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たゆまぬ改善があってこそ改革は成功する

[2009.12.24] 谷藤 友彦  プロフィール

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 前回の記事「『一撃必殺』の改革プランなどない」では改革をテーマにしたが、今回は改善と改革の関係性について書いてみたいと思う。


 改善ができない企業に改革はムリ

 事業環境の構造的な変化に直面する企業では、生き残りをかけて様々な改革に着手している。だが、改革の成否は、実は「日頃から業務を『改善』する文化がどれほど根付いているか」にあるのではないかと思うのである。もっと辛らつな表現をすれば、「改善ができない企業に改革はムリ」だということだ。

 ローランド・ベルガーの遠藤功氏は、トヨタが2003年に国内の販売チャネルを大きく再編し、新たにレクサスブランドを投入した「改革」を取り上げて、トヨタにおける「改善」と「改革」について次のように述べている。

 販売台数が伸び悩み、成熟化する市場。自動車需要を牽引する若者市場に対する訴求力向上の必要性。そして今後拡大が予想されるプレミアム層への販売網の構築。

 こうした変化は、過去の延長線上にない不連続の変化であるとトヨタは認識し、販売の仕組みを構造的に変えるという大きな決断をしたのである。

 トヨタの販売やサービスの現場では、工場と同様に、日夜「改善」が展開されており、大きな成果を上げている。しかし、こうした不連続の変化に対しては、ビジネスの仕組みそのものを構造的に変えていかなければ対処できない。そうした5年に一度、10年に一度の仕組みの再構築こそが「改革」なのである。

 「改善」と「改革」はどちらか一方だけを選択するというものではなく、共存させるべきものである。新たな販売チャネルが構築されようが、トヨタの販売の現場ではこれまで通り改善が続けられていく。

 改善も満足にできない会社が、改革を振りかざしていても上手くいくわけがない。現場の粘り強い「改善」と経営者の力強い決断による「改革」。この両方が相まって、トヨタの競争力は確立されている。
(遠藤功著『現場力を鍛える-「強い現場」をつくる7つの条件』東洋経済、2004年)

 2003年の改革から6年、トヨタは未曾有の苦境に陥っており、新たな改革を打ち出していくに違いない。しかし、いつでも変わらないのは、製造の現場における原価低減のための改善活動と、営業の現場における販売効率向上のための改善活動だ。トヨタにおいては、改善なくして改革は成り立たないのである。

 われわれが提供する研修にBPRをテーマとした「ビジネスアーキテクト育成研修」というものがある。BPRとはビジネス・プロセス・リエンジニアリングの略であり、業務の抜本的改革を意味する。この研修を導入いただいているある企業の担当者の方からこんなことを言われたことがあった。

 「BPRのような改革は非常に意義があると思うが、いつもいつも改革ばかりしているわけではない。現場の社員にとっては、日常業務の改善の方がはるかに大切だ。」
 さらに続けて、「『ビジネス・プロセス・エンジニアリング』と言うからには、業務プロセスの『構築』なのだ。つまり、BPR以前にBPE=ビジネス・プロセス・エンジニアリングができていなければならない。」ともおっしゃった。なるほど確かにそうだ。日頃から改善していない業務プロセスはBPRできないのである。

 改革を成功させるために日頃の改善が必要な3つの理由

 改革を成功させるためには、なぜ日頃の改善が必要なのだろうか?私なりに3つの理由を考えてみた。

 第一に、日頃から改善活動を実践することで、「変化への心構え」ができる。普段から、「少しでも良くしよう、変えよう」と思って動いている人は、変化に対する抵抗が小さい。もちろん、改善と改革では変化の大きさが全然違うから、改善に慣れていれば改革にもついていけるとは限らない。だが、改善で多少なりとも変化に対応する能力を身につけていれば、改革に対する心理的抵抗を取り除くのは少しは楽になる。逆に、小さく変わることにすらなれていない人間が、大きく変わることに賛同するはずがない。

 例えば、現在抜本的な改革に乗り出そうとしている社会保険庁が、すんなり改革を実行できるとは到底思えない。社会保険庁の業務を詳しく知るわけではないが、常識では考えられない量の年金記録のミスが存在したり、採算の取れない施設をいくつも建てたりしているということは、日常業務にかなりの問題があるはずだ。しかも、問題の所在にうすうす気づいていながら、十分な改善措置を施してこなかった可能性がある。そういう状態で何十年もやってきた組織が、いきなりガラガラポンの改革をやり遂げられるとはちょっと考えにくい。やはり、普段から改善を通じて変化適応体質を作っておかなければ、改革は難しいと思う。

 第二に、改善を継続すると、改革のタイミングが見えてくる。別の言い方をすれば、「改善の限界が改革の時期」ということだ。改善によってある時期までは顧客の満足度が上がり、収益がもたらされる。ところが、やがて目立った成果が得られなくなる。改善は無限に続くものではなく、いつかは限界がくる。市場のニーズの変化や競合の新たな戦略によって、これまでのやり方が通用しなくなるのだ。この時こそが改革のタイミングである。改革のサインは改善の限界によって見えるようになる。現状維持のままでは改革のサインを捉えることはできない。

 われわれの会社のホームページ制作をお願いしている会社の人から面白いことを教わった。

 多くの企業はホームページのデザインを気にして、あれこれデザインを変えようと何度もサイトに手を加えようとしますが、デザインはサイトの成功にとって実はそれほど重要ではありません。大事なのは、細かい部分の操作性やサイト内で使われている文言、そして重要なキーワードで検索したときに上位表示されるかといったことです。

 だから、例えば問い合わせボタンの位置や大きさを変えてみたり、商品紹介の文言を解りやすいものにしたり、SEO対策をしたりといった改善を日々積み重ねていくことの方が、デザインよりもはるかに意味があるのです。もし改善を重ねてもダメだと思ったら、そこで初めてデザインを変えるという判断をするのが賢明です。

 これまでの2つは、改革に先立って改善が必要だという理由だったが、改革の後にも改善を続けなければならない理由がある。考えればすぐに解ることだが、改革は一発やってすぐに成功とはならない。だいたい70点か80点ぐらいの出来になる。つまり、細かい不整合があちこちで生じるのである。それを90点、100点に持っていくのは改善に他ならない。

 新しい情報システムを導入したところ、一部想定していなかった業務がありシステム処理ができない。新しい組織体制にしたところ、サポートが手薄になる顧客セグメントが発生し顧客の離反を招きかねない。完璧な改革などないのだから、こうしたエラーはどうしても起こる。エラーを是正するためには改善するしかない。改革の後にも改善を続けることが、改革を成功へと導くのである。

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