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「愛」のある組織マネジメント

「愛」のある組織マネジメント

[2008.06.01] 真保 浩

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新入社員の正式配属も先月で終わり、各組織で新しい体制が確立された頃ではないだろうか。毎年恒例の財団法人社会経済生産性本部による「新入社員のタイプ」では、平成20年度の新入社員は「カーリング型」。その意味は、「新入社員は磨けば光るとばかりに、育成の方向を定め、そっと背中を押し、ブラシでこすりつつ、周りは働きやすい環境作りに腐心する」、「しかし、少しでもブラシでこするのをやめると、減速したり、止まってしまったりしかねない」、「また、売り手市場入社組だけに会社への帰属意識は低めで、磨きすぎると目標地点を越えてしまったり、はみだしてしまったりということもある」、「自分の将来は自分の努力で切り開いていくという、本人の意志(石)が大事」とのことである。 
この数年間を振り返ると、「デイトレーダー型」(平成19年度)、「ブログ型」(平成18年度)、「発光ダイオード型」(平成17年度)、「ネットオークション型」(平成16年度)、「カメラ付き携帯型」(平成15年度)....等。最近の傾向としては、(良くも悪くも)自立して、自己主張があり、帰属意識の乏しい新入社員を、企業としてマネジメントすることの難しさ、もっと言えば、企業側の自信の揺らぎが表われていると思われる。このような時勢における若手社員たちに、企業のマネジメントはいかに向き合うべきなのだろうか?


<ミッション・ビジョンの浸透>
ひとつの問題意識は、「個」に重点を置くばかりに、「組織」への意識付けがなおざりになっていないかという点にある。
「組織の完成形モデルは、軍隊組織である」ということはよく耳にする。万単位の人間が、トップダウンでの指揮命令系統に従って、最前線の現場までが一糸違わず動く。そして、個々の兵士・組織が有機的連携しチームワークを発揮しながら、加えて、場合によっては自らの犠牲を省みず役割・責任を全うする。どうして、このような組織が構築できるのか?もちろん、多様かつ高度なマネジメント手法や教育・訓練などの成果の賜物ではあるが、その源泉として高い使命感が下支えしていると洞察する。

個々の兵士たちは、自らによって、国を守る、郷土を守る、家族や大切な人を守る、そのための最前線の役割を担っていることに大きな「誇り」と「使命感」を感じている。だからこそ、「個」よりも「組織」を優先した行動ができるのではないだろうか。
これを企業に置き換えると、各社が掲げている「ミッション・ビジョン」(またはそれに準ずる行動規範など)である。「ミッション・ビジョン」に共感し、その企業で働くことを通じて社会へ貢献をしていることを実感することで、その会社で働くことの「喜び」や「誇り」を得られることになる。

「ミッション・ビジョン」は、お題目ではなく、組織にビルトインされたDNAであるべきである。すなわち、全ての行動規範、組織文化は、「ミッション・ビジョン」にアラインしたものであることが必要であるし、日々、社員への意識・無意識を問わず、繰り返し、繰り返し、働きかけがなされていることが必要である。

例えば、コンサルティング業においては、クライアントに対する高い付加価値を提供することがひとつの行動指針であるが、業界内では「バリュー」という言葉で表現されることが多いようである(何が「付加価値」「バリュー」かは、各会社の業態やビジョンによって異なる)。上司から、あるいは同僚からの仕事の成果に対する指摘だけでなく、自分自身でも「この成果物にはバリューがあるか?何がクライアントにとってのバリューか?」を常に自問自答する。「最近、バリュー出してる?」と聞かれるのが挨拶代わりだという笑い話のような話もある。このカルチャーを通じて、より高い付加価値のある成果物を出すこと、継続的に切磋琢磨、自己研鑽するのがコンサルタントであり、それがコンサルティング会社の組織力の源泉であったりする。

こうした「ミッション・ビジョン」の意識付けの出発点は、新入社員研修であろう。まさに「三つ子の魂百まで」である。いかにこのタイミングで、「ミッション・ビジョン」を強烈な印象としてインプットできるか、そこでは共感を得られるまでのレベルに引き上げることが求められる。
一般的には、新入社員研修のテーマは、会社、事業、商品・サービスや業務の概要理解や基礎的ビジネススキル、およびビジネスマナーなどが主流であるが、むしろこういったテーマは、入社前の内定者フォローアップ研修などの段階で完了させればよい内容ではないか。これらのテーマは、わざわざ入社後に集合して研修をしなければならない必然性が大きくないからである。代わりに、入社後の新人研修では、トップマネジメントや先輩などからの直接の語りかけ(講演)やディスカッション、チームアクティビティーなどを通じた、ミッション・ビジョンを体感できるような研修プログラムが望ましいのではないだろうか。
そして、繰り返しであるが、OJTやその後の研修を通じたミッション・ビジョンの継続的インプットと、それを実践するためのシステム作りも併せて導入すべきである。


