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採用の科学的アプローチ

[2005.12.16] 武谷 啓 (人事サービス・コンサルティング株式会社 代表取締役社長)

現在の日本の採用選考方法は非常に遅れていると感じています。多分、人事の領域で最もレベルが低く、遅れている分野の一つだと思います(前回取り上げた「配置」は、まだ目で見た上での判断が可能なので、採用よりは成功の確率が高いと感じています)。正直、「当たるも八卦、当たらぬも八卦」が採用の現実でしょう。


例えば、心理学で「ベーシックトラスト」という言葉があります。「人を信頼できる能力」というようなものですが、ベーシックトラストが発達していない人は人を信頼できないので共同作業には不向きな傾向が強いと言われています。このベーシックトラストは幼少の頃に身につくもので、その後の教育等では非常に変わりにくいものとも言われているようです。

今の日本の労働法体系の中では、雇用は非常に大きなリスクを企業側に押し付けています。採用担当者は、少々の欠点があっても伸びやかな人材が欲しいと思いつつも、採用後どこに配置しても上手くいかないような人材はなるべく避けたいというリスク回避策に陥りやすくなります。

長らく日本において大学別採用が続いてきたのも、いわゆる偏差値が高い大学出身者はテクニカルスキルが修得可能という保証もあり、採用のリスクを目に見えて低減させる方法としてはそれなりに効果がある手法であったと思います。


非常に短絡的に言ってしまうと、採用時においては、「活発」⇒「協調性がある」⇒「共同作業に向いている」という風に解釈され(極論ですが)、その人がベーシックトラストをきちんと身に着けているかどうかの設問はされません。心理学でベーシックトラストという言葉が与えられている以上、それを確認するすべはあると思われるのですが・・・。

私は、採用の面談の時には、考え方だけでなく、その考えに基づいて起こした行動・言動をなるべく具体的に聞くようにしていました。


採用を科学的に行うアプローチを明確にするということは、企業が必要とするスキル(スキルというより、もっとベーシックなものかも知れません)を明確にし、それを確認する方法論をも明確にすることです。言い換えると、企業側から日本の教育界に対して一つの目標を示すことでもあると思います。企業は「日本の教育はなってない」といいながら、「企業ではこういう能力が欲しい」ということを体系立てて、教育界に発信したことがほとんど無いと思います(この能力がコンピテンシーだと言う人がいるかも知れませんが、私自身あまり説得力は感じません)。


市販の対策本がたくさん書かれたテストを使うのも良いのですが、企業はもう少し、採用時に採否を判断したポイントと、実際に企業に入社した後の活躍度(それも、入って数年、十年、二十年)との相関がどうであるかという分析を積み上げ、採用を自ら科学的にしていく努力をしていかなければならないと思います。

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