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広州のバナナ畑

[2006.02.10] 中田 研一郎

つい最近中国広東省広州市を訪れました。訪問の目的は3月3日に中国南方TV局と広州日報が主催する「広州日中経済人フォーラム」の日本側の事務局として準備に当たるためです。広州市はトヨタ、ホンダ、日産のビッグ3が既に進出し、韓国の現代やフランスのルノーの進出も計画されているという世界でも有数の一大自動車生産基地になろうとしている地域です。広州市の郊外にはビッグスリーのアッセンブリー工場を中心に、裾野の広い自動車部品産業の工場群が広がっています。マイクロバスで、カリフォルニアと見まがうばかりの立派な片側4車線の高速道路を走ってそのいくつかを訪問すると、一面に広がるバナナ畑が目に飛び込んできます。案内をしてくれた開発区の責任者の説明によれば、彼が赴任をした1年前は今、工場が建っている地域の多くはバナナ畑だったそうです。人里はなれたバナナ畑がわずか1年の間に最新鋭の自動車産業の工場になってしまうのは、開発に当たっている当事者ですら驚きだと言っていました。

バナナ畑がわずか1年の間に手品のように最新鋭工場になっていく情景を見て、社会のインフラストラクチャーをどのように建設すべきなのかについて考え込んでしまいました。日本で同じような規模の経済開発区をこのように短期間に作り上げることはまずありえないでしょう。もっと基本的な社会インフラである空港を例にとってみても、成田空港が何十年たっても満足な滑走路が整備できないのに対し、北京、上海、広州などの中国の国際空港を訪れるとその規模の大きさと将来のハブ空港としての発展性などが強く印象に残ります。古い街並みが次々と取り壊わされて高層ビルに建てかえられる上海の景色は、今や当たり前のことになってしまいました。

社会インフラがかくも短期間に整備されていく中国を見ていると、国が地主ですべての土地を所有しているからこそできるのだと思わざるを得ませんでした。一方、日本では道路一本作るにも膨大な土地買収費用と利害関係者の調整に長い時間がかかり、スピードが重要な市場における競争に勝てなくなるのではないかと感じました。こういう思いを中国の友人に話したところ、彼からは意外な返事が返ってきました。

それは、国が短期間に農民に住み替え用の住居を用意して立ち退かせる手法には、今や中国でも批判の声が上がっており、個人の権利をもっと保護すべきだという動きが出てきているというものです。問題を更に普遍化して「急速な経済成長一辺倒ではなく調和ある経済発展」を考えるべきだという意見も強くなっているとのことでした。確かに最近の石油価格の高騰の一因は、中国の旺盛な石油需要にあるとも言われています。GDPが世界のトップ5にランク入りした中国は、外から見ているとひたすら前を見て毎年10%前後の経済成長を続ける政策が非常に堅固に見えますが、内情は既に「調和ある発展」を考えざるを得ない時期にそろそろ到達しつつあるようです。かつての日本も高度経済成長にひた走り公害問題や乱開発のツケを払い、成長の頂点でバブル崩壊となりました。この日本経済の光と影が、今後の中国経済の舵取りにどのように生かされるのでしょうか。3月の広州日中経済人フォーラムでこのあたりの議論がどう展開されるのか興味深いところです。

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