事例・実績

導入企業の声

【CIPS(企業活力診断)】株式会社日立プラントテクノロジー様

2006年4月、日立プラント建設、日立機電工業、日立インダストリイズ、日立製作所の電機グループの一部が統合して発足した日立プラントテクノロジー(HPT)。統合の主目的は、日立グループの社会・産業インフラ事業の統合推進であるが、旧4社のシナジーによる新事業創出がもう一つの目的である。しかし、思うようには進んでおらず、旧4社の組織文化・風土を定量的に棚卸・評価するために、エム・アイ・アソシエイツ(MIA)の組織活性化診断ツール「CIPS(サイプス)」を採用。その診断結果を教育施策に反映させている。
(『人材教育10月号』掲載記事)


選択の決め手は「データマイニング」のアプローチ

人材開発本部 早田文隆様

人材開発本部 早田文隆様

日立プラントテクノロジー(以下HPTとする)が発足して1年目の2006年度は、旧4社個々の事業が強化され、統合前予想を上回る増収を達成できたが、個々の強みのシナジーによる新事業は未だ明確な形にならず、予想外の支出が出て減益という結果に終わった。そこで人材開発本部では、旧4社の組織文化・風土を再認識した上で、 HPTとしてのシナジーを生み出すために必要な施策を打ち出すために、CIPSで組織診断を行った。

CIPSは、社員への簡単なアンケート調査(Web上で回答し、所要時間は20分程度)をもとに、個人と組織の活力レベルを測定し、さらに活力を左右する原因が、個人と組織の活性化にどのように影響しているかを明らかにする。数ある診断ツールの中からCIPSを選んだ理由について、人材開発本部の早田文隆氏は次のように語る。

「今回の診断の目的は、旧4社の組織文化・風土の違いが企業と社員の活性化にどのような影響を与えているのか、その原因・背景を論理的に明らかにし、シナジー創出への環境を整えることです。単なるオピニオンサーベイではなく、CIPSのようなデータマイニング的アプローチが必須だと考えました」

データマイニングとは、膨大なデータを解析し、その中から有効な因果関係などを導き出す手法のことだ。各社の診断ツールを比較検討した早田氏によれば「こうしたアプローチの診断を行うには、膨大なデータとの格闘が必要であり、また高度な経営的・統計学的なポテンシャルが要求されるため、きちんと実施できる機関は極めて少ない」という。その点、MIAには「経営コンサルタントはもちろんのこと、統計解析の専門家が在籍しており、相関解析や共分散構造解析を駆使して、アンケートで明らかになった状況の背景や原因を定量的に導き出す能力に長けている」(早田氏)ところが選択の大きな決め手になった。


客観分析で明らかになった組織の課題

HPTではCIPSを全社展開する前のトライアルとして、まず人材開発本部を含めた間接部門の200名を対象に実施したが、「それでも明確な結果と指針が得られた」(早田氏)という。そこで、早田氏に分析結果の中から特徴的な部分を紹介していただいた。

(1) 組織のメカニズム
■旧4社間で異なる価値観
組織のメカニズムを構成する各要素に対する社員の意識を見ると、全般的に旧4社間に大きな違いが見られ、同じ"日立"というブランドを持ちながらも、それぞれ独立した組織文化や価値観が存在している。特に上司から部下への「フィードバック」、仕事の「負荷」、能力と仕事内容の納得感を示す「適性への合致」といった指標に大きな差が見られた。

(2) 個人と組織の活性度
■満足度は高いが創造性が不足
個人と組織の活性度は、全体的に高い点数が得られた。特に「組織」と「人間関係」に関する満足度が高く、雰囲気のよい、満足できる職場であることがわかったが、「創造性」「健全性」が相対的に低く、社員同士の活発なやりとりから新しいものを生み出そうとする力が不足していることが浮かびあがった。このような、「不満はないので、無理して頑張る事もない」という問題意識の低さに、強い危機感を抱いたという。

