」「変化しやすい」「行動を喚起する」という特徴を持ち、個々のマインドのまとまりが職場や組織の雰囲気をつくることになり、組織文化や風土にも大きな影響を及ぼすのである。
◎マインドは組織に伝播する
個人のマインドは伝播しやすいものだ。個人が持つポジティブなマインドも、ネガティブなマインドも、伝播して人に影響を及ぼしやすいものである。たとえばネガティブのマインド、つまり意志が曖昧で意欲の低い個人のマインドをそのまま放置しておくと、まずは周りにいる人たちにネガティブ・マインドが伝播し、やがては組織全体に広まってしまう。マインドが低い人がいても「仕方がない」と見過ごす油断が、ネガティブ・マインドの組織への拡大を許すことになるのである。 マインドの非常に高い人がいる部署では周囲もその刺激を受け、他の部署より活気が出るものだ。周囲にポジティブ・マインドを伝播できる人がどれだけいるかは、組織の活性度を測るバロメーターになるのである。組織の中にはネガティブなマインドを持った個人と、ポジティブなマインドを持った個人がいて、それらがせめぎあっている。そのどちらが組織の主導権を握るかで、組織の活性度はまったく異なってくる。マインドが、組織を生かしも殺しもするのである。
組織のマインドをポジティブなものにするか、ネガティブなものにするかを大きく左右するのは、組織を率いるトップや、リーダーのマインドである。ネガティブなマインドを保持したトップや、リーダーが組織の上にいると、その組織は、大きくネガティブ・マインドの組織へと傾く、逆に、ポジティブ・マインドのトップやリーダーのもとでは、組織全体のマインドもポジティブなものとなりやすいのである。組織の中で、影響力の大きいトップやリーダーのマインドは、組織全体のマインドの鍵を握るのである。
◎マインドは変化しやすい
マインドの特徴の二つめは、マインドは非常に変化しやすいということである。マインドは外部からの影響を受けやすく、ちょっとしたきっかけでプラスからマイナスに転じたり、その逆になったりする。マインドが高い人でも、体調が悪かったり、上司に叱られたりすると、マインドは下がりぎみになる。反対に、上司に褒められただけで、がぜんマインドを高める人もいる。
マインドはケイパビリティよりも変化しやすく、非常にデリケートなものであり、マネジメントの観点からは常にウォッチしていなければならないのである。
◎マインドが行動を喚起する
マインドが変わると、その人の行動まで変わる。マインドは、行動の原点であり、行動は、通常マインドからの指令によって呼び起こされるものなのである。
これを逆に考えると、企業が社員に何らかの行動を起こさせたい、あるいは行動スタイルを変えさせたいときには、マインドの変化を起こすための働きかけをする必要があるということだ。
たとえば、営業マンのセールスのスタイルを「プロダクト提供型セールス」から「ソリューション提供型セールス」に変えたいと考えたとき、トレーニングでソリューション提供型セールスに必要とされるケイパビリティを身につけさせるだけでは不十分だ。営業マン一人ひとりが、プロダクト提供型セールスがなぜダメで、ソリューション提供型セールスに変わる必要があるのかを納得し、それに応じて意識=マインドを変えるように、きちんと説明・説得しなくてはならない。それに加えて、変わることによって、個人の成長にとってどういったプラスがあるのかをきちんと示し、その魅力を訴えることも重要である。
その結果、営業マン自身がソリューション提供型セールスの必要性を理解し、そうなりたいという意志と意欲を持つようになれば、それに適した行動スタイルに変わっていくのである。
(補足)行動を変えてマインドの変化を起こす
とはいえ、マインドの変化が起こりにくいこともある。そんなときは、まず行動を起こさせ、それによってマインドを変えさせることもできる。
たとえば、営業マンのセールススタイルの変革を試みるには、その必要性を訴え、マインドを変えることから始めるべきだと述べたが、そうした必要性を訴えても、なかなか理解されずに、結果としてマインドが変わらないということもある。そうした場合は、強制力を働かせてでも新しい行動スタイル(この場合はソリューション提供型セールス)をとらせ、それを繰り替えさせるなかでその重要性や必要性を理解させ、最終的にマインドを変えさせるという方法が効果的である。通常のマインドの変化⇒行動の変容ではなく、逆の、行動の変容⇒マインドの変化である。
ただし、気をつけなければいけないのは、強制的に人を動かそうとすれば、人は必ず反発し抵抗するということだ。その抵抗を無視して続ければ、モラールダウンはもとより、サボタージュや組織的な反抗にまで発展しかねない。そうしたことを実行する際には、どういう対象に、どういうタイミングで実施するかを慎重に判断する必要がある。
マインドが重要なことを、我々はつい見落としがちだ。とくに人を育てる場合、ケイパビリティばかりにフォーカスが当てられ、マインドを向上させることまで意識がいかないことが多い。しかし、最終的に人を動かす力となるのはマインドなのである。
詳細は、『人を大切にする経営』(池上孝一・岡村直昭著、ファーストプレス発行)をご一読ください。