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「コーチング」は、万能ではない

[2007.08.03] 小島 美佳 (エム・アイ・アソシエイツ株式会社 ディレクター)

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日本企業でコーチング研修が普及している。コーチングについて教育を受けることが可能な機関も多数存在し、コーチングに関連する書籍も驚くほどに多い。ビジネスの分野にコーチングという概念が浸透しつつあるのは、歓迎すべきトレンドであるように思う。社員の自律的な成長を促し、強みを伸ばして成果に結びつけようとする考え方は、これまでの組織、機能ありきのアプローチに大きな変革をもたらす。不確実性が叫ばれる時代にあっては、組織の号令に従う指示待ち的な集団では勝ち続けることは困難である。変化を自ら察知し、今の仕事の内容が適切でないと判断すれば、自律的にそれを修正する、或いは新しい何かを創造することで成果を出し続ける人材。このような付加価値を追求できる創造性豊かな人材を育成する一つの手法が、「コーチング」であるように思う。

初めてコーチングというものに触れたとき、皆さんはどのように感じられただろうか。結局のところ、一筋縄ではこのような行動様式は身につかない。実際の現場においては、リーダーは常に自身がマネージする組織の「成果」を期待されており、その中で「成果を導くための管理」と「部下との信頼関係構築と育成」という、時には矛盾する要素をハンドリングしなければならないのだ。それも、この変化の激しい時代にあっては、短期的な成果に対するプレッシャーが激しく、リーダーに求められる要件はますます厳しくなってきている。

実際にマネジャーという役割を担う私自身の話となり恐縮であるが、初めてコーチングという概念に出会ったときには、その内容に共感はしたものの、いざ実践の場ではバランスのとり方で多いに悩み苦しんだ経験がある。まだまだ発展途上ではあるが、当時を振り返ると、「コーチングは万能ではない」ということ、「コーチングを可能とするためには、リーダー自身にセルフマネジメント的要素が求められる」ことの2点がすっかり頭から抜け落ちていたことが苦労の要因であったと考えている。

コーチングは、あくまでも一つのマネジメント手法である。それが効果を発揮したとき、驚くべき変化を実感する手応えを経験することができる。が、決して全てを解決するものではない。コーチング的な手法を駆使しても成果が出てこなかったり、手応えを感じられないときには異なる手法に潔く移行する勇気が必要になる。当たり前のことのようだが、現場での実践ともなると基本に立ち返ることが不思議と難しくなるのだ。

次に、セルフマネジメントである。自分に対するフィードバックには感情的にならずに真摯に向き合う必要があること、常に自分自身の考え方や意見が事実に基づいているか、主観的、恣意的になっていないかをチェックすることが必要となる。そのためには、やはり心身の状態にマネジャーとして「ゆとり」を持つ必要があると痛感する。コーチングは、行う側に余裕がないときには決して実施してはいけないし、そもそもコーチングそのものに集中できている状況にないと機能しない。部下とは恐ろしいほど上司を良く見ているもので、余裕のない状態のときには全てが見透かされているものだ。組織における信頼関係の度合いは、リーダーがどれだけじっくりと、余裕をもって部下と話し合える機会をとっているか、に比例するといっても過言ではないだろう。

最後に、コーチングとは中長期的、継続的に実施することが重要である点に触れておきたい。短期的に効果を発揮することは稀であり、コーチングを行う自分自身の成長の度合い、コーチングを受ける側の成長の度合いに応じて次第に成果を発揮してくるものだと感じる。しかし、繰り返し行われることでかならず組織全体に大きなプラスのエネルギーが広がっていくことを実感されるように思う。感情や人のエネルギーはプラス・マイナスに関わらず、恐るべき速度で伝染していく傾向がある。コーチングの基本はポジティブであることといわれているが、是非ともリーダーである方々には
プラスエネルギーを発信する側にいていただきたいと思う。

コーチングは本当に機能するか?
それは、リーダーが有効にこの手法を活用できる限りは、機能する、というのが私の考えである。

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