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メディア掲載情報株式会社ディスコ『HUMAN CAPITAL LABORATORY』に弊社エグゼクティブ・ディレクター中田 研一郎のインタビュー記事が掲載されました

株式会社ディスコ 会員制情報サイト『HUMAN CAPITAL LABORATORY(HC-Lab.)』に、弊社のエグゼクティブ・ディレクター中田 研一郎のインタビュー記事が掲載されました。

「グローバル競争時代を勝ち抜く人材獲得戦略」

世界同時不況の中で日本企業は抜本的なコスト削減に取り組むと同時に再成長への布石を打ち始めています。「環境」と並ぶキーワードが「アジア内需」。米国の過剰消費に依存できない中、世界経済の枠組みが変化し、中国等のアジア内需を創造する力が問われています。そのため、優秀なアジア人学生を中心にグローバル人材の獲得・育成こそ喫緊の課題になっていると思います。元ソニー人事部長で東アジア有力大学のキャンパスリクルーティングのパイオニアである中田研一郎氏(青山学院大学客員教授)に「グローバル競争時代を勝ち抜く人材獲得戦略」について聞きました。

(2009年5月インタビュー、聞き手:大学ジャーナリスト 恩田 敏夫(以下、敬称略))

クローズド・コミュニティから抜け出せていない実態がある

恩田:
日本の主要輸出企業30社(09年3月期)を分析すると、欧米を抜いてアジアが稼ぎ頭になっています。製造業、サービス業を問わず景気回復後の成長戦略は「中国、アジアでどれだけ稼げるかが勝負の分かれ目」と言われるほど、産業界の新興国シフトが一段と鮮明になっています。不況期の今も手を抜くことなく、中国人学生等の優秀なアジア人材の獲得・育成が重要課題になっていますね。

中田:
少子化が進む日本ではマーケットの収縮と同時に生産年齢人口も減り続けています。そうした中、電機、自動車などの輸出企業に限らず、最近はコンビニエンスストアなどの流通、内需型産業である食品、日用品、製薬企業なども国内マーケットに見切りをつけ、海外に軸足を移そうとグローバル・オペレーションを展開する動きがありました。そこに昨秋以降の世界的経済危機により、米国向け輸出が30~40%も激減する事態に見舞われ、成長の見込める中国など新興国シフトを一斉に強めようとしているわけです。新興国での事業拡大や差別化の余地の少ない汎用品や低価格品の海外移転は一層加速するでしょうが、私に言わせれば、これは戦略的というより選択肢がなくなり追い込まれた後の泥縄式の新興国シフトです。グローバル化に戦略的に取り組むのであれば、経営資源の中で一番大事な人的資源を世界に開かれたものにしていく、すなわちグローバル人材の獲得・育成が最も重要課題であるはずなのに、日本企業では未だ人材のダイバーシフィケーション(多様化)が進まず、組織のクローズド・コミュニティから抜け出せていないのが実態です。もし、日本企業が戦略的に新興国シフトを数年前から考えていたのなら、今頃は人材の多様化もかなり進んでいたはずですが、現実には目に見えるような進捗が見られない。したがって、日本企業は、こと人事に関しては中長期の戦略が欠如し、泥縄式に状況対応していると言わざるをえない。

世界シェアを維持するには、マーケティングや開発で世界人材の多様な視点が必要

恩田:
市場や事業構造がグローバルになれば、それに伴いマーケティングも商品作りも多様な国籍の人々の知恵が欠かせませんよね。

中田:
これからは必然的にグローバル化を意識した地域・国ごとの市場戦略、製品戦略を進めなければなりません。優秀な働き手もグローバルに確保する必要があるし、会社を担う基幹人材を国内外で獲得できるかどうかがグローバルビジネスの命運を担うようになるでしょう。例えば、中国で売れる商品は誰がデザインすれば売れるのか?それは市場に精通した中国人が主導権を持つことが必須となってきます。サムスン製の携帯電話が爆発的に売れしましたが、特に人気商品のボディカラーは中国人が好む独特の朱色でした。日本人ならまず選ばない色だし、日本人デザイナーの発想にもないものでしょう。また、インドで28万円の乗用車「タタ・ナノ」が発売されましたが、ナノにはバックミラーが片方しかない。日本に比べると混沌とした交通事情で車線というものの意識すら薄いインド人ドライバーにとって、それはなくても済むものなのですね。日本人エンジニアには暑いインドでエアコンのない車は考えられないが、インド人にとっては40度を超える暑さも当たり前だから、あえて装備していない車でも安さを優先するという発想になる。日本のエアコンの効いた部屋で日本人エンジニアはそんな車を発想しないだろうし、企画したとしてもまず会議でつぶされるでしょう。また日本人エンジニアはプライドがあって、そんなレベルの低い車は作りたくないと考えるではないでしょうか。新興国のビジネスでは大部分は単価の安い、機能が限定された機器の提供が中心で、日本とは根本的に異なるビジネスモデルが出現しているのです。日本の携帯のような高度な多機能製品をほしいと思っている購買層は極めて限られているのです。アジア内需を取り込み、世界シェアを維持するにはアジアなど世界の優れた人材と一緒になって現地に密着した視点でマーケティングや開発を進めなければならないのは当然です。「外で作って、外で売る」なら、必要な人材の質も変わってくるのです。