■活力は高いが若手が疲弊
年齢階層別の活性度を見ると、40~50歳代の活力が飛び抜けて高い。それに比べて20~30歳代の活力(特に元気度、自立度)が相対的に低い。統合前後の2年間で業務の統合や標準化、基盤強化に奔走してきた実務部隊としての若手に疲弊感が表れている。今後ますますこれら中堅が積極的に動き、海外事業や新領域を切り開いていく必要があるため、この分析結果は将来への大きな不安材料である。

■女性の活力が低い
男女別に活力を見ると、男女間の格差が大きく、特に「成長」や「対価」の満足度は平均以下の点数になっている。もともと女性の比率が低い業界ではあるが、女性が働きやすい環境づくりには積極的に取り組んできたと自負していた。しかしグローバル化ならびに,これに伴うダイバーシティへの対応といった大きなトレンドに対して、女性の活力向上がまず解決すべき大きな課題であることを再認識した。

(3) 低活性要因を支配する原因の解析
■創造性不足の原因は意思決定プロセス
創造性低下の原因を解析すると、「意思決定プロセスの不透明さ」「ビジョン&目標の落とし込み不足」の2つが浮かび上がった。プロジェクト形式の事業形態が多いため、上意下達形式で業務が遂行されることが多いが、分析結果から、ビジョンや目標を各階層にそれぞれの言葉でブレークダウンし、オープンな議論の下で相互に理解・納得しながら業務を進めるチームスピリッツ、透明性の重要性を改めて認識した。

■若手活力低下はコミュニケーション不足
若手の活力低下の原因を解析すると、「フィードバック不足」「負荷の集中」「十分な教育機会の提供」の3つが浮かび上がった。現場では、納期に追われるプロジェクトの性格上、どうしてもコミュニケーションや説明不足になりがちで、「出来て当たり前」、成果に対する評価も不足している。また、できる社員に負荷が集中しがちなのも事実。教育についても、これまで管理・監督的マネジメント教育に偏り過ぎたところがあった。


分析結果をもとに改革施策を提案

これらの分析結果を総合し、HPTにおける個人と組織の活力低下のメカニズムを整理すると、図表のようになる。CIPSで得られた分析結果について、早田氏は次のように評価している。
「HPTの関係者には、ある意味予想できた分析結果でしたが、当社についてアンケートのデータだけでしか知らないMIAの分析スタッフが、その結果をデータ解析だけから診断したことに、問題の普遍性、根の深さを改めて実感しました。分析結果は、関係部課長にプレゼンするとともに、分析レポートは受診した全員に配布しました。さらに、9月から全課長対象に隔週ペースで行う「課長交流研修」で、分析結果を報告・共有させます。」

HPTでは、この結果をもとに「HPT変革3ヶ年計画(案)」がまとめられた。人材開発の観点では、「ビジョン&目標明確化のためのワークショップの実施」「階層教育の大幅外部委託による普遍性と評価の透明性確保」「体験型リーダー研修の拡大による自立型人材への気づき強化」「女性の役割強化と管理職への積極的登用」「新人研修の多様化と強化(入社2年目に全員海外研修)」などをポイントに具体的施策が打ち出され、取り組みが始めらている。

CIPSの結果は、HPTの改革の方向性を定める指標として大いに役立ったようだ。

» 研修事例トップに戻る

お問い合わせ・資料請求

お問い合わせ・資料請求
人材育成の課題
キャリア開発

キャリア開発

個人の働きがいと組織への貢献を両立するキャリア開発を支援します。

リーダーシップ・マネジメント開発

リーダーシップ・マネジメント開発

マネジャーに必要不可欠なリーダーシップとマネジメント力を養成します。

コミュニケーション開発

コミュニケーション開発

組織や仕事に変化を起こすコミュニケーション力を養成します。

組織開発

組織開発

ビジョンと価値観を共有し成果を高める組織創りを支援します。

営業力開発

営業力開発

お客さまと自社の双方に大きな価値をもたらすことのできる提案営業力、組織営業力を開発します。

経営力開発

経営力開発

ビジネスプランの立案に必要となる知識と実践的なスキルを養成します。

人事向けメルマガ登録

PAGE UP