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MIAが考えていること(5):相手の考えを理解せずにコミュニケーションできるか?(その2)

[2010.03.30] 松丘 啓司  プロフィール

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 先週のコラムで例に挙げた上司は、経験やルールや論理の観点からの常識を基準として若手の話を聞き、発言の内容と常識を照らし合わせて、いわば「添削結果」を返していただけと言えます。上司にとって大切なことは、若手の話が常識に合っているかどうかであり、若手が何を考えているかを知ることではなかったでしょう。つまり、上司にとっては、はじめから若手の考えていることを理解する必要はなかったのです。

 コミュニケーションとは互いの考えをキャッチボールすることと思われがちですが、実際のところ、前回、例示したファーストフード店での会話のようなコミュニケーションが太宗を占めている組織も少なくないのではないかと思います。店員は、「チーズバーガーをお願いします」というお客の言葉に対して、「フライドポテトはいかがですか」と返せば事足りるのであって、お客が「本当はダブルチーズバーガーを食べたいけどカロリーが気になる」と心の中で考えていることまで知る必要がありません。


 組織の常識に支配されたコミュニケーションの問題点

 相手の発言だけを捉え、こういう場合はこう返すと、組織の常識によって導かれた言葉のやり取りを繰り返すコミュニケーションのあり方に対して、何の疑問も持たれないとしたなら、その組織は大きなコミュニケーション上の課題を抱えていると言えます。確立されたビジネスモデルをきっちりと運営していけば、事業が拡大していくという経営環境であれば、それでもよかったかも知れませんが、今日ではそのような企業は稀でしょう。

 相手の考えを理解せずに、組織の常識に支配されたコミュニケーションが日常化することの問題点の一つ目は、それでは大きな進歩が望めないことです。組織が生み出す成果は、既存の常識の範囲内にとどまってしまいます。組織の中では、決まり切ったコミュニケーションが繰り返されるだけだからです。組織の常識自体が少しずつ変化することはあっても、それによって生み出させる成果は改善レベルのものでしょう。

 第2の問題点は、社員の自律性が失われてしまうことです。組織の常識という「外の軸」に従った発言や行動が求められる結果、自分なりの考えを持つことの優先度が低下してしまいます。それでもまだ、うまく組織の常識を体得できる人はよいでしょう。そうでない場合、「外の軸」に心を委ねたものの報われないというディレンマが、精神的な疲弊を招く恐れもあります。このように社員が自律性を失った状況で、企業は大きく成長できるわけがありません。


 コミュニケーションは、継続的に違いを生み出すプロセス

 本連載では、私たちエム・アイ・アソシエイツが「○○とは?」という問いを大切にしていると述べてきました。では、「コミュニケーションとは?」、いったい何なのでしょうか。その定義はかならずしも容易なものではありませんが、私たちは現時点では、「繋がりを持った人々の間で、継続的に違いを生み出すプロセス」と考えています。

 違いが生まれるからビジネスは成長します。何も違いがないところに、進歩も創造もありません。組織は違いを生み出すことによって、成果を挙げています。そして、その違いを生み出すプロセスがコミュニケーションであると考えています。この表現はわかりにくいかも知れませんが、要は、Aさんの発言に対してBさんが違いを加え、さらにAさん(あるいはCさん)が違いを加えることによって、これまでにない価値が生み出されていくというイメージです。

 コミュニケーションが組織の常識に基づいてのみ行われているとしたら、そこで生み出される違いは常識の範囲内になります。皆が組織の常識という外発的な観点に従うのだから、それは当然のことです。では、そこから脱却するためには何が必要なのかというと、それは組織内のコミュニケーションに、個々人の内発的な観点からの違いが加えられていくようになることです。

 内発的な観点とは、外の軸に従ってどうあるべきかという観点ではなく、個々人の価値観に照らしてどう思うか、どう感じるかということです。その人ならではの見方、感じ方は、その人が何を大切にする価値観を持っているかに起因します。内発的観点には、ベテランと若手の優劣はありません。あるのは個々人の違い、多様性のみです。そのような多様な観点をコミュニケーションに取り込める組織は、これからの時代、優位に立てるのではないかと思います。

 では、コミュニケーションを変えていくためには何をすべきか、という点については、本連載の中で、あらためて書いていきたいと思います。また、来週は今回のテーマに関連した4月の特集をアップする予定です(本連載は1週、お休みさせていただきます)。

≪過去の連載一覧≫
MIAが考えていること(1):育成を目指している人材像
MIAが考えていること(2):「キャリアとは何か?」を問う
MIAが考えていること(3):「みずから課題を設定できる人」を育てるためには?
MIAが考えていること(4):相手の考えを理解せずにコミュニケーションできるか?(その1)

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