恩田:
ソニーでは2001年から中国人頭脳に狙いを定め、手を打ち始めていますね。

中田:
はい。私が人事の責任者になった2001年頃から中国人学生を対象に試験的に数名ずつ採用が始まり、採用改革に着手した03年から年間の中国人採用数を一挙に10倍増の数十名規模にしました。ただ当時は新興国対応で中国人エンジニアを採用するべきという基本認識はありましたが、それ以上にエレクトロビジネスを展開する上で、日本国内だけで技術者を質量ともに獲得していくことが困難であるという危機感を持ったのです。理系離れで理工系学部を志望する学生数が10年で半減し、平均的には質も落ちていた。特にソニーが必要とした組み込み系のソフトウエア・エンジニアの新卒採用は毎年採用予定数を質的裏づけを持って確保することが難しくなったと実感したからです。そこで中国、韓国、インドに着目し、現地での採用活動を本格化したわけです。彼らは毎日10時間以上も勉強し、技術知識も豊富な上、社会に出て成功したい、海外に行って一旗揚げたいとアグレッシブですから、面構えからして違う。面接するのはほとんど修士、博士の優秀な人材でした。強烈に印象に残っているのは「何故ソニーに入りたいのか」との質問に「成功して親孝行したい」というものでした。日本では面接で一度も聞いたことのない言葉です。中国を今後とも技術系人材の供給基地として位置づけ、活用していきたいとの確信を持ちましたね。

恩田:
08年の中国の学生数はなんと2150万人と膨大です。理工系はその半分といわれていますが、質的レベルはどうですか。

中田:
私は清華大学、北京大学、復旦大学、上海交通大学等の国家重点大学の有力大学の学生を対象に採用活動を行いましたから、きわめて優秀だと実感しました。面接だけでなく、日中韓共通で論理思考力を問う試験をやりましたので良く分かります。統計で見ても近年の研究者数は日本を超え、博士人材も世界2位。中国の技術人材は分野によってはすでに質量ともに日本を抜いているかも知れませんね。中国の人材供給能力の高さを考えれば、多くの中国人材が日本企業で活躍する供給サイドの条件は揃っているが、問題は採用側の動きが遅々として進んでいないことです。日本企業がアジア内需に着目しているのであれば、もっと戦略的な採用を考えるべきでしょうが、採用現場は全くそのように動いていない。日本人新卒採用中心の戦後60年続いた日本式雇用体系に基づく過去の延長線上の採用を毎年繰り返し、景気に合わせて人数調整をしているだけで、戦略の実行からは程遠いです。グローバル人材戦略は社長の演説に出てくるだけ実績は殆どなしという企業が多いです。

恩田:
しかし、優秀な学生獲得となると、欧米企業との競争は熾烈です。IBMやHP、マイクロソフト、SAPなど欧米企業は、北京、上海、大連などの大学で、講師やカリキュラム、教科書も提供して実践的教育を行い、卒業後は社員として採用しています。つまり高度の技術力の活用に焦点をあて、優秀者を確保して自ら育てるという姿勢が鮮明です。これに比べ、日本企業は出遅れていますね。

中田:
おっしゃる通りです。私の実施したソニーの採用活動は東部地区の大学だけでしたが、IBMやマイクロソフトなどは全国ネットで企業説明会を行い、奨学金を出すなど採用活動に精力的に取り組む等かなり先を行っていました。11月に行う主要大学内での企業説明会のため9月に教室確保の申し込みをするのですが、大教室は欧米企業との取り合いが熾烈です。日本企業はソニー、松下電器(現パナソニック)、シャープのほかは見かけませんでしたね。当時すでに日中の貿易額は輸出入とも1位となるほど深まっていたのに、日本と欧米企業では中国人材採用には大きな温度差があったし、今もあまり変わっていませんね。