<マネジメントではなくリーダーシップ>
組織への意識付けを重視すると同時に、継続的にこれを実践するためには、マネジメント層の役割が重要になってくる。
これまでの管理職に求めるスキルや管理職研修などによる育成は、多くの場合、「マネジメント力」の育成が主眼であった。ここで言う「マネジメント」とは、「組織・部門に与えられた戦略課題を確実に達成するために、明確化されたタスクに関する役割と責任を部下に与え、スケジュールと品質を管理しつつ、その遂行状況をモニターし、全体を指示・統制する」という役割である。「管理職」と呼ばれる通り、まさに「管理」スキルの育成である。

マネジメント自体は大事な「役割」であり、「スキル」である。一方で、良くも悪くも自立して自己主張が高い昨今の若手社員は、マネジメントされることを好まず、かえって反発する恐れがある。「個」の成長や自立と、「マネジメント」されること自体には直接的に結びつきがないからである。

これを解決するのが、「リーダーシップ」である。ここでのリーダーシップとは、「組織・部門としてのビジョンや将来像を示し、これにより部下をインスパイアすると同時に自立的・自発的なモチベーションを喚起することで、部下の能力を引き出し、組織・部門の戦略課題の実現のみならず、部下の個としての成長をも支援・実現するためのリード」という役割である。

「マネジメント力」自体は、管理職層のみが必要とする特別なスキルではない。各自が与えられた役割・課題について、スケジュールや品質を維持しながら、確実に成果を出すための管理は、若手社員であっても必要な基礎スキルである。社会人初期の自分自身に与えられた「作業(タスク)のマネジメント」、その次には中堅社員としての、部下を含めた「チームのマネジメント」、そして管理職としての「組織・部門のマネジメント」といったステップを踏むことで、各段階で必要とされるマネジメント力を磨きつつ、マネジメント力を高度化・強化していくことが必要である。
これらの基礎的な土台づくりと並行して必要であるのが、「リーダーシップ力」の育成である。いわゆる「管理職層」になってからリーダーシップ力強化の育成を始めても手遅れである。管理職層になったから、リーダーシップ力が必要になるのではなく、「マネジメント力」と合わせて「リーダーシップ力」があるからこそ、管理職層に昇進できるのである。
こうした意味においては、より早期の段階からの「マネジメント/リーダーシップ」の教育・研修、育成の必要認識を組織として持つことが大事である。


<部下ときちんと向き合うこと>
以上の点に加えて、もっとも大事なことは、部下一人ひとりを、多様化した価値観を持つ「個」として良く見ること、知ることである。
それは、忙しい管理職層にとっては、相当な負荷が強いられることになるかもしれない。しかし、これこそが「マネジメント」と呼ばれる管理職の重要な役割であり、部下とのコミュニケーションを「間接業務」として認識するようではいけないのである。

自分自身が若手社員だった頃に、このような経験はないだろうか。
若手の自分からは積極的に管理職層にコミュニケーションの働きかけをすることには心理的抵抗があるが、その分、上司から話しかけられた時の嬉しさや、あるいは、上司は何も見ていないようでいて、実は自分のことをよく見てくれていることを発見し、驚きを感じたこと。あの時のあの一言が、後々まで心に残る、ある種のモチベーションになっていたこと。

こうした小さいことを積み上げながらモチベーションを引き出し、その上で社員個人のキャリアゴールと組織・部門のゴールをアラインさせ、部下の良いところ・悪いところを見極めつつ業務上のゴール設定や指示・アドバイスを与えていくこと、そして、その業務の遂行状況を見守り、時には褒め、時には叱り、部下個人の成長と組織の成長を合致させるレベルまで、部下と向き合うことが大切である。


<「愛」のある組織マネジメント>
これらの過程において、様々な関係の根幹を支えているもの・・・・・それは、「愛」ではないだろうか。
共感できるミッションやビジョンを実践している「会社への愛」、仕事を通じて貢献する「お客さまや社会への愛」、尊敬でき、自分を見守ってくれている「先輩・同僚への愛」、逆に自分が上司の立場になってからの「部下への愛」、そして、その環境の中でキャリアを積んで成長していく「自分への愛」、こうした「愛」のある組織作りこそ、「カーリング型社員」に代表される若手をマネージしながら会社組織が成長していくためのカギではないかと考える。

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