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研修施設は人材育成に対する企業の姿勢を表している

[2009.08.20] 谷藤 友彦  プロフィール

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 企業が所有する施設には、その企業の経営に対する考え方が反映されていると思う。最も解りやすいのが経営トップの部屋だ。ちょうど『日経ビジネス』の7月27日号に、ウォルマートのCEOの部屋の様子が紹介されていた。

 「そこは、創業者、サム・ウォルトンの時代から、歴代トップが使い続けてきた場所だった。わずか5m四方程度で、木の壁や絨毯は使い込まれて、くたびれた感じすら漂わせる。

 『とても謙虚な気持ちにさせてくれるだろう』

 イスに腰掛けて、マイケル・デューク(※現CEO)はそう笑った。」

 いつ何時も、あらゆる手段を尽くして徹底したコスト削減を追求する企業姿勢は、CEOの部屋にも表れているのだ。

 別の例を挙げると、オフィスの机のレイアウトには、社員同士のコミュニケーションに対する考え方が反映される。あるコンサルティング会社では、幹部社員同士のコミュニケーションを円滑にするために、幹部1人1人に割り当てられていた個室をなくし、大きな円卓で幹部が一緒に仕事をするようにしたという話を聞いたことがある。

 経営トップの部屋やオフィスレイアウトに比べるとあまり注目されることはないが、研修施設には人材育成の考え方が投影されている。GEが世界に誇るクロトンビルには、最高の学習環境、最高の講師陣、最高のカリキュラムが揃っている。人材育成に対するGEの桁外れなエネルギーが、クロトンビルには集約されているのだ。

 日本でも、ある一定の規模を超える企業の多くは、研修施設を自社で所有している。自社で研修施設を持つということは、それだけで人材育成に注力している会社であることが社員に伝わる。だが、ここ20年弱の間に何度か繰り返された不況の中で、少なからぬ企業が研修施設を手放してしまったと聞く。各社それぞれの事情があるだろうから正面切って口を挟めるわけではないが、傍から見るとちょっと残念だと感じてしまう。

 研修施設が、人材育成に対する力の入れ具合以上の意味を持つケースもある。今でも研修施設を自社で所有するあるクライアント企業の話だが、この会社の研修施設は、先方の担当者も受講者も認めるほど都心から外れた、決して交通の便がいいとは言えない場所にある。だが、あえてその場所で研修施設を所有し続けるのには重要な理由があった。

 実は、その土地は「創業の地」なのである。もちろん、今は都心に本社を構え、全国にも多数の拠点を持つほどの企業である。成長の舞台裏でルーツとなる土地を守り続けているこの研修施設は、創業時の情熱と苦労を風化させることなく、長年かけて培われてきた会社の価値観や精神を社員に受け継いでいく役割を担っているのである。

 企業の施設には、決算書類には掲載されることのない重要な価値が含まれることがある。研修施設もまたしかりなのである。

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