恩田:
現在、中田さんはコンサルタント活動などを通じて、優秀な中国人材の確保戦略などを伝授されていますが、日本企業の中国人材採用活動は今も活発化していませんか。

中田:
セミナーなどで私の話を聞かれ、人事担当者の皆さんはその必要性を痛感されているようですが、実際の動きは鈍いですね。例えば、日本企業は採用試験時に日本語をしゃべれるかどうかを、合否の基準にしている企業が多いのですが、それは自ら壁を作るようなものです。中国では日本語を大学時代に学んでマスターしている人は例外中の例外ですから、極めて狭いマーケットから採用しようとしている。結果として、優秀な人を採用できる確率はかなり下がってしまう。アメリカやヨーロッパで現地採用するときに日本語を必須とはしないのに、何故か中国では日本語能力を採用時点で要求していることのおかしさに気づかない。日本の企業で仕事をしていく上で日本語は必要ですが、それは合格してから研修すればいいことです。ソニーでは面接や試験時は日本語を一切使わず、中国語もしくは英語で行い、合格した学生に、日本語の研修を来日前3カ月間、現地の日本語専門学校でトレーニングをし、日本語検定3級レベルになってから来日してもらっていました。さらに半年間、企業内で日本語研修をフォローアップすることで十分コミュニケーションできるようになります。

不人気の理由はガラパゴス化した日本流の押し付けにある

恩田:
それにしても中国で日系企業の人気は高くありませんね。

中田:
不人気の一番の理由は日系企業のシニアマネジメントの大半が日本から派遣され、中国人が短期間で高いポストに昇進するのが難しいというガラスの天井があり、キャリアを広げる上で制約があるという実態があるからでしょう。それと中国人エンジニアは日本の高い技術を学びたいのに、中国に出している仕事は汎用品とか低価格品で、開発も現地に任せない。生産技術以上の高いレベルの仕事をできないのであれば、清華大学や北京大学を出た優秀な学生は魅力を感じないでしょう。その点、外資系企業は報酬も高く、確立したマネジメント体制、福祉、厚生、研修など、整備された社内組織と身近に自分の将来像であるロールモデルとしての中国人経営幹部が見えるキャリアパスに学生は魅力を感じています。大手の外資系企業でよいキャリアを築き、マネジメント手法を学び、その後中国企業に転職するとか、起業することを考えているからです。
中国人を日本企業が採用したとしても、ガラスの天井を目の当たりにし、高い技術を学べないとわかれば、優秀な人材ほど辞めていくのは当然。それを日本企業の人事担当者は中国人はすぐ辞めると非難します。ガラパゴス化している日本流を押し付けていることに気が付いていないのです。かつての高度成長期のJapan as No1の時代と違って、グローバル経済において日本人中心主義をそのまま受けいれてもらえるほど日本のポジションはもう高くないことに気づく必要があります。
また企業のトップが研究、開発や設計の現地化を進めようとしても、エンジニアたちはノウハウの流出を理由にレベルの高い仕事を中国に移管しようとしない。中国に出したら自分たちの仕事がなくなると考え、ジョブ・セキュリティのために出したがらないのでしょうね。トップの掲げる方針と現場の実態の乖離がかなり大きく、変革力が欠けていることは事実が物語っています。

恩田:
景気回復時にグローバル化で再成長を目指す企業にとって、グローバル人材の不足は事業を伸ばしていく上でネックになるのではありませんか。

中田:
日本企業は日本においてはほぼ100%日本人を使い、日本人が経営してきた。いわば日本人に閉じたクローズド・コミュニティを作り、密度の濃いコミュニケーションや人材の同質性を強みにした経営で成功してきました。しかし、グローバル化がここまで進んできた以上、本当の意味でのグローバル企業に進化することが問われています。いまやBRICsをはじめ新興国が著しく成長し、一大国内市場を形成して、今後数十年に亘ってこれらの国から毎年消費物資の最大の購入者である中間層が数千万人規模で生まれてきます。グローバルマーケットに地殻変動にも似た大変動が起きていますが、この変化に対応あるいは先取りできなければ日本企業の未来はない。2000年以降のフラット化したグローバルマーケットの中にあって、日本企業はガラパゴス化したクローズド・コミュニティを維持したまま生き残れるわけがない。グローバルな商品作りにはダイバーシフィケーションが欠かせないのです。多くの大企業の間では資金、モノ、情報などの経営資源について見てみればグローバルなオペレーションに変わってきているが、肝心の人的資源が世界に開かれていないのです。他の経営資源に比べて、人事と人材の変化は即効性が低いだけに時間との競争を考える必要がありますが、この点で日本企業は変化のスピードが遅すぎます。グローバル人事組織を構築し、オープン・アーキテクチャーに変えていくのには時間がかかるでしょうが、内なる国際化、即ち日本の組織に外国人を受け入れる段階から脱し、現地の最適な人材に仕事を任せ、地域に根ざしたビジネスを進める。本社を含めて基幹人材に外国人を登用し、地域ごとに意思決定できるグローバルな経営体制の構築は不可欠になると考えています。純日本的経営モデルもいずれ徐々に変化して、国籍の異なる者同士が机を並べて一緒に仕事をすることが当たり前になる時代が遠からず来ることを願っていますが、そうなるかどうかは、ひとえに今の経営陣と現場の変革力にかかっているでしょう。

<以上、株式会社ディスコ『HUMAN CAPITAL LABORATORY』より転載>

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