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バブル世代の自立化を急げ(2回連載:第2回)

[2005.12.01] 

自立化とは何か

かつての日本型人事システムはキャリアの保障と引退後まで含めた生活の保障によって、社員のロイヤルティを高めてきた。先が見えることと生活面でのゆとりが持てることによって、社員はリスクをとって仕事にチャレンジすることができた。企業に勤める社員にとって、キャリアと生活というライフデザインの2大要素は、少なからぬ部分、会社から提供されるものであった。しかし、今後、ビジネスパーソンはこの2つの要素をみずから切り開く能力を身につけなければならない。また、企業はその獲得を支援しなければならない。すなわち、ライフデザインに関わる次の2つの能力は、これからのビジネスパーソンが備えていなければならないきわめて重要な「コアスキル」なのである。

* キャリアデザインリテラシー:自分のキャリアビジョンを描く力
* ファイナンシャルリテラシー:引退後まで見据えた資産形成力

このスキルを欠いている状態では、社員は会社に依存するという受身の姿勢になってしまう。その結果、知らず知らずのうちに保守的になり、自分の潜在能力の発揮を抑制してしまうことになりやすい。つまり、キャリアデザインリテラシーとファイナンシャルリテラシーは、ビジネスパーソンが誰しも身につけるべき共通の「技術」(テクニカルリテラシー)なのである。
しかし、自立化に必要なのは、単にテクニックとしてのスキルだけではない。大企業の中でも自分らしさを発揮して成果をあげている人々や、企業から独立してビジネスを成功させている人々を観察すると、みずからの人生をみずからコントロールする能力に長けていることがわかった。その能力の構成因子を分析していった結果、以下の3つの要素に集約された。これらは、ライフデザインの土台となる根本的な人間力(ファンダメンタルズ)といえる。

* 自己決定願望:自分の人生を自分で切り開きたいという意志
* モチベーション:目標に向けて自分をうまく動機づける力(人生のエンジン)
* ライフバランス力:人生のバランスをとって充実させる力(人生のハンドル)

自立化のためには、ファンダメンタルズとテクニカルリテラシーを含めた5つの力を、どれも欠かすことなく保有しなければならない。5つの力の関係は図3の「自立化のフレームワーク」のように示される。

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バブル世代の自立化を支援する

では、問題のバブル世代の自立度はどのような状況になっているだろうか。
図6は4類型ごとの全体平均とバブル世代の平均を対比したものである。現時点までの調査データによる途中経過であることをお断りしておくが、I型の比率は 28.3パーセントであり、全体平均よりも7.5ポイント低い値を示している。一方、IV型の比率は37.7パーセントでほぼ全体平均並みである。

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前回(第1回)でも述べたように、バブル世代は「最後の旧人類」といってよい。彼・彼女らが就職活動を行っていた頃、確立した大企業に就職し、時間をかけて給料と役職を高めていくことが、期待されるキャリアのイメージであった。当時、いったん就職した企業から別の企業に転職することは例外的なことであったし、外資系企業への就職も選択肢としては一般的ではなかった。ましてや、ベンチャー企業で若いうちに成功をつかもうという選択肢を視野に入れていた人などほとんど皆無に近かった。バブル世代以前の世代は皆、そうであった。
バブル世代が入社したときのキャリアイメージの前提となっていた、企業を取り巻く環境はこの15年で大きく変化した。しかし、バブル世代のビジネスライフデザインは、どちらかというとバブル世代の上司のそれに近いままというのが実情だ。そのことが図6のデータに見られるように、バブル世代の自立化を抑制している。
この先、10年間の企業の活力は、バブル世代がどれだけ起業家精神を発揮できるかにかかっているといっても過言ではない。人事部はバブル世代の自立マインドと技術を高める方策を意識的に打っていかなければならない。それは、ベンチャー支援や社内公募といった制度面の手当てを意味するのではなく、バブル世代個々人の意識やスキルに働きかけ、ビジネスライフデザイン力を高めるための手立てである。
具体的には、次のような5つの力の獲得に向けた検討を急がなければならない。

* みずからの自立度を認識し、自己決定願望を高める。
* みずからの動機を知り、モチベーションをコントロールする。
* 自分にとって最適なワーク・ライフバランスを設計する。
* 自分自身の将来的なキャリアビジョンを構築する。
* 将来生活に必要な資産形成のためのファイナンシャルマネジメント力を身につける。

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